腸内細菌の量が大事なのは当然ですが、もっと大事なのは腸内細菌の「種類」の多さ
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ここ数年で腸内細菌の研究がガンガン進んでまして、2015年にもいろいろと良い研究が出ております。なかでも面白いのが4月に出た論文(1)で、南米のヤノマミ族の腸内環境をガッツリと調べたんですね。
ヤノマミ族の腸内フローラはアメリカ人より50%増
ヤノマミ族はアマゾンの密林に11,000年以上も住んでまして、いまも現代文明とは無縁の暮らしをしている部族。研究者は12人のヤノマミ族たちの糞便を持ち帰り、腸内細菌をDNA解析にかけたんだそうな。その結果は、ズバリ「ヤノマミ族はアメリカ人より50%も多様な腸内フローラを持っている」というもの。西洋人が数種類ぐらいなのに対し、狩猟採集民のお腹にはおよそ50種もの腸内細菌が住んでいるらしい。また、研究者によれば、社会の西洋化が進むと同時にアレルギーや多発性硬化症、クローン病といった免疫疾患が増えているんだとか。
そこで重要な問題は、腸内細菌の減少とアレルギーの増加に関係があるかどうかだ。腸内細菌の種類がどれほど健康に大事なのかはまだわかっていない。しかし、現代人は重要な機能を持った腸内細菌を失ったのかもしれない。
さらに、その原因として研究者が主張しているのが抗生物質であります。
抗生物質は腸内細菌を殺し、失われた細菌は戻ってこない。この問題は、子どものほうが悪影響は大きい。成長期には腸内フローラが形成されるからだ。若いころ腸内にダメージを受けると、その影響は長期間にわたって続く。
わたしも子どものころは抗生物質を使いまくりだったんで、ちょっと心配になっちゃいますねぇ。
パプア人は抗生物質を使っても腸内細菌が多様
ただしここで興味深いのが、2015年に出たもうひとつの論文(2)。こちらはパプアニューギニアの先住民を調べた研究なんですが、この地域で暮らす部族は昔から定期的に抗生物質を使っているんですね。ところが、パプア人はアメリカ人が失った47種類の腸内細菌を持っており、やはりアレルギーなどの免疫疾患はないというからビックリ。その原因としては、
クリーンな水道水は、西洋文化が築いたもっとも重要な発明のひとつだ。下水設備は感染症の拡大をもふせいでくれる。しかし現代の発明は、いっぽうで有益な微生物の広がりもジャマしてしまう。
とのこと。抗生物質のダメージを衛生設備の不足が補ってるわけですね。うーん、複雑。
さらに研究者いわく、
私たちはパプアニューギニアを理想化したいわけではない。確かに先住民はアレルギーなどの免疫疾患は少ないが、決して西洋人にくらべて健康なわけではない。感染症や寄生虫のせいで、彼らの平均寿命は短く新生児の死亡率も高い。
とのこと。このあたりは、現代の生活と狩猟採集民の「いいとこ取り」を目標にするパレオダイエットにも大事なポイントかと。
実際、現代文明を手ばなすわけにもいきませんので、
- とりあえず抗生物質の使用はできるだけひかえる
- 除菌は最低限だけにする(キッチンまわりとか)
- 一種類のプロバイオティクスだけでなく、いろんな種類のプロバイオティクスを試してみる
といったあたりが妥協策になってくるのかなーと思います。今後は腸内細菌の種類に気を配るかな…。