目指す目標によってマインドフルネスの鍛え方は変わる
どのようにメンタルを改善したいかでマインドフルネスの鍛え方は変わる
ちょっと前に「瞑想の方法によって効果が違うかもよ」なんて話を書きまして。ざっくり言えば、呼吸に意識を向けるタイプの瞑想とヴィパッサナー瞑想では、脳の別の機能が向上する可能性があるよー、みたいな話でした。まだハッキリしたデータじゃないものの、ありそうな説ではないかと。
で、新しい論文(1)では、「目標によってマインドフルネスの鍛え方も変わるよ!」って結論になってておもしろかったです。
マインドフルネスに欠かせない3つの能力とは?
これはマックス・プランク研究所の実験で、20〜30才の男女70人が対象。1日に6回ずつ全員のスマホに通知を送って、そのたびに「いまの感情は?」とか「どれだけマインドフルだったか?」といった情報を記録してもらったんですね。
ここで大事なのが、研究者が定義した「マインドフルネスに欠かせない3つの能力」であります。具体的にどんなものかと言いますと、
- 現在の瞬間への注意:いま現在の瞬間に起きていることに集中し続けられる能力
- 無批判のアクセプタンス:自分の体験、感覚、思考、行動、感情の状態に「これはいい」とか「これはダメ」とか言わずに飲み込める能力
- 注意をともなう行動:無意識や自動的に行動するのではなく、自分のやることに意識を向けながら動ける能力
の3点。マインドフルネスって、いまだに研究者によって微妙に定義が違ったりするんですけど、この3ポイントはうまくまとまってて使い勝手がよろしいですねー。
マインドフルネス能力の違いによってメンタルの改善度も変わる
実験期間は9日間で、マインドフルネスに必須の3つの能力と、参加者たちの幸福度やメンタルの状況とくらべたんだそうな。それでまずわかったのが、「マインドフルネスの能力ごとに、メンタルの改善のしかたが変わる!(かも)」ってことです。たとえば、
- 現在の瞬間への注意が高い場合=ポジティブな感情が増加しやすくなる。注意が高ければ高いほど、日常的な気分が良くなる傾向があった
- 無批判のアクセプタンスが高い場合=ネガティブな感情が減りやすくなる。アクセプタンス能力が高いほど、怒りや不安といった感情の報告量は減った。また、日中に嫌なことがあった場合に、ポジティブな感情が減らないようにしてくれる予防効果もみられた。
- 注意をともなう行動=うえの2つほど感情への影響は見つからなかった。
って感じです。おおまかに言えば、ポジティブになりたきゃ「いまここ」に集中するのが大事で、ネガティブになりたくなけりゃアクセプタンスが重要ってイメージでしょうか。
なぜマインドフルネス能力の差でメンタルに違いが出るのか?
なんでこういった差が出るかと言えば、
- いまの瞬間に集中する
- 現在の体験をフルに味わえる
- 体験の良い側面に気づきやすくなる
- ポジティブな感情が増加!
みたいな流れです。ヒトは基本的に良いことより悪いことのほうに意識が向かいがちな生き物ですが、現在への注意が、この傾向を打ち消す解毒剤になってくれるわけですな。
もうひとつ、無批判のアクセプタンスについては、
- ネガティブな感情を受け入れる
- それ以上、ネガティブな感情が増幅しなくなる
- やがてネガティブな感情が消える
みたいな流れです。不安になりがちな人ってのは、自分に対して「オレはすぐ不安になるダメなやつだ!」と思っちゃう傾向が強く、そのせいで必要以上にネガティブな感情が増えてしまいがち。この問題をアクセプタンスが改善してくれるってことですね。
ちなみに当ブログでは、過去に「アクセプタンスレベル診断テスト」なんてのを紹介してますんで、ネガティブな感情にお悩みの方は、まずこいつで自己診断してみるといいかも。
まとめ
そんなわけで、以上の話をまとめますと、
- 良い気分で暮らしたい場合:呼吸に意識を向けるタイプの瞑想で「現在に集中する感覚」を鍛えて、いまの瞬間への注意力を高める。瞑想を使わなくても、普段から「あ、いま注意がそれたな」と気づいて、意識的に目の前の仕事に集中しなおす作業をくり返すと吉。
- 不安や怒りの感情に対処したい場合:反射的に自分や他人に対してラベリングをしてないかに注意を向ける(「あいつはダメだ」とか「自分は退屈な人間だ」とか)。もしくは、自分の体験を批判していないかを普段から注意する(「こんなのダメだ」とか)。もしラベリングや批判に気づいたら「……と思った法」などを使って、感情が自然に動いていく様子をながめる。
といった感じで、目標に応じてマインドフルネスの力点を変えていくといいかもしれません。私の場合は、だいぶ昔よりもネガティブな感情に飲み込まれなくなったんで、いまは現在に集中する感覚を鍛えているとこであります。