腸内細菌サプリは風邪やインフルの対策になるのか?のメタ分析
このブログでは、たまに「最高の体調を手に入れるにはシンバイオティクスが大事!」みたいな話をしているわけです。
シンバイオティクスってのは、簡単に言えば「腸内細菌とそのエサを一緒にとること」みたいな意味で、くわしくは「腸内環境をガッツリ良くする『シンバイオティクス』のススメ」をご覧いただければ幸いです。
要は、プロバイオティクス(腸内細菌)とプレバイオティクス(食物繊維など)を一緒にとろうって話でして、個人的にも「パレオティクス」などというシンバイオティクスのサプリを開発してたりするわけです。
でもって、新しく出たメタ分析(R)もシンバイオティクスにまつわる話で、
- シンバイオティクスのサプリは、呼吸器の感染症(風邪とかインフルとか気管支炎とか肺炎とか)の発生率、期間、重症度を減少させるのか?
ってあたりにフォーカスしていて勉強になりました。「最高の体調」でも、腸内細菌は免疫システムをしっかり働かせるために欠かせないって話を書いてますが、それゆえにシンバイオティクスのサプリが呼吸器の感染症に効く可能性は大きいんですよ。
そこで、この調査では、過去の研究から39件をピックアップ。合計9,179人の男女を対象に、プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスのサプリが呼吸器感染症の発症、期間、重症度に及ぼす影響をチェックしてくれております。
試験は、ヨーロッパ、北米、アジアなどで実施されていて、参加者の内訳は健康状態に問題がない男女から、慢性的な病気に悩む成人までさまざま。参加者の平均年齢は20~50歳だったそうな。
さらに、このメタ分析で扱われた腸内細菌および食物繊維を並べておくと、以下のような感じになります。
- 腸内細菌
- ビフィズス菌
- エンテロコッカス
- 乳酸菌
- 食物繊維
- ガラクトオリゴ糖
- オート麦βグルカン
- キシロオリゴ糖
シンバイオティクスを使った研究は、ビフィズス菌または乳酸菌とガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖などを組み合わせたサプリを使ったとのこと。実験の期間は3週間から52週間に広がっていて、現時点では最良の結論を出してくれてるんじゃないでしょうか。
で、結論はこんな感じです。
プロバイオティクスの効果
- プロバイオティクスのサプリは、呼吸器感染症の発生率、期間、および重症度に対してちょっとだけ有益な効果を示した。
- この結果は、最近の種類、用量、期間にが異なっても一貫していたが、よく運動をする参加者には効果が観察されなかった。
- プロバイオティクスは、ヨーグルトのような発酵乳製品として摂取した場合に、呼吸器感染の期間はより短くなる傾向があった。
シンバイオティクスの効果
- シンバイオティクスのサプリも、呼吸器感染症の発生率、期間、および重症度に対してちょっとだけ有益な効果を示した。
ということで、どうやらプロバイオティクスもシンバイオティクスは、どちらもほんの少しだけ、風邪やインフルエンザなどの対策に役立つかもしれないらしい。
まー、以前にも似たようなメタ分析は出ていたので、今回の報告そのものに驚きはないんですけども、今回のメタ分析には、以下のような特徴がありますね。
- 過去のメタ分析で報告された効果量よりも、プロバイオティクスとシンバイオティクスの効果が小さめに出ている。これは、今回のメタ分析に含まれる試験と、他のメタ分析に含まれる試験では、サプリの使い方が違うからだと思われる。
- 今回のメタ分析の結果によると、「参加者が普段からどれぐらい運動をしているか?」「発酵乳からプロバイオティクスを摂取しているか?」などが、呼吸器感染への効果に影響を及ぼしているっぽい。
- おそらく、運動をしている人は腸内フローラも良好である傾向が大きいので、すでに免疫機能はうまく働きている事が多い。そのため、普段から運動している人には、シンバイオティクスは意味がないのかもしれない。
- 発酵乳のプロバイオティクスが良い結果を出したのは、発酵プロセスのおかげかもしれない。乳製品の発酵によって牛乳にふくまれる栄養素の機能が高まり、短鎖脂肪酸(SCFA)、アミノ酸、ビタミン、抗菌化合物なども生成されたのだろうと考えられる。
ってことで、「ちゃんと運動してたらプロバイオティクスとかいらんのかな?」と「発酵乳のポテンシャルってかなり高いかも?」といったあたりが新味じゃないでしょうか。
まー、ただし、この研究については、多くの分析でかなりの異質性があるし、呼吸器感染の発生率については出版バイアスの証拠もあるので、メタ分析としての精度は低めだとお考えください。そのうえで、個人的には「運動はしててもやっぱプロバイオティクスは摂取しとこう(主に乳製品から)……」ぐらいの結論に落ち着いております。