みんなベータアラニンの実力を過小評価してるのではないか?と思わせるメタ分析の話
ベータアラニンといえば筋トレ界隈で人気なサプリのひとつ。アミノ酸の一種なんですが、筋肉内のカルノシン濃度を上げてくれるんで、疲労回復に良いとかパフォーマンスが上がるなどと言われてるんですよ。
が、どうも過去の文献を見てますと、ある程度の意味はあるんだけどイマイチ効果が低くないか?と思わせるデータがいくつか報告されていて、個人的には「使わなくてもいいかな……」ぐらいに思ってたわけです。一時期は「次世代のクレアチンだ!」って言う人もいたぐらい期待されてたんですけどね。
ところが、新しく出たメタ分析(R)は、「今までのベータアラニン研究って、実力を過小評価してたんじゃない?」って話になっててちょっと驚きました。
研究チームは、これまでに発表された26件のベータアラニン実験のデータと、自身のラボで行った未発表の研究2件を組み合わせて、575人分のデータを精査。さらに、そのうち99人については個人レベルのデータまでふくめて分析を行っていて、メタ分析としてはわりと珍しい感じになってます(個人レベルのデータをふくめると、それぞれの結果のばらつきも定量化できて便利)。
で、ここでどんなポイントをチェックしたのかと言いますと、
- ベータアラニンはどこまで筋肉のカルノシン濃度を増加させるのか?
ってことです。ベータアラニンが運動に効く(と言われてる)のは、おもに筋肉のカルノシン濃度の変化によるものなんで、とりあえずこのポイントは最低でも調べておきたいわけです。
その結果をざっくりまとめるとこんな感じです。
- ベーたアラニンは、ほぼすべての人のカルノシンレベルをある程度まで増加させ、男性も女性も反応は変わらない
- が、これまで行われてきたベータアラニンの研究では、おそらく筋肉のカルノシン濃度を完全に飽和させるだけの量を使ってない可能性が高い
要するに、いままで「ベータアラニンってそんな大したことなくない?」と言われてきたのは、もしかしたら過去の実験で満足な量を使っていなかったからではないのか、と。
マニアな方のためにいちおう具体的な数値もメモっときますと、
- 1日6.4gのベータアラニンを4週間飲み続けると、筋肉1kgあたり約14mmolほど筋肉のカルノシンレベルが増え、さらに1週間補充するごとに0.5mmol/kgの増加が見られる
だったそうです。まぁこれが実際にどれぐらい運動のパフォーマンス向上につながるかといえば謎なんですが、とりあえずベータアラニンが過小評価されてた可能性は高そうであります。個別の研究を見てると、6.4g/日のβ-アラニンを24週間ほど使ったデータ(R)では、筋カルノシン量が増えるごとにサイクリングの疲れがやわらいだと報告されてますしね。
ただ、ここで判断が難しいのは、
- ベータアラニンの効果が薄れる天井がよくわからないので、下手に飲む量を増やすと逆効果になる可能性もある
- おそらくどんなスポーツでも効くわけじゃなくて、かなり特定の場面じゃないと使えない可能性が高い
みたいな問題があるとこでしょうね。特に2つ目のポイントは考えどころでして、例えば、
- 別のメタ分析(R)を見ると、ベータアラニンは30秒から10分間ぐらいの短時間で高負荷なエクササイズを行う場合には意味がある
- いっぽうで、一般的な筋トレについては、結果がバラバラなんでなんとも言いづらい(もしかしたら1セットあたりのレップ数が多い場合は使えるような気もする)
みたいな違いがあるんで、個人的には「HIITみたいなトレーニングを行うならありかな?」と言う気がしております。
以上の話をまとめると、
- ベータアラニンは、≥6.4g/日ぐらいの高用量を4〜8週間ぐらい飲み続けないと意味がなさげ
- 短時間の高負荷運動をよくやる方であれば、使ってみる価値はあるかもしれない
ぐらいの話になります。私はまだ様子見かなーぐらいの感想ですけど、上記に当てはまるような方は考えてみてもいいかもですねー。