「暴力的な映画やゲームをやると暴力的な性格に!」はウソみたいよ
https://yuchrszk.blogspot.com/2016/02/blog-post_56.html?m=0
「暴力的な映画とかゲームをやると暴力的になるの?」って疑問は昔からありますけど、近ごろ読んだ論文(1)がガッツリと結論を出していて参考になりました。
昔の暴力映像に関する研究はいろいろと欠点が多い
これはステッソン大学の研究で、1998年〜2008年の間に出た「映画やゲームと暴力性」に関するデータをまとめたもの。全部で25件の研究を精査したメタ分析になってまして、科学的な信頼性はかなり高いのではないか、と。
研究者によれば、確かに「暴力ゲームで攻撃的になる!」ってデータは結構あるものの、どうも過去の論文にはいろんな欠点があったらしい。具体的には、
- 昔の研究は「攻撃性」の定義が広すぎ:1990年代初期の研究は、イライラが増えたぐらいの変化でも「攻撃性が上がった!」と考えたりしてたんで、自然と暴力ゲームの悪影響が高くなりがちだったんですね。
- 「攻撃性が上がった!」って論文のほうが多く発表されがち:科学者も人間なので、センセーショナルな結論が出た論文ほど発表数は多くなる傾向があるんですね。正しい結論を出すには、この傾向も調整してやんなきゃいけないわけです。
といった感じ。実際のところ、「暴力的な映画やゲームで攻撃的が上がった!」って内容の論文は、ほぼアイオワ州立大のクレイグ・アンダーソン博士が出してまして(2)、それってフェアなの?とは思ってしまうところです。
暴力的な映画やゲームの悪影響は0.64%しかない
では、ステッソン大の結論がどうだったかというと、
- 暴力的な映画やゲームが攻撃性にあたえる影響は、全体的にみるとたったの0.64%
- 実際に他人へ暴力をふるうぐらいのレベルになると、さらに影響度は0.04%まで下がる
といった感じ。ほぼ無視してもいいレベルですねー。
研究者いわく、
この研究の結果によれば、メディアの暴力的な映像が攻撃的な行動を引き起こすとの結論は支持できない。メディアの暴力映像が深刻な社会問題を起こしているという結論を出すこともできない。
とのこと。かなり断言してますねぇ。そもそもヒトの攻撃性をもっとも左右するのは遺伝で、次が環境、3番目が経済状況なんだそうな。確かに、これらの要素にくらべれば、暴力ゲームなんて大した影響はなさそうですな。
ちなみに研究者の試算によると、
- 多めに見積もっても、暴力的な映像が社会におよぼす悪影響はタバコの8分の1しかない
- より正確性が高い数値を使った場合は、暴力的な映像が社会におよぼす悪影響はタバコの135分の1しかない
って感じらしい。暴力的な映画やゲームよりも、まずはタバコの心配をしたほうがよさそうっすね。「マッドマックス」とかが好きなわたしにとっては、非常にありがたい結論でした(笑)