マルチビタミンで目の老化リスクが悪化する!という恐怖のメタ分析
抗酸化物質で目の老化は防げるか?
年を取ると誰でも目が悪くなっていくもの。その理由はいろいろありますけど、なかでも大きな原因と言われるのが「酸化ダメージ」であります。
なんせ眼球は光と酸素にさらされやすい器官なんで、酸化のダメージを受けやすいんですよね。そのせいで網膜に傷がついたりして、少しずつ視力がおとろえていくのではないか、と。
ならば、「目に抗酸化物質が効くんじゃないの?」ってアイデアが生まれるのは当然の話。実際、いくつかの観察研究(1)では「抗酸化物質が多い食事をしてる人ほど加齢黄斑変性(AMD)にならない!」って傾向が出てまして、そこそこ有力な仮説だったんですよね。
抗酸化物質と目のメタ分析
そんな状況下、みんな大好きコクラン共同計画が大規模な研究(1)をしてくれまして、「抗酸化サプリって本当に目にいいの?」ってとこを調べてくれておりました。抗酸化サプリと目の老化について調べた過去のデータから、質が高い76,000人分を抜き出して精査したメタ分析になっております。
具体的にどんな抗酸化物質がチェックされたかというと、
- ビタミンC
- ビタミンE
- ベータカロチン
- マルチビタミン
- ルテイン
- 亜鉛
といったところ。すべてのデータはRCTに基づいてまして、精度が高くてよろしいのではないでしょうか。
マルチビタミンでAMDのリスクが上がるという恐怖の結論
そこでどんな結果が出たかといいますと、
- 目の劣化の予防については、どんな抗酸化サプリも効果ゼロ!
- どころか、マルチビタミンを常用すると目の劣化リスクが21%も上がる1
- マルチビタミン以外の抗酸化物質には、とくに目への悪影響はなかった
だったそうな。予防にはまったく効果がないどころか、なんとマルチビタミンの場合は、目が逆に悪くなっちゃうという衝撃の結果であります。恐ろしい。
抗酸化物質にはAMDの進行を遅らせる作用はあるかも
というと、抗酸化物質はまったく無意味なようですが、おもしろいことに、いったんAMDにかかった人の場合は、抗酸化物質が症状の進行を食い止める可能性があるみたいなんですよ。具体的には、
- マルチビタミン=AMDの悪化リスク28%減
- 亜鉛=AMDの悪化リスク19%減
- ビタミンE、ベータカロチン、ビタミンCには何の効果もない
って感じです。マルチビタミンはAMDの発症リスクを高めるけど、逆に進行リスクは下げるわけっすな。うーん、不思議。
ちなみにこの研究では、他にも見込みがありそうな抗酸化物質として、
- アスタキサンチン
- サフラン
- ギンコビロバ
- タウリン
- メラトニン
といったあたりがあげられておりました。このへんも、ちょこちょこと「目に効いた!」ってデータが出てきたものの、まだ研究不足とのこと。確かに、どれも抗酸化能の高さで有名な成分ばかりですねー。
まとめ
ってことで、抗酸化物質がAMDに与える効果について見てみたわけですが、これだけ見ると「やっぱマルチビタミンはあかんのかなぁ……」とあらためて思いましたね、。というのも、AMDの診断って結構難しくて、定期的に目のテストを受けなきゃなんないんですよ。
そう考えると、はっきりした診断が出る前にマルチビタミンを飲むのはリスクがデカすぎる感じ。いっぽうで亜鉛に関してはリクスなしでAMDの進行だけを遅らせてくれるっぽいので、使うならこっちかなぁ、と。