"筋力"アップに必要な休憩時間は長い方がいいのか?問題
筋トレではセット間の休憩が大事!ってのは当たり前で、過去にも「とりあえず休憩は長いほうが筋肉は発達するよー」なんて話を紹介してたりします。そりゃあ休憩が長い方がパフォーマンスが向上するんで、筋トレがはかどりますからね(そのぶん時間が長くなりますけど)。
で、新しく出た論文(R)は「”筋力"を上げるために最適な休憩とは?」ってとこを調べてくれていて目新しい感じでよかったです。これまで筋肉量の話は多かったんですけど、筋力はあんま注目されてこなかったんで、非常によろしいのではないかと。
これは33人の筋トレ好き男性が参加したテストで、平均して約4年のトレーニングをしている人たちを選んだそうな。研究の前は、みんなセット間で平均1〜2分の休息を取りつつ筋トレしてたらしい。
実験デザインはこんな感じでーす。
- 参加者を2つのグループに分けて、1つのグループは決まった時間で休息(セット間75秒)でトレーニングを行い、もう1つのグループは自分で選んだ間隔で休息を取る
- 両グループともチェストプレス、シーテッドロー、ショルダープレス、ラットプルダウンを3セットずつ、週に3回のペースで行う(負荷は1RMの75%)
ってことで、75秒に固定した休憩と、「こんなもんで休憩は十分だろう!」と自己判断するパターンで、筋力の発達とパフォーマンスに与える差を比べたわけですね。
実験期間は8週間で、どのメニューも「もう限界だ!」と思うまで筋肉を追い込んだとのこと。その上で、両グループが各エクササイズを完成させるのに費やしたレップ数を記録したところ、だいたい結果はこんな感じになりました。
- 最初のトレーニングセッションでは、自分で休憩時間を選んだグループは、休憩を固定した参加者に比べて、すべてのセット間の休息時間が長かった(まぁそうでしょうな)
- 一般的に、自分で休憩時間を選んだグループは、筋トレが進むにつれてセット間の休息が増え、最初の2セット間の休息時間は約90秒で、終了時にはセット間の休息時間は2分強だった
- 自分で休憩時間を選んだグループは1RMgが平均22.2kg向上し、休憩を固定した参加者は平均20.9kg向上した
ということで、ざっと見ると「自分の直感に従って休憩を選ぶ方がちょっといいのかな? でも、そこまでの差でもないから無視してもいいぐらいかなぁ……」ぐらいの印象ではないでしょうか。
まー、この研究についてはいろいろ問題もありまして、
- チームは「両グループで同じ筋力増加が見込めるだろう」と仮説を立ててるのに、同等性の検定ではなく差の検定をやってる
- グループ間の強度の向上についてANOVAが十分に報告されてない
- くわしいことは省くけど、効果量の出し方がおかしい
ってのがあるんですよ。上の2つについては大した問題でもないんですけど、最後のポイントはそこそこ大事で、どうも報告された効果量が全て実際の半分ぐらいになってるんすよね。
そんなわけで、以上の問題もふまえつつ、ざっくり雑感を申し上げますと、
- 結果を単純に解釈すれば「自分で決める休憩は筋力アップに非効率!」となるだろう
- が、過去のデータでは「休憩時間が長いほど筋力が増える」ってデータは少なくないし、今回のは統計の不備もありそうなんではっきり言えない
- 同じく過去のデータ(R)では、全体的に実験期間が長くなるほど「休憩が長い方が筋力が増えそう」ってトレンドが確認されており、その点では今回のテストも似ている
みたいな感じでしょうか。先行研究もふまえてみれば、おそらく長い時間の方が有利なんじゃないかなーとは思っております。
せんじつめれば、今回の実験だけでは「筋力アップの最適な休憩時間」はよくわからんので、
- やっぱ休憩時間は、多関節エクササイズは2〜3分ぐらいから、単関節エクササイズは1分半〜2分スタートして、次セットのパフォーマンスに影響が出てるようだったら調整すればいいのでは?
という実に平凡な結論になりそうではあります。過去の実験では「5分の休憩で筋力が上がる!」みたいな報告もあるんだけど、さすがに筋トレに生活をかけてるレベルじゃないとやってらんないですからねぇ。