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変化が激しい現代の必須スキル「考え直す」を身につけるには?------アダム・グラント「シンク・アゲイン」#2



前回はアダム・グラント先生の「シンク・アゲイン」の覚え書きをして、「いかにバイアスから逃れて自分や他人とうまくやっていくか?」みたいなポイントをチェックしてみました。今回はその続きで、「集団やグループのバイアスからいかに逃れるか?」みたいなとこを見てみましょう。

 

 

ポイント3. 集団との関係を”考え直す”

  • 私たちは、自分のグループや仲間を無意識のうちに区別し、敵対するグループと自分たちの間に線を引いてしまうバイアスがある。そして、私たちは自分たちの側がいかに正しいを説き、ライバルグループがいかに悪いかを主張する。

    このような傾向があるのは、私たしが社会的な動物だからで、所属と地位を求める動機に突き動かされるのが大きい。しかし、あまりに自分と相手のグループを分けると二極化が起き、より極端な信念を持つようになってしまう。

    ……なんだけど、より極端な信念を持つ人ほどグループ内でのステータスが高くなりやすいので、この問題はかなり難しい。

 

 

  • 敵と仲間を無意識のうちに区別するバイアスを乗り越えるには、以下のような方法がある。

    • オーバービュー効果:宇宙旅行を経験した宇宙飛行士は、上空から地球を見た後で視点が変わり、人類はみな同じような存在だと思うようになった。同じように、かなり引いた視点からグループを見てみるよう意識するだけでも、かなりバイアスから自由になる。

    • 反事実的思考:「もしこちらのグループが間違っていたら?」という感じで別の現実を考え、異なる状況や結果を想像してみる。

 

 

  • さらに、ヒトには「バイナリーバイアス」というものもある。これは、人間が様々なカテゴリーを2つの対立するものにわけて世の中を理解しようとする傾向のことで、「世界は信者と非信者のふたつしかいない」みたいな思考にハマりやすくなる。このようなバイアスは、私たちと彼らの間に敵意とステレオタイプをもたらす

 

 

  • 「バイナリーバイアス」については、あるトピックについて様々な見解を示したり、いろんな角度の見解に触れるのが解毒剤になる。とにかく、「単純化したい!」という衝動に抵抗することは、議論のリテラシーを高めるための一歩になるので、心がけておきたい。

 

 

  • 単純化の罠から逃れるには、定期的に以下の質問を自分に投げてみるとよい

    • 私がその仮定に行き着いたのはなぜか?
    • なぜ私はそれを正しいと思うのか?
    • その仮定が間違っていたらどうなるか?
    • 自分の分析の不確実なポイントはどこだろうか?
    • 私の意見のメリットとデメリットは何だろうか?

 

 

  • 自分と意見が異なる人たちを想像する行為を「パースペクティブ・テイキング」と呼び、これはバイアスから逃れる重要な技法のひとつと言える(要するに共感力)。ただし、現実には誰かの視点で物事を見ようとするよりも、その人たちと話し、直接学ぶほうがバイアスから逃れられることが多く、これは「パースペクティブ・シーキング」と呼ばれる。

 

 

  • 自分が入っている組織の「考え直す」スキルを高めるためには、第一に「心理的安全性」が欠かせない。これは、仲間からの罰や報復を恐れずにリスクを取ることができる状態のことで、心理的安全性があるチームほど、より多くの問題やエラーを自ら報告する傾向がある(ミスを隠すより報告するほうが楽だから)。

    逆に、心理的安全性が低い環境では、みんあ罰を避けるためにエラーを隠そうとし、これが最後には大きな事故につながる。心理的安全性とは、基準を緩和することではなく、尊敬、信頼、開放の雰囲気を醸成することであり、学習文化の基礎となるものだと言える。

 

 

  • ここまでの話をふまえたうえで、グラント先生は「最善の方法」や「最も効率のよい技法」といったものにこだわらないように戒めている。この状態を追い求めると、私たちは最適なソリューションばかりを追い求め、さらなる疑問や改善のための手段を考えなくなっちゃう可能性がある。

    結果にこだわる行為は短期的なパフォーマンスには良いかもしれないが、長期的な学習の妨げになる可能性がある。実際、ある計画が思い通りに進まなかったとき、多くの人たちは「考え直す」作業を行わず、より多くの資源を投入して計画を倍増させようとする傾向がある。

 

 

  • さらに、グラント先生は、年に2回の個人診断を推奨している。これは、自分が現在追求している目標や野望を再評価し、現在の願望がまだ自分の計画と一致しているかどうか、そして行動を改める時期なのかどうかを確認する作業を意味する。

    この際には、「私たちのアイデンティティはオープンシステム」であり、行きたい場所やなりたい自分という古いイメージに縛られる必要はないという事実をつねに念頭に置く必要がある。自分の選択肢を考え直す最も簡単な方法は、日々の行動を疑うことだと言える。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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