3週間で貯金額を67%も増やすメンタルテクが発見される
ノスタルジーが貯金を増やす?
昔から「貯金を増やす方法」についてはおもしろい研究が多くて、たとえば「老けた自分の顔を見るとお金を貯めたくなる」とか「毎日は同じイベントのくり返しだと思うと銀行の残高が増える」なんて話があったりするわけです。
で、新しく出た論文(1)では、「ノスタルジーが貯金を増やす!」って結論になってて、これまたおもしろかったです。
これは米地銀の大手キャピタルワンが、ブラッド・クロンツ博士と組んで行ったもの。クロンツ博士はクレイトン大学でお金に関する心理学を研究している先生で、「お金で不幸にならない11のカルテ」なんかが有名っすね。
ノスタルジックなアイテムを貯金の価値観に結びつける
実験では、参加者を2つのグループにわけております。
- ノスタルジーグループ:ノスタルジーをそそるようなアイテムや画像(昔の家の写真とか)を実験室に持ってきてもらい、意図的に過去の懐かしい思い出にひたってもらう時間を作る
- コントロールグループ:普通に金融とか貯蓄に関するレクチャーを受ける
って感じで、ノスタルジーグループは、とくに貯金や金融に関する専門的なトレーニングは何も受けなかったそうな。
ちなみに、もうちょいノスタルジーグループの介入法を説明しておくと、
- ノスタルジックな写真を見て、なんらかのポジティブな感情を引き出す
- ポジティブな感情に正確な名前をつける(郷愁とか望郷とか)
- なぜ自分は、そのアイテムや写真にポジティブな感情を持つのかを考える
- ポジティブな感情がわく理由を、自分の貯金目標に結びつける
みたいな感じ。ちゃんと二重盲検法も使ってて、実験デザインもよろしいですね。
いちおう、ノスタルジーグループの具体的な例を挙げますと、
- かつて住んでた家の写真を見る
- ポジティブな感情を「郷愁」だと特定する
- 過去の家に郷愁を感じるのは、自分のなかに「決まった住居を持つことによる安心感」を求める価値観があるからだと気づく
- 自分がお金を貯めるのは安心感を得るためなのだ、と位置づける
といったところでしょうか。まず自分のなかにあるモヤーッとした感情を正確な言葉で表現し、そこから明確になった自分の価値観を、具体的な貯金のゴールに落とし込んでるわけっすね。わりと「7つの習慣」とかに近い自己管理術と言いますか(大きな価値観からトップダウンで目標を決めてくとこが)。
ノスタルジーグループは貯金額が激増
実験期間は3週間で、介入を行ってからの貯金額をチェックしたところ、
- コントロールグループは貯金額が22%アップ
- ノスタルジーグループは貯金額が67%アップ
って差が出てたんだそうな、実に3倍もの違いになってまして、このまま貯金額が開き続ければ、1年で112万円ぐらいの差になる計算なんだとか。すごいもんですなー。
まとめ
こういった違いが出る理由は簡単で、ヒトは感情で動く生き物だからっすね。いくら理詰めで「60才までに貯金額が1億はないと!」とか言われてもモチベーションは上がりませんが、「楽しかった昔の家のような安心感を得たい」みたいな言い方をされるとメンタルの方向性が一気に変わるという。
以上の結果をふまえたうえで、クロンツ博士は以下の手法を推奨しておられます。
- ノスタルジーをそそるような写真を、スマホの壁紙にしたり、部屋の壁に貼っておく
- 銀行のアカウントを、たんに「貯金用の口座」と呼ぶのではなく、「安心感引き起こし用口座」みたいに自分の価値観に沿った名前にしておく
いずれにせよ、定期的に「なんのために貯金をしてるのか?」を思い出せるような仕掛けを作るのが大事ってことなんでしょうな。なかなか貯金ってのも奥が深いもんです。