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今週末の小ネタ:外向的な人は職場で有利?引っ越しで人生の満足度は下がる?オッサンと創造性

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

外向的な人はなぜ職場で有利なのか?の徹底レビュー

外向的な人は仕事で有利!みたいな考え方は昔から多いんですよ。外向的な人はコミュニケーションが好きなんで、対人関係が重要な仕事でうまくいくのは、なんとなく予想できる話ですね。

 

 

では、この考え方がどれぐらい正しいかってことで、新たな研究(R)は「外向的な人は本当に職場で有利なのか?」ってあたりを深堀りしてくれてました。具体的には外向性と仕事に関する過去の研究(合計91のメタ分析)を包括的にレビューしたものでして、モチベーション、ワークライフバランス、感情的幸福、パフォーマンスといった161の変数に、外向性がどんな影響を与えるかどうかをチェックしたんですよ。

 

 

念のため、外向性と内向性の定義もまとめておくと、

 

  • 外向的な人:おしゃべりで外向的、主導権を握ることを好み、ポジティブな感情を表現し、新しい経験を求めることを楽しむ

  • 内向的な人:物静かで、感情的に控えめで、元気がなく、他人と簡単には親しくならない

 

みたいになります。私の場合は完全な内向人間でして、「外向は仕事でも有利!」と言われると困っちゃうわけですが、果たして結論は以下のようになりました。

 

  • 90%の変数において、職場では外向性が高い人のほうが有利だった

  • 外向的な人が有利なのは、モチベーション、感情、対人関係、パフォーマンスという4つのカテゴリーだった

 

ってことで、思ったとおり外向性有利!って結論ですね。なんでも、外向性は目標達成のモチベーションと相関し、望む報酬を得ることができ、ポジティブな感情を経験しやすいそうで、そこらへんが職場での有利さにつながってるそうな。また、外向的な人はコミュニケーション能力が高いため、いろんな社会的状況に適応しやすいのも役に立つとのこと。んー、いいですねぇ。

 

 

ただし、研究チームは、私のような内向人間も「ヘコむ必要はないよ!」と指摘してまして、職場での成功には「認知能力、誠実性、感情コントロール能力など、他にも数多くあるからそっちで勝負してね!」と言っておられます。

 

あなたは内向的かもしれませんが、もしあなたが知的で、一生懸命働く性格の持ち主なら、おそらくうまくやっていける。その一方で、外向的であっても、認知能力や勤労意欲に欠けていれば、おそらく成功は望めないだろう。

 

ってことなんで、内向人間の方々は、あきらめずに他の部分で戦うことを考えたほうがよさそうっすねー。

 

 

 

引っ越しで人生の満足度が下がる人と上る人の違いとか

人生ではいろいろと住む場所を変えねばならないケースがあるわけです。転職、進学、結婚など、人生の転機ごとに引っ越しをする人は多いでしょう。

 

 

ただ、引っ越しが必ずしも幸せにつながるとは限らず、「自分が住んでいる地域に共感できないと人生の満足度は上がらないよ!」って傾向が過去にいろんな調査で報告されてたりします。引っ越しをしたあとで、その場所に愛着やコミットメントが起きないと、人生の満足度は上がらないわけですね。

 

 

そこで、ドイツで行われた研究(R)では、「引っ越し後に住むところに共感するには?」ってのを調べてくれてておもしろかったです。まず研究チームの問題意識を紹介しとくと、

 

真に成功した人生を送るためには、ほとんどの場合、居住地へのコミットメントが決め手となる。しかし若い人々は、人生のスタートを切るごとに居住地を頻繁に移動する必要がある。私たちは、その結果として生じる緊張感を、縦断的な研究でより詳しく調べた。

 

みたいになります。そのために、研究チームはドイツに住む1,000人以上の学生を集め、卒業直前と翌年の2回にわたり調査を実施。その期間中、参加者のうち500人は勉強した場所を離れ、もう一方の参加者は移動しなかったそうな。

 

 

それと同時に、みんなの家族や友人、パートナーなど、自分にとって大切な人がどこに住んでいるかもチェックしたところ、以下のような傾向が見られました。

 

  • 自分にとって大切な人が近くに住んでいるほど、住んでいる地域への帰属意識も大きくなる
  • スカイプや電子メールでいくらコミュニケーションをしていても、地理的な近接性の喪失を補うことはできない(つまり、親しい人との現実的な距離が離れれば離れるほど、不満も大きくなる)

 

というわけで、住む地域にコミットするには、親しい人との物理的な距離が大事なのかも?ってことですね。まぁ住む場所に共感できている人は居住地域でうまくコミュニケーションができてるはずなんで、「親しい人が近くにいればOK!」って話じゃないような気もしますけれど、内向的な人が引っ越す場合には重要な観点かもしれないっすね

 

 

 

現代では「創造性」は若者だけのものじゃないぞ!みたいな話

科学は40歳以下が有利!って話が過去にありまして、化学、物理学、医学などの分野では、若い人たちがガンガンに国際的な賞を取ってた時代があったんですよ。

 

 

が、新しいデータ(R)では、「ここんとこは歳を取った人でもいけるんじゃないの?」って話になってて、私のようなアラフィフにも希望を与えてくれる感じでした。

 

 

この研究は1901年から2008年までの3分野のノーベル賞受賞者を対象に、受賞対象となった研究525件を行った年齢を調査したもの。いろんなノーベル賞のパターンを掘り下げて、良い仕事を残した年齢にパターンがあるかどうかを調べたわけですな。

 

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 1905年以前は、受賞者の約3分の2が40歳以前に受賞作品を発表し、約2割が30歳以前に受賞作品を発表していた

 

  • しかし2000年になると30歳以前の受賞はほとんどなくなり、物理学では40歳までに大きな成果を上げたケースは19%しかなく、化学ではほぼゼロだった

 

  • 今日、物理学者がノーベル賞につながる仕事をする平均年齢は48歳で、30歳以下の物理学者が画期的な仕事をすることはほとんどない

 

だったそうで、現代では「研究では若い人間が有利!」ってことはなくなってるみたいっすね。このような年齢差が生じた理由として、研究者たちはこんなことを言っておられます。

 

過去の若い物理学者たちは、理論的な革命の一部だった。若い科学者がうまくいったのは、古い考え方を学ばず、新しい方法で考えることができたからかもしれない。

 

つまり、かつては理論的な発展が重要な時代だったので、新たな視点からものごとを見るのが役に立ったんだけど、現代では学問が複雑化してるので過去の知識を知っておくほうが有利なんじゃなかろうか、と。

 

 

あくまで学問の世界の話なんで、それ以外のフィールドでも同じことが言えるかは謎ですが、問題が複雑化してる世界では同じ知見が適用できるのかも?とは思うわけです。すでにアラフィフな私としては、ここらへんを希望に生きていきたいもんです。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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