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最強の腸内環境を手に入れるために必要な、たった1つの注意点はこれだ!みたいな研究の話

 

こないだのバズーカ岡田さんとの対談イベントで、「腸内環境を整えるにはとにかく多様な食品を口にするしかない!」みたいな話で意見が一致したんですよ。腸内環境を整える方法といえばプロバイオティクスや食物繊維などが定番ですが、なにせ腸内フローラってのはわからないことばかりなので、「これを食べればOK!」「この腸内細菌でOK!」みたいなことは判断できず、

 

  • いろいろ食べてみて自分にとっての“当たり”を引くしかない!

 

って感じなんですよね。腸内を整えるには、とにかくいろんなものを食べてみるしかないわけです(超加工食品は除く)。

 

ただし、この問題については、先行研究の多くは病院や研究施設で採取したデータをもとにしてまして、一般の人々の、リアルな腸内環境を大規模に解析した研究ってのはほとんどなかったんですよ。そのため、現実の世界で健康的な人がどのようなものを食べているのかまでは、よくわからなかったんですね。

 

そんな折に、新しい研究(R)では「現実の世界で健康な人の腸内細菌はどのようなものか?」ってのを調べてくれていて参考になりました。これは1万人以上のアメリカ人に自分の便のサンプルを送ってもらい、すべてを標準化されたプロトコルで分析し、腸内細菌の「多様性」を評価したんだそうな。この規模で一般人の便を調べたものは他になく、本研究には「アメリカン・ガット・プロジェクト」という壮大な名前がついております。

 

ここからわかったことはいろいろあるんですけど、パレオダイエッターとして最も大事なポイントを申し上げますと、

 

  • 週に30種類以上の植物を食べる人は、腸内細菌の多様性が高い!

 

ってところでしょう。野菜が大事だって話はこれまでも言われてきたんだけど、ここでは「とにかくいろんな種類を食べることこそが重要なのかも?」って視点が強調されてますね。

 

これは先行研究から見ても大事なポイントで、一説には「ヴィーガンと肉食はどっちが腸に良いか?」ってな「食事スタイル」に焦点が当たりがちだったんだけど、実際には「食事の種類」よりも「どれだけ多様な植物を食べているか」のほうが大事かもってのは、個人的にも賛成しやすい視点っすね。

 

この結論をもうちょい細かく紹介しておくと、

 

  • 週に30種類以上の植物を食べる人 → 腸内細菌の多様性が高い
  • 週に10種類以下の植物しか食べない人 → 腸内細菌の多様性が低い

 

みたいな違いがあったんだそうな。過去にも書いたとおり、「腸内細菌の多様性が高ければ健康なのか?」って問題にはまだ異論も多いんですが(たとえば、慢性の腸内疾患がある人は、かなり腸内細菌の多様性が高いこともあったりする)、

 

  • 健康な人ほど腸内細菌の多様性が高いことのほうが多い
  • いろんな腸内細菌がいれば、健康の維持に重要な短鎖脂肪酸(SCFA)を産生する微生物が増える傾向もある

 

ってことを考えると、「週に30種類の植物を目指す」ってのは、意外とわかりやすいガイドラインになるんじゃないかと思うわけです。

 

そう聞くと、「30種類って多くない?」みたいに思っちゃうかもですが、実はこのガイドラインはそこまで厳しいもんでもなかったりします。たとえば、以下のような食材を週ごとに組み合わせるだけで、30種類以上の植物は簡単に達成できますからね。

 

  • 野菜類(10種類以上)
    • ほうれん草、小松菜、レタス、キャベツ、ケール
    • トマト、ナス、ピーマン、ブロッコリー、カリフラワー

  • 根菜類(5種類以上)
    • にんじん、大根、ごぼう、れんこん、さつまいも
  • 豆類(5種類以上)
    • 大豆(納豆・豆腐)、黒豆、ひよこ豆、レンズ豆、エンドウ豆
  • 果物(5種類以上)
    • リンゴ、バナナ、ブルーベリー、イチゴ、キウイ
  • ナッツ・種子類(5種類以上)
    • アーモンド、くるみ、ピーナッツ、ゴマ、チアシード
  • ハーブ・スパイス類(3種類以上)
    • ショウガ、にんにく、ターメリック、シナモン、バジル

 

こんな感じで、スパイスや素焼きナッツなども取り込んでいけば、30種類ってのはそこまで難しくないはず。逆にいくらブロッコリーが素晴らしいからといって、それだけを食べていても仕方ないよなーってところは押さえておきたいっすね。

 

ちなみに、この研究で個人的に面白かったポイントとしては、

 

  • 腸内細菌のバリエーションは想像以上に広く、「異なる生態系の環境バイオーム(森林や海などの微生物コミュニティ)」と同じくらいの多様性がある。

 

ってあたりにもセンスオブワンダーを感じさせられたりしました。つまり、同じ人間の腸内であっても、細菌の構成はまるで別の環境に住んでいるかのように異なる可能性があるってことですな。

 

このバリエーションは、年齢、地域、食事などによって大きく変わるんですが、なかでも影響が強いのはやはり「食事」だそうで、自分なりの腸内フローラに正しくエサをあげるって意味でも、「30種類の植物を心がける!」ってのは良いスタートラインかもですな。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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