マインドフルネス瞑想で幸福度が上がるのはなぜ?
なんでマインドフルネスが効くの?
マインドフルネス瞑想について何度か取り上げております当ブログ。どこまで幅広い効果があるかについてはまだ議論の余地があるものの、とりあえず不安や鬱には間違いなく効くようなんで、わたしも毎日のメンタルトレーニングに取り入れております。
ただ、まだまだよくわかってないのが、「なんでマインドフルネスが効くの?」ってこと。確かにいろんな実験で良い成績が出てるんですが、マインドフルネスが幸福感をもたらすメカニズムは謎のままなんですな。
ってところで非常に参考になったのが、「LOVE2.0 」などの著作で有名なバーバラ・フレドリクソンの2015年論文(1)。マインドフルネスが効く理由について、過去のデータをもとにモデルを組み立てた一作であります。
「マインドフルネスが効く理由」のモデル
というわけで、まずは 「マインドフルネスが効く理由」のモデルをご覧ください。
ざっくり言えば、瞑想によって自分の思考を観察する余裕が生まれ、そこからポジティブな感情につながっていき、最終的には世のために行動したくなるメンタルが育っていくわけですね。
ストレスを新たな視点から捉え直すのが第一歩
たとえば、「急に道で知らないオッサンに怒鳴られた」みたいな状況があったとすると、
- 「何か悪いことでもしたか?」や「あのオッサンは最悪だ!」と思ってネガティブな気持ちに(ストレス状況)
- 瞑想により「自分はネガティブな感情を抱いている」と考えられるようになる(ストレスと自分の切り離し)
- 「たんに知らないオッサンが怒ったという事実があるだけだ」という現状に気づく(メタ認知)
- 「あのオッサン、嫌なことでもあったのかな?」のように考えられるようになる(ストレスの文脈が広がる)
- 「自分に落ち度はないし、たまたまオッサンの機嫌が悪かったんだろう」と捉え直す(状況の再評価)
- 「そういえば、あのオッサン、ちょっと泣いてたな…」と気づく(新たな状況に意識が向かう)
- 「まぁ、みんな人生は大変だよな…」という気分に(ポジティブな感情の誕生)
- 哀れみや慈悲の感情が大きくなる(ポジティブな感情の拡大)
- 「他にも辛い思いをしてる人はたくさんいるんだろうな…」って気分に(人生の認識の深化)
- 「もっとみんなに優しくしてあげよう!」と思う(向社会化)
- なんだか深い満足感がわいてくる(人生の意味の深化)
みたいな感じ。もちろん、ここまで都合よく感情が変化するはずはありませんけど(笑)、とにかく瞑想のおかげでストレス状況を新たな視点から捉え直せるようになるのが第一歩であります。
これは専門的には「リアプレイザル」と呼ばれてまして、要は「考え方を変えよう!」ってテクニックのこと。近年の研究では、「感情のコントロールにはリアプレイザルがベストなんじゃない?」ってデータも増えてきてるんですよね。マインドフルネスが効く理由が「リアプレイザル」だというのは、なかなか納得度の高い説明ではないかと。
がん患者によるマインドフルネスの経過
ちなみに、この論文には、がんで余名宣告をされた63歳の患者さんの例が出てまして、これがまた興味深いです。具体的には、
- 余名宣告で「もう終わりだ!」という気分に(ストレス状況)
- 1日15分のマインドフルネス瞑想を行うようにする
- 「自分はがんになったのだ」という現実を受け止める(メタ認知)
- 「まだ生きてるだけラッキーだ!」と捉え直す(状況の再評価)
- 「でも病院の支払いとか今後の治療はツラそうだ…」と恐怖感にとらわれる(ストレス状況の再発)
- 引き続きマインドフルネス瞑想を行う
- 「まだ生きてる自分を孫が喜んでくれている」という考えが浮かぶ(新たな状況に意識が向かう)
- 「孫に伝えることがまだ残っている!」と思い直す(さらに状況の再評価)
- 「がんのおかげで感謝する能力がアップした」という気分に(ポジティブな感情の誕生)
- 家族と過ごす時間を積極的に増やす(向社会化)
- 人生に深い満足感を覚える
みたいなプロセスで幸福度が増していったらしい。あくまで直線的に幸福度が増えていくわけじゃなく、ストレス再発の波に応じてしっかりメタ認知を養うことで、少しずつ幸福感の筋肉が鍛えられていくイメージですな。そりゃあ一朝一夕には行きませんよね。
マインドフルネス瞑想をやってると、つい「なんの意味があるの?」とか「効果があるの?」みたいな疑問に襲われがちなんですけども、上記のモデルを心にとめておくと、「自分はいまメタ認知を育ててる段階だな…」とか意識できてよいかと思います。瞑想の成果を計る指標に使ってみてくださいませ。