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AIと人間、どちらが優れているのか? 最新の研究が示す「最適な協力関係」とは

 

AIおもろーってことで、さまざまな分野で「人間とAIのコラボレーション」が進む昨今でございます。

 

当然、私も毎日のように使っていたんですが、そこで近ごろアカデミズムで出てきたテーマが「人間とAIの組み合わせは本当に最適解なのか?」って疑問です。AIは創造的なタスクで人間と協力すべきなのか? それとも、人間が関与しない方が効率的だったりしないのか?みたいな問題意識っすね。たとえば、AIが生成した文章を人間が編集するのと、人間がゼロから書くのではどちらが優れているのか? あるいは、画像認識のタスクで、人間が最終判断を下すべきなのか、それともAI単独に任せたほうが精度が高いのか? みたいな話ですね。

 

この問いに答えるため、マサチューセッツ工科大学の研究チームが、人間とAIの協力が効果を発揮する場面を大規模なメタ分析(R)で検証してくれております。

 

この研究は106の実験的研究をピックアップし、医療、コミュニケーション、アートなど、多様な分野でのAIと人間の協力ぶりを比べたものでして、その結果、次のような傾向を明らかにしてくれたんですな。

 

  • 平均的に見ると、人間とAIの組み合わせは人間単独よりも優秀(g=0.64)だが、AI単独には劣る( g=−0.23)。

 

  • 創造的タスク(SNS投稿の要約、コンテンツ作成、画像生成など)では、人間とAIの協力が最も効果的。これは、 AIはデータを元にいろんなアウトプットを生成できるんだけど、「何が適切か?」という判断は人間のほうが得意だからだと思われる。あと、AIは論理的な分析が得意なんだけど、ターゲットに刺さるような感情やニュアンスの考慮は人間のほうが得意ってのもある。

 

  • 判断タスク(フェイクニュースの識別、需要予測、医療診断など)では、AI単独の方が優れた結果を出すことが多い。これは、人間がAIの判断を不適切に修正しちゃったり、バイアスに飲み込まれやすかったりすることが原因だと考えられる。

 

みたいになってます。クリエイティブについてはAIのサポートを借りたほうが良く、なにかをジャッジしたいときはAIだけを信じて人間は手を出さないほうが良いんだってことですな。これはわかるなー。

 

もうちょっと詳しいデータを見てみると、たとえば「フェイクレビューを判別する!」ってタスクを達成するには、

 

  • AI単独の精度:73%

  • 人間とAIの協力:69%

  • 人間単独の精度:55%

 

って結果だったそうな。このように、フェイクニュースみたいにバイアスが絡みやすい問題では、AIがすでに人間よりも優れた結果を出せるんだそうな。

 

一方で、「鳥の写真を分類したい!」タスクでは成績が逆転しまして、

 

  • AI単独の精度:73%

  • 人間単独の精度:81%

  • 人間とAIの協力:90%

 

みたいになってます。このようなタスクの場合、人間は「AIが間違いやすいケース」を直感的に判断できるため、AIの出力を適切に取捨選択することで精度を向上させたそうな。このタイプのタスクでは、AIを盲信するのではなく、人間が適切にフィードバックするほうが良いって感じですね。

 

つまり、これらの研究から導き出される戦略は明確でして、

 

  • 創造性が必要なタスクはAIと共創するべし! なので、文章の要約やコンテンツ生成は、AIのスピードと人間の洞察力を組み合わせることで最高の結果が出るぞ!

 

  • 判断タスクはAIに任せるべし! データに基づく判断はAIが得意なので、過度な介入はむしろ精度を下げるから、下手に手を出すな!

 

ってことですな。「創造性タスクこそAIと共生せよ」ってのは、私の実感とも合ってるなーって感じですね。今後はAIのアウトプットを取捨選択して、精度を高めるフィードバックループを作るのが、ヒトの主な役割になるのかもですな。

 

というと、「別に自分はクリエイティブ関係ないからいいや」と思う人もいるかもですが、ビジネスとかの意思決定プロセスにおいても、単なるデータ分析をAIに任せるのではなく、「どのデータを重要視すべきか」を人間が指示する必要がある点では同じなので、今回の知見には意味があるでしょう。マーケティング分野なんかでも、AIに膨大なデータからトレンドを分析してもらったら、その結果を基に人間が戦略を策定する役割を担うわけですしね。

 

まぁこれからさらにAIも発達するでしょうから、ひょっとしたら全くヒトのフィードバックが不要になる日もくるのかもしれないなーとは思ったりします。しかし、少なくとも現時点では、人間は単なる利用者ではなく、適切な場面でAIを活用する「ディレクター」としての役割を果たすことが求められるのは間違いないんで、もしあなたが「AIに仕事を奪われるのでは?」と心配しているなら、その問いを「どうすればAIと共に最大の価値を生み出せるか?」に変えてみるといいでしょうなー。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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