全米ダイエットランキングでパレオダイエットの順位が低いのはなんで?
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なぜUSニューズではパレオダイエットのランクが低いのか?
ちょっと前に、「USニューズでパレオダイエットのランキングって低いよね」みたいなコメントをいただきまして。ご指摘をいただいたのは、USニューズ&ワールド・レポート社が毎年発表している「効果的なダイエットランキング」(1)のこと。2011年ごろから連続して発表されてるんですけど、パレオダイエットはだいたい最下位かブービー賞なんですね。
ちなみに2017年は全38位中36位で、スーパー糖質制限(アトキンス)のひとつ下。いずれも栄養学などの先生が各ダイエット法を採点して、まとめた内容になっております。
で、パレオダイエットのランキングが低い理由は毎年ほぼ同じで、
- データが少ない
- 続けるのが難しい
- 栄養不足になるかも
の3点がポイント。というわけで、それぞれ見ていきましょうー。
1.パレオダイエットはデータが少ない問題
エキスパートのコメント(2)を見てると、とにかく「リサーチが少ない」ってコメントが多いのがパレオダイエットの特徴かと思います。糖尿病や心臓病への効果といった7つの評価ポイントのうち、実に4項目で「データ不足」が問題にされております。これはエキスパートのおっしゃる通りで、パレオダイエットって実験例が少ないんですよね。パレオダイエットの検証がスタートしたのは20年ぐらい前ですが、本格的に盛り上がってきたのはここ9年ぐらいのことなので、糖質制限ダイエットなどと比べると圧倒的に研究数が違うんですな。
ただし、ここで付け加えさせていただくならば、ここ数年で出たパレオダイエットの研究データは、どれも優秀ってとこは押さえておきたいところ。たとえば、
- 2007年に29名を対象にした実験(1)では、パレオダイエットは地中海式ダイエットよりも糖尿病の改善効果がみられた
- 2014年に70名を対象にした実験では、パレオダイエットは低脂肪食よりも減量の効果が大きかった
- 2015年に5件のデータをまとめたメタ分析では、パレオダイエットは国際的な予防ガイドラインより効果が高かった
みたいな感じです。まだ数は少ないながらも良い成績を出しているのが特徴かと。
もっとも、これぐらいじゃエキスパートが納得してくれないのも理解はできます。おそらく、精度の高いRCTが何本も出たうえにメタ分析が4〜5本ぐらい発表されないと、「データが十分そろった!」とは判断されないでしょうからねぇ。あとは時間が経つのを待つしかないですな。
ちなみに、ほかのダイエット法との比較で言うと、20位の「スリムファースト」の専門家評(2)はこんな感じです。
ダイエット商品の効果を調べた2015年の系統的レビューによれば、スリムファーストの効果は「賛否両論」だ。あるデータでは効果がみられたが、別のデータでは効果が出ていない。
つまり、エビデンスレベルが高い研究で「賛否両論」との結果が出ても、データ数があればそれなりに上位に行けるわけですね。このへんの採点基準をどう考えるかでしょうか。
2.パレオダイエットは難易度が高い問題
これもよく聞く話ですねー。私の例だと、- 外食ができない!
- 加工食品を食べないなんてムリ!
- 自炊が嫌!
- 金がかかりそう!
みたいなことをたまに言われます。エキスパートのコメントでも「食事の縛りが多い」って意見が多いですね。
この問題について個人的に思うのは、「パレオダイエットはフレームワークの集まりでしかない」ってとこです。たとえば糖質制限ダイエットなら「糖質を1日何グラムまで減らそう!」って明確なルールがあるのに対し、パレオダイエットは「人体のシステムに沿って何が好ましい生活なのかを考えてみよう」っていう考え方の枠組みを提供するのがメインの目的なんですね。ここ重要。
というか、そもそも原始人や狩猟採集民の食事を完全に再現するのは不可能なんで、世の中に「ガチのパレオダイエッター」なんて存在しないんですよね(本物の狩猟採集民を除く)。にも関わらず、パレオダイエットのガイドラインを完璧に守ろうとすればムリが出てくるのは当たり前。「難易度が高い…」って感想になるのも自然なことでしょう。
そんなわけで「パレオダイエットの教科書」では、ガッチガチにルールで縛るのではなく、ライフスタイルに合わせて食事や運動を変えていく方法をオススメしています。妥協すべきとこはガンガン妥協していただいて、自分の目標にあった難易度に変えていたければと(健康維持とか肉体改造とか)。
3.パレオダイエットは栄養不足になる問題
「パレオダイエットって小麦も牛乳も豆もダメなんでしょ?栄養不足にならない?」というツッコミですね。なにせ現代の栄養学は「バラエティに富んだ食品を食べるべき!」ってのが基本なので、この指摘はよくわかります。ただ、パレオダイエットの大前提に「カロリーの質を高めよう!」って発想があるのは、なかなか理解されていないポイントかもしれません。要するに「同じカロリーを摂るなら、できるだけビタミンや食物繊維が多いものを選ぶべし」って考え方ですね。
その点で、穀物や豆などは総カロリーに対する栄養価は低いもんで、優先順位を下げたほうが結果的に多くの栄養を摂りやすいはず。具体的には、コロラド州立大学が2002年に「パレオダイエットの栄養価」について計算してくれております(3)。
この表は、25才の女性が1日に2200kcalの典型的なパレオ食を摂ったときの栄養価を示したもの。RDAってのは、アメリカ政府が定める1日の栄養の推奨量を意味しております。ほぼRDAを上回ってますよね(カルシウムだけ数字が低い問題については、長くなるので別エントリで)。
また、このほかの成分でいうと、
- 食物繊維 42.5g
- オメガ3 9.6g
- 飽和脂肪酸 18g
といった感じになっていて、こちらも優秀なスコアじゃないでしょうか。とくに食物繊維が豊富なのがうれしいですねー。
もっとも、実際のところは牛乳には良い面も悪い面もありますし(乳糖不耐症の場合は別)、個人的には全粒粉であれば小麦製品もアリだと思いますし(グルテン過敏の場合は別)、実は豆類ってパレオじゃないの?って説もありますしね。あくまで「アレルギーとカロリーの質」って観点からは優先度が下がるって話ですんで、あとは自分の好みや体調と相談しつつ取り入れてくだされば。
まとめ
そんなわけで、USニューズのランキングに対していろいろ書いてみました。「パレオダイエットはデータが少ない」問題についてはどうにもならないんで、「とにかくエビデンス数が一番大事!」という方には、ランキング2位の「地中海式ダイエット」をオススメしておきます。どうぞよしなに。