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根性を上げるには3、4時間に1回は何か食べたほうがいいってホント?

 

血糖値とセルフコントロールに関するご質問をいただきました。 

 

ネットで「3、4時間に1回は何か食べたほうがいい」とする記事を見かけました。血糖値が安定しないと脳の性能が落ちて、根性がなくなってしまうというのです。パレオさんは定期的なプチ断食をオススメしていると思うのですが、この見解についてはどう思われますでしょうか?

 

とのこと。教えていただいた記事の趣旨をざっくりまとめると、

 

  1. Google社は、近ごろ社員の「根性」を重視している
  2. 血糖値が下がると「根性」も下がる
  3. 3〜4時間おきに食べれば「根性」も上がる!

 

といった趣旨ですね。糖質制限ダイエットの世界でも、「気分がイライラするのは血糖値が原因だ!」といった主張をよく見かけます。

 

 

血糖値で根性アップ説には批判も多い

確かに脳が働くには糖質が必要でして、「スタンフォードの自分を変える教室」などでも「何か食べると意志力があがるよ!」と書かれてますしね。その点で糖質が大事なのは間違いないところです。

 

 

ただし近年では、血糖値の安定と意志力に関係には批判も多いんですよ。

 

 

たとえば「だれもが偽善者になる本当の理由」で有名なクルツバン博士の論文(2)によれば、脳全体の消費エネルギーは毎分0.25kcalぐらいしかないので、普段の食事でも十分に間に合うレベルなんだとか。

 

 

さらにウルヴァーハンプトン大学による、2012年の論文(3)もおもしろい指摘をしています。なんでも、そもそも血糖値と脳内のグルコースレベルは別物だから、定期的に糖分を摂っても無意味だというんですな。

 

 

確かに、糖尿病の患者さんの研究(4)などを見ると、ヒトの体には脳のグルコースレベルを一定に保つ仕組みが備わってるみたいですからねぇ。これまた説得力のある批判かと。

 

 

実際、ジョージア大学が2012年に行った実験でも、体内の血糖値を上げなくても砂糖水で口をゆすいだだけで根性がアップしたって結果が出ております。おそらく本当に重要なのは、血糖値よりも「近くに食事があるぞ!」っていうシグナルなんでしょう。

 



 

血糖値は食事に対するモチベーションを上げますが…

その意味で勉強になるのが、2015年に出た論文(5)であります。血糖値と意思決定に関する過去のデータをまとめたもの。36件の論文を精査したメタ解析になってまして、科学的な信頼度はとても高めであります。

 

 

その結論だけを抜き出すと、

 

  • 血糖値が低くなると食事が関係する物事には弱くなるが、食事が関係しない物事には影響しない

 

みたいな感じ。たとえば、

 

  • 血糖値が低いときに、「いま小さいチョコを我慢すれば、後でもっと大きなチョコをあげるよ」と言われると、いますぐチョコをもらってしまいがち
  • ただし、血糖値が低いときに「いま好きな本を読むのを我慢すれば、後で好きなだけ本を読ませてあげるよ」と言われた場合は、ちゃんと耐えることができる

 

といったイメージですね。つまり血糖値は食事のモチベーションを高めるけど、それ以外の行動には大した影響を及ぼさないわけです。うーん、人間って単純。

 

 

まとめ

そんなわけで個人的には、根性を上げるには血糖値が大事!って意見には疑いの目で見ております。

 

 

そもそも血糖値が下がるたびに根性が無くなってたら、原始人は狩りに出かけるモチベーションも失せちゃうはずですからねぇ。3〜4時間に1回は何か食べなきゃいけないような脳は、現在まで生き残れなかったんじゃなかろうか、と。

 

 

もちろん脳にとって糖質が必要なのは間違いないですが、もっと大事なのは1日に必要なカロリーをちゃんと摂ることかなーと思います。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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