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今週末の小ネタ:通勤の悪影響を逃れるには? コーヒーで運動のダメージが回復? 振動トレーニングで脳機能が改善?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 
通勤は仕事に悪影響を及ぼすのではないか?

通勤は1日の中で最悪の時間帯だ!」みたいな調査結果はめちゃくちゃ多いんですけど、新しい研究(R)は、さらに具体的に「通勤によって仕事のパフォーマンスが下がらない人の特徴とは?」みたいなとこを調べてくれてていい感じでした。

 


これはダートマス大学などの調査で、どんな研究かと言いますと、

 

  1. パンデミック前の1年間に274人へ協力を頼み、フィットネストラッカーやスマートフォンを使って通勤前と通勤後の30分間のデータ集める

  2. そのデータを分析して、職場でのパフォーマンスをチェックする

 

みたいになってます。トラッカーで通勤時のデータを集めて、それが個人の仕事のパフォーマンスを予測できるかどうかを調べたわけですね。

 

 

その結果をおおまかにまとめるとこんな感じです。

 

  • 仕事のパフォーマンスが低い人は、通勤前、通勤中、通勤後のストレスレベルが高い
  • 仕事のパフォーマンスが低い人は、通勤中に携帯電話をよく使う
  • 仕事のパフォーマンスが高い人は、出勤と退勤の時間に一貫性がある
  • アクティブな通勤(徒歩や自転車)をしている人ほど、職場での生産性が高い傾向がある

 

だったそうで、通勤のフラストレーションに悩む人ほど生産性が下がりがちなのは従来の研究どおりなんだけど、一方では、以下のような対策で通勤ダメージを減らせるかもしれないわけっすね。

 

  • しっかりとした計画を立て、通勤のタイミングに一貫性を持たせる

  • 可能な限りアクティブに通勤するか、アクティブな要素を加える(仕事を始める前に、少し歩くか、軽い運動をしたりとか)

  • 通勤時間を利用して仕事の準備をする(1日の計画を立てたりとか)

  • 健康を保つ(通勤とは直接関係ないんだけど、一般的なストレスへの耐性を高めるために)

 

私はすでに通勤を止めちゃって久しいですが、仕事前の運動とかは在宅ワーカーにも当てはまるポイントかもしれんですな。

 

 

 

コーヒーが運動後の回復にプラスになるんじゃないの?説

運動後にはコーヒーを飲むといいのでは?みたいなデータ(R)が出ておりました。まずは実験デザインを雑にまとめると、

 

  1. 14名の男性アスリートに協力を頼む

  2. サイクリング運動で筋肉のグリコーゲンを徹底的に減らしたあとに、1)砂糖とミルク入りのコーヒーを飲む、2)砂糖入りミルクだけを飲む、って2つの条件に割り当てる(盲検化はされている)

  3. 運動から4時間の回復期間で、どんな違いが出るかをチェックする

 

みたいになります。有酸素運動でエネルギーをすっからかんにしたあとで、果たしてコーヒーはどのような影響を与えるのか?ってことですね。

 

 

で、みんなに上記のふたつの条件をそれぞれ試してもらったら、結果はこんな感じになりました。

 

  • 運動から4時間のグリコーゲンレベルの回復量は、砂糖入りミルクだけの場合が40.54±18.74mmol/kg dwで、コーヒー+ミルクの場合が102.56±18.75mmol/kg dwで、コーヒー+ミルクはミルクだけの場合に比べて回復量が153%多かった

 

  • そのほか、血糖値およびインスリン値の変動曲線化面積(AUC)も、コーヒー+ミルクのほうが有意に大きかった

 

ってことで、なぜかコーヒーを飲んだほうが休憩時のグリコーゲン回復量が多かったらしい。研究チームいわく、

 

砂糖を加えたミルクとコーヒーを飲むと、砂糖+ミルクだけを飲む場合に比べて、サイクリング運動から4時間の回復期における筋グリコーゲンの再合成が改善された。

運動後に炭水化物とコーヒーいっしょに飲むことは、筋グリコーゲン回復を改善するための効果的な戦略だろう。

 

とのこと。なんでコーヒーで筋グリコーゲンが増えるかは謎なんですが、カフェインとかカフェイン酸が影響してるのかなーって感じですね。b-monsterのあととかに試してみるか……。

 

 

 

振動トレーニングで脳機能が改善?

振動トレーニングマシンってのがありますな。振動する台の上に立って筋肉をより刺激する機械で、近ごろは導入されてるジムをちらほら見かけますね。




ただ、この振動マシンにどれぐらいの効果があるのかはまだ謎が多いんですけど、近ごろジョージア州立大学が行ったデータ(R)では、「振動トレーニングが多発性硬化症(MS)に効果があるか?」を調べてくれてて参考になりました。MSは神経変性の疾患で自己免疫機能の異常によって運動や感覚に問題が生じる難しい病気っすね。

 

 

実験では18人のMS患者さんを対象に6週間の振動トレーニングを行ったもので(対照群もあり)、最初は1分間のセッションを5回やって、セッション間には1分間の休憩を取るトレーニングを週に3回ずつ行ったそうな。全体的に最大でも7.5分しかトレーニングしてませんで、これで目立った違いが出たらなかなかすごいことっすね。

 



でもって、その結果がどうだったかといいますと、振動トレーニングをした人たちは、

 

  • 歩行スピードが上がった!
  • 生活の質にも向上が見られた!
  • 言語学習と記憶力の向上が見られた!
  • 日常生活における実行機能の向上が見られた!

 

だったそうです。週3回、1回5~7.5分、6週間という短期間の介入にしては、かなり印象的な結果じゃないでしょうか。身体的な効果に加えて認知的な効果も確認されてるのもすばらしいっすね(身体機能が上がれば認知が改善するのは当然かもですが)。

 

 

もちろん、これはMS患者さんしか対象にしていないし、実験のサンプル数も少ないので、それ以外の人たちで同じ効果が得られるかはなんとも言えないとこがあるんですけど、振動トレーニングの可能性を示すデータとして記憶しときたいとこですね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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