1日30分の「記憶の宮殿」トレーニングで良いアイデアが浮かびやすくなるかも
最強の記憶術「座の方法」
いまんとこ最も信頼性が高い「記憶術」と呼ばれるのが、「座の方法」(Method of loci) ってやつであります。簡単に言うと、
- 具体的な場所を思い浮かべる(自宅とか学校とか自分が慣れ親しんだ場所がベスト)
- 覚えたいもの(英単語とか数字とか)を、その場所に配置していく(「323」って数列を玄関に置いたりとか)
みたいな方法。別名「記憶の宮殿」とも呼ばれてまして、ドラマの「シャーロック」でも使われてましたな。さらにくわしいところは、 「全米記憶力チャンピオンが教える記憶の宮殿のやり方」などをご参照あれ。
実は、私もこの方法は昔から採用してまして、実家の間取りを「記憶の宮殿」にしつつ、「農薬が多い野菜トップ12」とか「アメリカ心理学会が勧めるストレス解消法」といった覚えておきたい要素を置いています。記憶法にもいろいろありますけど、確かにこの方法がベストかも。
1日30分だけ「記憶の宮殿」トレーニングを続けた
ってところで、新しい論文(1)では、「記憶の宮殿で実際に脳の構造が変わる!」って結論が出てておもしろかったです。
これは、過去に「記憶選手権」に出た記憶術マスター17人と、51人の一般人を対象にしたもの。まずは全員を3つのグループにわけまして、
- 1日30分だけ「記憶の宮殿」トレーニングをする
- 1日30分だけワーキングメモリトレーニングを行う
- なにもしない
って感じで6週間ほど訓練を続けてもらったらしい。そのうえで記憶テストと脳スキャンを行ったところ、
- 「記憶の宮殿」トレーニングをした一般人も、記憶術マスターと同じぐらいテストの成績が良くなった(トレーニング前より倍の記憶力になったらしい)
- トレーニングにより、脳の「デフォルトモードネットワーク」が強化されていた
って変化が出たんですな。デフォルトモードネットワークってのは、頭をぼんやりと遊ばせているときに活性化する脳のエリア。広範囲に脳が活性化するんで、ここが働いてる人ほど「よいアイデアが浮かびやすい」と考えられているんですな。
「記憶の宮殿」で脳の全体的なコントロール力が高まる
ちなみに、近年では「鬱病の人はデフォルトモードネットワークが小さい」って知見も出てたりします。どうも脳の全体的なコントロールに必須のエリアみたいなんですな。
記憶力が高い人たちは、例外なく、数カ月から数年にわたる記憶のトレーニングを行っている。(中略)トレーニングを終えた参加者は、みな記憶テストの成績が大きくアップした。
いったん「記憶の宮殿」に慣れてしまえば、もはや意識しなくても高いパフォーマンスを得ることができるだろう。
ってことで、どんなに「物覚えが悪くて…」と思ってる人だろうが、いったん宮殿の作り方を学べば脳の構造が変わるんで、その効果は長年にわたってキープされるんだ、と。ついでにデフォルトモードネットワークが活性化するなら、いろいろとメリットもありそうな感じではあります。
まぁ「記憶の宮殿」トレーニングで創造性も上がるかは未知数ですけど、なにせ実証データが多いテクニックですんで、1日30分を費やす価値はありそうな気がしますねー。