生まれ順で性格が変わる!笑顔で寿命がわかる!って説が否定された件
後で否定される心理実験は少なくない
2016年末に「効果が再現できなかった心理学の有名な研究」ってのをまとめたことがありました。心理実験ってのは複雑なんで、有名な研究が後で再現できないケースがよくあるんですよね。
たとえば「パワーポーズ」とか「赤い服を着るとモテる」といった有名な話に、後で否定的な結果が出ちゃいまして、あらためて心理実験は難しいなー、みたいな。
で、2017年に入ってからも、「あの実験が再現できなかった!」という報告が出てきましんたんで、軽くまとめときます。
出生順で性格が変わる!
昔から「生まれた順番で性格が変わる!」って説がありまして、長男は責任感が強いとか、末っ子は自由人とか言われてきたわけです。
が、近ごろマックス・プランク研究所から出た論文(1)では、「出生の順番は性格に関係なし!」って結論になっててビビりました。
これは1万人以上のデータを調べた観察研究で、生まれ順とビッグファイブ(正確性の高い性格分類)の関係を調べたもの。その結果は明確で、どのパーソナリティ特性を取っても、生まれ順で性格が変わるような事実は確認されなかったそうな。
ちなみに、この実験では他にも、人生の満足度、他人への信頼、リスク性向、忍耐力、政治的な好みなどもチェックされてるんですが、いずれも生まれ順との相関は見つからなかったらしい。とにかく、なんの影響もないわけですな。
まぁこの問題は2015年のメタ分析(2)でも言われてたことで、「生まれ順の研究は食い違いが多すぎて信頼度が低い」って結論だったんですよね。その点、今回の研究は統計処理がちゃんとしてて、わりと信頼がおけるのではないかと。
にも関わらず「出生順が性格に影響する」って説が広まった理由について、研究チームは次のように言っております。
初めて育てる子供が大泣きした場合、母親は「この子は不安傾向が高いのかもしれない」と思う可能性が高い。しかし、次に生まれた子供が大泣きした場合、母親はすでに子育てに慣れているため、「赤ちゃんとしては普通だな」と解釈するだろう。
つまり、生まれ順で性格が違ってくるんじゃなくて、たんに育てる側の意識が変わっただけじゃないのか、と。言われてみればそうっすよね。
笑顔が多いと長生きする!
続きましては、「ヒトの寿命は“笑顔”を見れば判断できるんじゃない?」みたいな説。当ブログでも2015年に紹介したことがありまして、くわしくはこちらのエントリをどうぞ。
ざっくり言うと、大リーガーのベースボールカードをチェックしたら笑ってる選手ほど寿命が長かったって話で、当時は「やっぱり笑顔は超大事!」って文脈で幅広く報じられたもんです。
が、こちらも近ごろ追試論文(2)が出まして、「あれ?笑顔と寿命って無関係じゃない?」って結果が出ちゃったんですな。
これはライプツィヒ大学の研究で、以前の研究と同じデータセットを使ったもの。大リーガーのベースボールカードから笑顔のものを選んで寿命とくらべたんですね。
ただし、今回の研究で変わったのは「笑顔の強度」って変数を導入したとこ。「満面の笑み」や「かすかな笑み」といった具合に、笑いのレベルを3段階にわけたうえで統計処理し直したんですね。
その結果は、「プレイヤーの笑顔と寿命には関係なし」というもの。もちろん、これで「笑顔」の効能が否定されたわけじゃないものの、「笑顔で寿命が予想できる」って説には偽陽性の可能性が濃厚になってまいりました。うーん、切ない。
まとめ
そんなわけで、近ごろ追試で効果が出なかった有名な2つの心理実験でした。どちらも完全に否定されたとは言えないものの、個人的に「出生順」についてはかなり怪しくなったかなーという印象ですかねぇ。