「家計簿」と「食事日記」で意志力がアップする理由
バウマイスターの「WILLPOWER 」とかハルバートソンの「やってのける」とか、ここ数年は意志力に関する良書がよく出てますが、よく取り上げられているのが「セルフモニタリング能力」の話。
鏡を見るだけでもダイエットができる
その名の通り「自分の状態を客観的に観察する力」のことで、この能力が高いほど自己をコントロールでき、ダイエットや貯金などの長期的な目標を達成しやすくなると言われております。
これに関して有名なのは1981年の「注意力と自己制御」(2)に出てくる実験で、ダイエット中の参加者たちの前に鏡を置いた状態で「好きなだけお菓子を食べてもいいですよ」と誘ったところ、鏡がない状態よりも甘いモノの誘惑に勝つ確率が高くなったとか。
この現象は何度も確認されてまして、2015年1月に出たばかりの論文(3)でも、鏡の前で食事をしてもらったグループほど、高カロリーの食品には手を出す確率が3分の1にまで減ったんだそうな。バウマイスター博士によれば、鏡で自分を客観的に見ることで、ヒトの脳は長期的な目標を思い出すエリアが活性化するんだとか。
スタンフォード大のケリー・マクゴニガル博士は、ヒトの意志力を以下の3つに分類してまして、
- 【やる力】やるべきことをやる力 ("I will" power)
- 【やらない力】やめたい習慣をやめる力 ("I won't" power)
- 【望む力】重要な目標を思い出す力 ("I want" power)
なかでも「望む力」をもっとも重要視しております。自分を状態をモニタリングするだけで、この「望む力」がグンとアップするわけですね。
とにかく記録をつければ意志力はあがる
とはいえ、 お菓子や衝動買いの誘惑に勝つために、つねにデカい鏡を用意しておくのも現実的じゃありませんので、普段から少しずつセルフモニタリング能力を鍛えておくのが吉。といっても難しい作業は不要で、基本的には「何らかのデータを記録し続ける」だけでOKであります。
たとえば、
- 家計簿:昔ながらの支出管理法ですが、実は意志力のアップにも役立ってくれちゃう。バウマイスター博士によれば、ヒトの脳はモノを買うたびに報酬系が激しく活性化しまして、その結果として買い物依存にハマったりするんですが、家計簿を続けるうちに脳の興奮がおさまっていくんだそうな。個人的にも家計簿は3年ほどつけてますけど、もはや「MoneyWiz 2」なしでは行きていけない体になっております。
- 食事日記:自分が食べたものをすべて書き残していくだけ。 食事の記録はダイエット効果が高くて、実際に肥満外来なんかでも使われる定番の手法。わたしの場合、以前は「あすけん」にすべて記録してましたが、いまでは以下のような感じで「EDIT」のToDoリスト欄にチマチマと書き込んでおります。なぜか食事に関しては手書きのほうが続くんすよねぇ。
- 運動記録: これまたエクササイズのやる気を維持する定番の技法で、続ければやはり意志力のアップに有効。これに関しては、いまは呼吸ガジェット「Spire」の消費カロリー計測機能と、「Turbulence Training」の公式サイトにある筋トレ記録メニューを利用しております。
ほかにも、活動量計の睡眠モニター機能を使ってみたりとか、「toggle」とかで作業時間を記録してみるのもアリ。鏡を見たダイエッターたちが、自分でも気づかないうちに食べ過ぎが治ったように、知らぬ間にセルフコントロール能力が上がっていくはずであります。「定番の意志力トレーニング法」とあわせて、コツコツきたえていきたいところ。
credit: Refracted Moments™ via FindCC