食事のBCAAを減らしたら、何もせずに肥満が解消したよ!というマウス実験
あらためてBCAAサプリについて
BCAAっていう有名な筋トレサプリがありますな。ざっくり言うと、バリン、ロイシン、イソロイシンっていう筋肉の発達に特に大事なアミノ酸をミックスしたもので、多くの筋トレ好きから熱い支持を集めているサプリです。
が、個人的には「別にBCAAは買う必要ないんじゃない?」派でして、そのへんについては「定番の筋トレサプリ「BCAA」は本当に買うべきか?」などをご覧ください。普通に肉かプロテインを摂取してれば、特に意味がないように思ってるわけです。
BCAAで太るかもしれない仮説
で、もうひとつ近ごろよく聞くようになったのが、「BCAAって太るんじゃない?」って説であります。というのも、過去の観察研究などでは、肥満の人ほど血中のBCAA濃度が高い傾向が出てるんですよ。
といっても、これはあくまで観察の結果なんで、「太るとBCAAが増える」のか「BCAAを摂ると太るのか」はわかってなかったんですな。ありがちな問題ですねぇ。
ってところで、新しく「BCAAどうなの?問題」について調べた論文(1)が出まして、なかなかおもしろいんですよ。
これはウィスコンシン大学の研究で、肥満のマウスを使った動物実験になっております。ここで研究者が立てた仮説は、
BCAAの摂取量を減らすことにより、体重の減少、体脂肪の減少、糖代謝の改善が見込めるのではないか?
みたいな感じ。この研究者は「BCAAで太る」説を取ってるわけですね。
BCAAを減らしたら何もせずに健康体に
実験では肥満マウスたちを3つのグループにわけまして、
- いつもの食事
- いつもの食事からBCAAを完全にカット
- いつもの食事からアミノ酸を完全にカット
って感じで様子をみております。すると、おもしろいことに、
- BCAAとアミノ酸を減らしたマウスは体重が減り、糖代謝も改善した!
って結果だったんですよ。具体的には、12日目で25%ぐらい体重が減ってまして、なかなかの差が出ております。つまり、BCAAはダイエットに悪影響なんじゃないか?ってことですね。
この結果について研究者いわく、
この違いは、カロリー制限や活動量の増加によって起きたものではない。FGF21というホルモンの分泌量が増え、基礎代謝が上がったせいで起きた現象だ。
とのこと。FGF12ってのは、代謝のバランスを調整するホルモンであります。これにより、BCAAを減らすと基礎代謝が上がって脂肪が燃えやすくなったんだそうな。うーん、なるほど。
じゃあ、プロテインもダイエットに悪影響なの?
しかし、ここで誰もが思うのは「プロテインってダイエットに効くんじゃなかったの?」ってとこでしょう。実際、ヒトを対象にした実験では「タンパク質を増やすと食欲が減るよ!」って報告が多く、「プロテインを1%増やすだけでも総摂取カロリーは50kcalも減る」なんてデータもあるぐらいですからね。
当然、ホエイプロテインにも普通の肉にもBCAAは入ってるわけですから、今回の食い違いは気になるところです。その原因は正直よくわからんのですが、
- 単純にヒトとマウスは違う?
- 肥満と健康体ではBCAAの反応が違う?
- 短期と長期でBCAAの効果が違う?
って感じでしょうか。ここらへんをクリアにするにはもっとデータが必要でしょうが、とりあえずは、
- プロテインとて悪影響の可能性はある(しかし、その条件はよくわからない)
- やっぱり、わざわざBCAAを飲む理由はなさそう
ってとこを押さえておけばいいんじゃないでしょうか。いやー、栄養の世界は複雑だ。