「あのときこうだったら人生は違っただろうなぁ……」みたいな思考にも意外とメリットがあるぞ!という話
「あのときに違う行動を取ってたら人生は違っただろうなぁ……」とか思うことは誰でもありましょう。わたしも40代に入ると、いろいろ過去を思うことも増えてきたわけです。
ただ、この手の思考法って、一般的にはわりと評価が低めではありましょう。ポジティブ思考で未来を考えるケースにくらべて、どうしても後ろ向きっぽい印象があるのではないか、と。
が、近ごろチェックした論文(1)は、「あのときこうだったら……みたいな思考にはメリットがある!」って話になってて勉強になりました。
これはカリフォルニア大学の研究で、4つの実験から構成されております。ざっくりどんなデザインだったかと言いますと、
- 被験者を半分に分けて、一方のグループには「もし過去に違うことがあったらどうなっただろう……」と思うことをかたっぱしから書き出してもらう
- 残りのグループには「いまの人生になるまでに影響が大きかった過去のイベント」だけをかたっぱしから書き出す
- 最後に、全員のメンタルを質問紙でチェックする
みたいな感じです。たとえば、最初のグループには「あのとき骨折してなかったら、いまの妻とは出会ってないから独身のままかもなぁ…」などと書いてもらい、別のグループは「あのとき骨折したらから入院先でいまの妻と出会ったんだよなぁ…」のように書いてもらったわけですな。
ちなみに、このような「あのときこうだったら……」って思考法を、研究者は「反事実」と呼んでおります。そのままですな。
で、その結果がどうだったかと言いますと、
- 反事実をイメージしたグループは、大半が「自分の人生に深い意味を感じられるようになった!」と答えた
だったんですな。反事実的な思考には、実は人生の意味を引き出す作用があるのではないか、と。ほほーう。
さらに、その後に行われた3つの実験では、「なんで反事実で人生の意味が増すの?」って問題を調べてまして、こんな結論になってたりします。
- 運命を認識する:「あの事件がなかったら……」と思うことで、自分の人生があたかも「大きな運命」に導かれたような印象が生まれる。そのため、「あー、この人生は自分より大きなものに導かれてるのかな……」みたいな気分になっていく。ややスピリチュアルっぽいですけど、これは「畏敬の念」にもつながる話でして、意外とバカにできないんですな。
- 人生がよく見える:「現実とは違った過去」を想像することで、自分の人生のよりポジティブな側面に気づける。たとえば、「あのときに貧乏になったから、逆にがんばったんだよなぁ……」みたいな感じ。ここらへんは、「ポジティブ思考が苦手な人が3秒で幸せになる方法」とちょっと近い話ですな。
ざっくり言えば、事実と異なるイベントを思い描くことで現在の人生が多層構造になり、深みが出たかのような気分になっていくわけっすね。「ラ・ラ・ランド」のラストシーンみたいな。
研究者いわく、
ほんの短いあいだ、頭のなかで現実の人生と違う事態を思い描くと、「そうだったかもしれない人生」と「現在の人生の意味」につながりができる。その結果、私たちの体験と人間関係に意味が生まれる。
とのこと。もちろん「あのときこうしてればなぁ」みたいな後悔ばっかしてても仕方ないですが、現実と異なる人生をフラットに思い描く限りメンタルにはいいみたい。
当ブログでも何度か書いてるとおり、「人生の意味感」は高い満足感を生み出しますんで、定期的に反事実を考えてみるのもいいかもですな。