GI値を気にしてもダイエットには意味がない理由
ちょい前に「インスリンの分泌量を気にしてもダイエットには意味がないですよー」なんてことを書きましたところ、「でもGI値は関係があるでしょう!」とのご指摘をいただきましたので、今日はそのへんの話を。
過去の研究では「GI値はダイエットに関係なし!」との結論が
ご存じのとおり、GIは「グリセミック・インデックス」の略で、食後に血糖値が上がる速さを示す数値。この数字が低い食品ほど血糖値は上がりにくく、ダイエットや健康にもいいと言われております。
その理屈はと申しますと、
- 血糖値を上げやすい食品は太る!
- ゆえにGI値が低い食品は痩せる!
といった感じ。シンプルでわかりやすい理屈ではありますが、大きな問題が1つだけございます。実は、過去に行われた研究には、「GI値はダイエットに関係なし!」って結論のものも少なくないんですよ。
GI値とダイエットに関する実験は大量にありますんで、ここでは代表的な例を2つほど。まずは2010の論文(1)で、720人の参加者を対象に6カ月の調査を行ったもので、実験の質はかなり高めになっております。
参加者は5つのグループにわけられまして、それぞれ以下の食事法を実践したんですね。
- 高飽和脂肪&高GI食
- 高不飽和脂肪&高GI食
- 高不飽和脂肪&低GI食
- 低脂肪&高GI食
- 低脂肪&低GI食
これだけ見ると、動物性の脂肪を食いまくったうえに血糖値も上げまくりな「グループ1」が最悪の結果になりそうですが、実際はさにあらず。6カ月後のインスリン抵抗性や血圧などは全グループがほぼ同じで、低脂肪食のグループのみ、他のグループよりもやや体重が減ったとの結果だったんですな。
GI値が同じでも加工食品と天然のフルーツでは太り方は違う
続いては、2007年に行われた研究(2)。203人の女性を対象にした実験でして、全員を2つのグループにわけたうえで、
- 低GI食
- 高GI食
のいずれかを実践してもらったんですね。高GI食のグループはおもに米を食べまくり、低GI食は豆類がベースの食生活だったとか。で、18カ月後の結果は、やはり「統計的に差はなし」とのこと。体重もインスリン抵抗性も、2つのグループでは特に差がなかったんですね。
このほかにも似たようなデータは山ほどありまして(3,4,5,6)、「低GIダイエット」の効果はまだよくわからんのが現状であります。
まぁ、これは考えてみれば当然で、そもそも「インスリンの分泌量とダイエットには関係がない」わけですし、加工食品と天然のフルーツのGI値を同じようにとらえるのはムリじゃないかと。たとえばコーンフレークとスイカのGI値はほぼ同じですが、加工食品には脳を暴走させる働きがあるので、当然ながらコーンフレークのほうが太りやすいはず。
さらには、かつて「糖質は必要な栄養素なのか、それともただの毒なのか?」でご紹介したとおり、世界には日常的に高GI食をとりながらも肥満や糖尿病とは無縁に暮らす人々がたくさんいるわけで、「GI値さえ下げれば痩せて健康に!」ってな主張はムリがあるかと思う次第です。
じゃあ、何を気にすればいいのか?
というわけで、GI値の現状はとても厳しいわけですが、それでは食事の際に何を気にすべきかといえば、やはり「カロリーの質」でしょう。イエール大学のデビッド・カッツ教授が言うように、三大栄養素のバランスを気にしても意味はなく、できるだけ加工食品を減らして栄養素の多い食事をとるのが吉。そうすれば、自然と体脂肪も減っていくかと思います。
credit: gnolls.org via FindCC