結局、筋トレのセット数はどこまで増やしたほうがいいのか?
「筋トレは何セットすればいいのか?」という昔ながらの問題がありまして。一般的なジムでは「3セット」が定番ですが、たとえばHIT方式を主張するダグ・マガフ博士は「1セットでも十分!」って考え方ですし、なかには「5セットは必要!」なんて意見もあったりして困っちゃうんですな。
1セットと8セットを比べてみたら?
といったところで面白かったのが2011年に行われた実験であります(1)。これはウェスタンシドニー大学の研究で、1〜8セットまでの筋トレの効果を調べたんですな。他の実験は1セットと3セットの効果を比べたものが多いんで、まことに貴重な研究と言えましょう。
参加者は43名の男性で、みな7年以上の筋トレ歴を持つ上級者さん。全員を以下の3グループにわけて、12週間の筋トレをしてもらったらしい。
- 1セットの筋トレを週2回
- 4セットの筋トレを週2回
- 8セットの筋トレを週2回
筋トレの負荷は1-RMの80%で統一しまして、1セットごとに「もうこれ以上は無理!」ってとこまで筋肉を追い込んだ模様。ちなみに「1-RM」は1回の動きで上げられる限界の重量のことでして、要は「この重さだと2回は動かせない!」ってレベルの負荷を意味しております。
やはりセット数が多いほうが筋トレの効果は出る
で、まずは結果のグラフを見てみましょう。グラフ横軸のT1は3週目、T2が6週目、T3が10週目におけるスクワットの筋力を表しています。
6週目の時点で見てみると、
- 1セットグループ 筋力11%アップ
- 4セットグループ 筋力13%アップ
- 8セットグループ 筋力20%アップ
といった感じ。あきらかにセット数が多いほど筋力も増えてますね。まぁセット数が多ければトレーニング量も増えるので、当然といえば当然の結果ではあります。
高セット数の筋トレは時間対効果が悪い
ただし、この実験の解釈には難しいところがありまして、すぐに「明日からセットを増やそう!」って気にはならないのが悩ましいんですよね。
というのも、第一に筋トレの効果は上半身より下半身のほうが出やすいがわかってまして(2)、スクワットの筋力の変化だけを見ても総合的な判断がしづらいんですな。ひょっとしたら、上半身の筋肉ではあまり差が出ない可能性も十分にあるんじゃないか、と。
また詳しい実験データを見ると、参加者ごとの個人差が大きいのも気になるところ。具体的には、1セットの筋トレで20%も筋力が増えた人がいるいっぽうで、8セットで10%以下の効果しか出なかった人もいるんですな。全体的に見れば8セットのほうが効果はあるものの、運が悪いと時間のムダに終わっちゃうかもしれないわけですね。
さらに一番気になるのが、8セットは時間あたりの効果が超悪いとこであります。なにせ、8セットグループは1日のスクワットに1時間もかけてるのに対して、1セットグループは10分しか使ってないんですよ。これだけ時間の違いがあるのに、効果の差は大きくて10%ぐらいなわけですからねぇ。
まとめ
というわけで以上の話をまとめますと、
- 基本的にはセット数は多いほうが短期間で筋力は増やせる
- ただし時間帯効果が悪いので高セットのほうが良いかは微妙
- なかには高セットでも効果が出ない人もいる
といった感じ。個人的には筋トレは1日1時間ぐらいに収めたいんで、その範囲で可能な限り筋肉を追い込めるセット数に調整しようかと思います。このあたりは価値観の問題なので、「短期間で効果を出したい!」という方はセット数を増やせばいいのではないのかと。