今週半ばの小ネタ:気功の効果いろいろスペシャル
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。なんか、たまたま気功に関するデータをいろいろ読んだので、今回は気功スペシャルです。
気功で軽度の認知障害がやわらぐ?というメタ分析
気功というと怪しげな印象もあるかもですが、科学の世界では普通に「中国の伝統的な健康体操」ぐらいの認識をされていて、ほぼヨガと似たようなあつかいになっております。どちらも、ゆっくり動きながら呼吸や身体感覚に意識を向けていく運動なので、マインドフルネスのトレーニングに近いイメージなんですよね。
で、新たに出たメタ分析(R)は、中国で行われた13のRCTから893人分のデータをまとめていて、
- 軽度の認知障害に「八段錦」は効くか?
がテーマになってました。八段錦って初耳だったんですが、気功法の最も一般的な形式の1つで、YouTubeにもいろいろと動画が上がっておりました。ざっと見てみるとストレッチ+瞑想みたいな感じで、いかにも心が落ち着きそうな気がするわけです。
ここでは「1回40~60分八段錦を週3~6回ほどやったら認知機能はどうなるか?」を調べていて、その結果がどうだったかと言いますと、
- 八段錦により、3ヶ月と6ヶ月の段階で認知機能の改善が見られた(MoCA-BJスコア使用)
- 記憶に関しては、3ヶ月目で記憶力のあらゆる側面が改善した(短期記憶とか長期記憶とか)
って感じになってます。とりあえず、軽度の認知症であれば、それなりに脳機能を改善してくれそうな雰囲気っすね。他の運動と比べて気功の効果が高いかどうかはわからんですが、とりあえず選択肢のひとつにはなりそう。
気功とヨガで不安障害は改善するか?のメタ分析
運動が不安の改善に効くのは有名な話ですが、まだよくわかってなかったのは、
- マインドフルの要素を持つ運動と、マインドフルの要素を持たない運動に違いはあるのか?
って問題であります。ご存じのとおり、マインドフルも不安の改善に役立つことが示されてるので、「マインドフルネス+運動」の組み合わせでさらに効果が上がるのでは?って考え方が生まれるのは自然でしょう。
ここでいうマインドフルの要素を持つ運動と持たない運動の違いってのは、
- マインドフルの要素を持つ運動=ヨガや気功のように、自分の体に意識を向ける要素を持つもの
- マインドフルの要素を持たない運動=ただの有酸素運動とかストレッチとか
みたいになります。もちろん、ただの有酸素運動でも自分の身体感覚にフォーカスしながら行えばマインドフルになるんだけど、通常は音楽を聞いたり他のことを考えながら動いてるケースが多いので、だいたい上記のような区分けになってますね。
で、新しいメタ分析(R)は14のRCTをまとめたもので、そのうち10件がヨガ、4件が気功をあつかっております。それぞれ、ヨガまたは気功と非マインドフル系エクササイズが不安に与える効果を比べたわけですね。
分析の結果は、こんな感じでした。
- 全体的な分析では、マインドフルエクササイズが非マインドフルエクササイズより不安を軽減する効果が高いということはなかった
- もしかしたらヨガは非マインドフルエクササイズより不安を減らす可能性もあるが、気功はいまいちかも
というわけで、意外にも「マインドフルネス+運動」の組み合わせで効果が高まるってわけじゃなかったらしい。そんなもんなんですかねぇ。
まぁ全体的にデータの質は高くないので、今後の試験ではひっくり返るかもですが、とりあえず現時点ではそこまでの優位性はないかもねーってことで。
気功で関節の痛みはやわらぐか?
関節の痛みは炎症によるところが大きいので、運動が効果的なのはよく知られた話。そのため、筋トレや軽い有酸素運動といった療法が昔から使われてきたんですが、新しいテスト(R)では「五禽戯(ごきんぎ)が関節の痛みに効くのでは?」みたいな話になってました。
五禽戯も初耳だったんですけど、こちらも気功の一種でして、虎・熊・猿などの動きをマネた動作をする運動法なんだそうな。こちらもYouTubeに動画ありますんで、参考までにどうぞ。なんでも三国志に出てくる華佗が考案したそうで、そう言われると一気にありがたみが出てきますね(笑
で、この実験は6ヶ月のRCTで、変形性膝関節症の98人を集めて、
- 1回60分の五禽戯を週4回
- 1回30分の理学療法を週4回
のいずれかに割り付けて様子を見てます。すると、その結果は、
- 両グループとも、膝の強さ(伸筋と屈筋の両方)、バランス力、6分の歩行テスト、主観的な痛みのレベルなどで同じぐらいの改善が見られた
- 五禽戯をやったグループは、バランスと痛みの2つにおいて、理学療法より大きな改善がみられた
みたいになってます。研究チームは五禽戯は「筋肉の緊張緩和と血流アップの作用が大きいからでは?」と考えてまして、こちらも痛み対策のひとつとして有力候補になるかもっすね。