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難しい小説を楽しめるようになる方法はありませんか?【イベント質問のお答えシリーズ#7】

  
 

ということで、「対談イベントの質問にお答えしていくシリーズ」の第7弾です(#1,#2,#3,#4,#5,#6)。今回から「小説」に関する質問にお答えしていきまーす。

 

 

 

小説を読むときやっとくと良いことは?

今まで小説をあまり読んだことがありません。小説を読むときにこれを意識するとより楽しめるかもと言うことはありますか?

 

小説をあんま読んだことがないと、「ノンフィクションやビジネス書などとは異なる読み方が必要なのでは?」と思うかもですが、読み方の基本は別ジャンルの本とそんな変わらないんじゃないでしょうか。実際のところ、小説だろうがノンフィクションだろうが、事前の準備や読後のアウトプットといった考え方は有効なんですよね。

 

みたいなことを言うと、「小説は楽しんで読めばいい!」「小説は虚心坦懐に読むべきだ!」って派閥の人から怒られたりするんですけど、そこは気にしなくて良いです。というか、小説に慣れていない人ほど、事前にちゃんと準備をしといたほうが確実に小説を楽しんで読めるようになるし、虚心坦懐に小説を楽しめるのは手練れの領域なんで(ゴリゴリのエンタメ小説なら何も考えずに読んでも構わないんだけど、それでも準備はしたほうが楽しくなるのは間違いない)。

 

では、具体的にどんなことをやっとくと良いのかと言いますと、だいたい以下のようになりますね。

 

 

 

1.「読む目的」をハッキリさせとく

何はともあれ、まずはこの作業だけは絶対にやっときたいですね。「なんとなく読んでみるか…」ってノリで純文学を読み始めると挫折しがちなので、まずは読む目的を決めるのがオススメです。実際に何をやるのかと言いますと、

 

  • 「なぜ、その本を読みたいのか?」をハッキリさせとく
    • 好奇心:その作品がなぜ有名なのかを知りたい、どんな新しい発見があるのか興味がある。
    • 自己成長:難しい作品を通して思考力、理解力、語彙力などを鍛えたい。
    • 学問的興味:レポートや論文で扱うため、あるいは専門知識を深めるため。
    • チャレンジ精神:自分の限界を超えて、達成感を得たい。
    • 純粋な楽しみ:映画みたいにワクワクしたい、意外な展開を楽しみたい。

 

といった目的のなかで、自分のモチベーションがどこに当てはまるのかを考えてください。目的がハッキリしていると、どこに注目すればいいか分かりやすくなり、自然と重要点やキーワードに目が行きやすくなりますんで。ちなみに、私の場合は「この作品はなぜ評価されているんだろう?」「この作品はどんなふうに受容されていて、読み手にどんな機能を果たしているんだろう?」みたいなモチベーションで読むことが多いです。

 

これは本当に人それぞれで、レポート作成や授業の課題なら、そのレポートのテーマに関連する情報・視点を探しながら読めばいいし、楽しみや娯楽が目的なら、まずはストーリーに没頭して、その後印象に残った部分を振り返ればOK。いずれにせよ、「どんな知識や気づきを得たいか」を意識すると一気に集中しやすくなりますんで、ぜひお試しください。

 

というと、「読書は楽しむために読むもので、それ以外の目的などなし!」みたいに言ってくる人も出てくるんだけど、気にせずスルーしてください。

 

 

 

2.ガンガンにネタバレしておく

「結末を知らずに読むほうが楽しめる」と考える人は少なくないんだけど、実際には先に「あらすじ」や「内容」は軽く知っておく方が、ちゃんと楽しめるのでおすすめです。“名著”と呼ばれる作品の中には、100ページを読み進めても「何が起こっているのか分からん…」って事態になることも珍しくないし、フォークナーみたいに「何が書かれているのかもわからん!」って文章を書く人も多いんで、事前に「この作品は何をしようとしているのか?」「ストーリーの流れはどのようなものか?」をざっくり把握しておくほうが良いでしょう。

 

事前リサーチの方法としては、作品や作者の背景リサーチ:Wikipediaや書評などで概略をつかんでおくか、評価が定まった名著であれば、AIに相談するだけでもかなり良いサマリーを出してくれます。プロンプトは、以下のようにお願いしてみてください。

 

    • 「〇〇〇(作品名)の要約をお願いします」
    • 「他の読者がハイライトした数が多い文章を抜き出してください」
    • 「〇〇〇(作品名)のテーマは何だと思いますか?」
    • 「〇〇〇(作品名)を他の人に勧めるとしたら、どのように紹介しますか?」
    • 「〇〇〇(作品名)関連書籍・元ネタはなんですか?」(これをやっとくと、たとえば『ユリシーズ』を読む前にホメロスの『オデュッセイア』やシェイクスピア『ハムレット』の概要をチェックしたりとかができる)。

 

こんな感じで、あらかじめストーリー全体をざっくり理解しておくと、最初の数10〜100ページをストーリーの手探りに使わなくなくても良くなるんで、読みながら「何を言いたいのか・どんなテーマがあるのか」を意識しやすいはずであります。特に学術的に読解したい場合や難易度の高い作品は、事前に結末や展開、テーマを把握しとくと良い感じです。

 

というと、「テーマは自分で読み解くもの!」「他人の感想に影響されてしまう!」といった批判も出てくるんだけど、こちらも無視してもらって構いません。いきなり「自分なりの感想を持つぞ!」とか思って読むのは、補助輪なしで自転車に乗る練習を始めちゃうようなものなんで。

 

 

 

3. ロードマップを作っとく

いきなり本を開いて、思いつきで読み進めると、途中でペースが崩れたり、ダレたりして積読コースまっしぐら になっちゃうケースはかなり多め。そのためには、事前に読書のロードマップを作っておくのも有効で、だいたいこんな感じになります。

 

  • 難易度チェック:本全体のページ数、あるいは目次の章立てを把握。1章あたり何ページくらいか(もしくはページではなく、時間の目安でも可)をざっと調べとく。自分にとって読みやすい本か、専門用語や長文が多く時間がかかりそうかなども想定しとくと吉。章構成が明確なら、それをもとに1日に読む「章数」や「ページ数」をなんとなく決める。

 

  • ゴールと締め切り(期限)を設定する:たとえば「2週間で読み終わるために1日X章ずつ読む」みたいに、自分のスケジュールに合わせたペース配分を決める。この時に、あまりに期間が長くなりすぎると興味が薄れやすいので、一気に集中して読む期間をつくるのも手。単に趣味で読む場合でも、「〇〇日間でこの本を読破してレビューを書く」みたいに具体的なスケジュール感を設定するのもよし。

 

  • 各章を読む前に内容をざっとチェック:実際に読み始める時には、上でAIに作ってもらった章ごとの要約を先に読んでおく。事前に何がポイントになるかを把握しておくと、実際の本文での「伏線」や「象徴表現」に気づきやすくなるし、「あ、ここがあのシーンか」と頭の中で関連づけがしやすなり、これがまたモチベーションの増加に役立つ。ただし、すべてを完璧に理解しようとしすぎると詰むので、そこらへんはバランスを取ってくださいませ。

 

  • 同時に2冊読んでメリハリをつける:いきなり『カラマーゾフの兄弟』とか『ユリシーズ』を読むと、「なんかムズいし、読むのキツイ…」となってしまうので、こちらも対策を取っておくのが吉。具体的には、難しい本と比較的読みやすい本を同時並行で読むと、息抜きと刺激を同時に得られるので良い感じです。「難しい本+やや易しい本のセット」を作るのが大事で、本格的な古典を読んで疲れたら、ライトな現代小説やビジネス本に切り替える、みたいにしとくと継続力を確保できるっでしょう。ただし、同時読みを増やしすぎると逆にモチベが下がるんで、2冊ぐらいにしとくと良いんじゃないかと。

 

こんなふうに、あらかじめ読書の道筋を決めておくことで、途中で迷子にならずに、スムーズに物語や内容を楽しめるようにしとくのが大きなポイント。というと、「小説に読み方の王道なし!」「小説は好きに読むべし!」みたいな「読書は自由だガチ勢」が出てきたりしますが、「はいはい。そうですね(棒読み)」ぐらいに受け止めてください。

 

 

 

4. 読み終わったら一言感想はマスト

人間の脳は、単に本を読んだだけでは内容の3〜10%くらいしか覚えていられないので、読後は定着の作業が必須。といっても、いきなり長文の読書感想を書こうとすると死ぬので、以下のような軽い作業ぐらいはやっておきましょう。

 

  • Twitterやメモに「一言感想」を書く(「このセリフが刺さった!」とかでもOK)

  • 読んで面白かったポイントを人に話す(「人に説明できる」状態になることが、理解の深さを測る良い指標にもなる)

 

でもって、さらに記憶を深めたいなら、章ごとに簡単なサマリーを書き、読み終わったら全体の要約を書いておくのも良いでしょう。特に「要約」はナイスな手法で、感想を書くよりはとっかかりやすいし、キーポイントを自分の言葉で整理することで理解も定着しますんで。

 

ってことで、思ったよりも長くなりましたが、こうして見ると、やっぱり小説もノンフィクションもやることはあんま変わらないですね。私の場合は、近年はかなりAIに頼って読書をすることが増えてきましたかねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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