筋肉を減らさずに体脂肪だけ減らせる1日のカロリー制限の目安はどこらへんなの?のメタ分析
ご存じのとおり、筋肉量を増やす作業と体脂肪を減らす作業はトレードオフでして、
- 食べる量を増やすと筋肉は増えるが体脂肪も増える
- 食べる量を減らすと体脂肪は減るが筋肉も減る
って関係にあるわけです。これだけはどうにもならないので、どうにかカロリーのバランスを取りながら、できるだけ筋肉を減らさずに体脂肪を増やすようにがんばるしかないんすよね。
では、具体的にどれぐらい食事を減らしたら筋肉も減っちゃうのか?ということで、そこらへんをガッツリと調べたメタ分析が出ておりました。これは、過去に行われた増量&減量における研究から52件をピックアップしたもので、そのうち男性を対象としたものが10件、女性を対象としたものが24件、男女混合の研究が18件、合計の参加者は1,213人で平均年齢は51±16歳だったそうな。
でもって、ここでは2種類の分析が行われてまして、
- シンプルにカロリー制限をした人と、そうでない人を比べる。実験期間は3~28週間で、1週間に2~4セッション、1セッションあたり4~14エクササイズを行い、1エクササイズあたり1~4セット、1セットあたり1~16回の筋トレをしていた
- 「脂肪1キログラム=累積で約9,441キロカロリーの削減」って仮定にもとづいた、各参加者の1日のエネルギー不足量を逆算し、さらにメタ回帰を用いて、「食事量の変化と筋肉量の変化」を評価する。
みたいになってます。当然、ここで気になるのはふたつめの分析結果でして、「どれだけカロリーを減らしたら筋肉に悪影響が出るの?」ってのがざっくりわかるわけですな。
ってことで、以下に大きな結果を見てみましょうー。
- カロリーを制限をすると筋肉の増えかたも有意に小さくなる(効果量=-0.57、p=0.02)。と同時に、カロリー制限は筋力の増えかたも小さくしたが、その効果量は小さく統計的に有意ではなかった(ES = -0.31, p = 0.28)
- カロリー不足が1日100kcals大きくなるごとに、筋肉への効果の大きさは0.031単位で低下する傾向がった。さらに、カロリー不足が1日500kcalsのあたりから筋肉が完全に増えなくなると予測され(ES = 0)、カロリー不足が1日500kcals以上になったところから筋肉の推定変化量がマイナスになった
ってことで、ここでは体重を維持するために必要なカロリーからマイナス500kalってのがひとつの基準になってますね。うーん、なるほど……。
ただし、この分析にはいくつかの難点がありまして、
- 分析1では、参加者の大半が50代、60代、70代のトレーニングをしていない人たちばっかり(筋トレ経験と年齢はどっちも筋肉の増え方に影響する)
- 分析2の参加者はもうちょい年齢の幅があるが、やっぱり筋トレ歴が浅い人が多い
- 全体的にタンパク質の摂取量を考慮に入れてないので、高タンパクな食事をした場合にはもうちょい差が出そうな気もする
ってあたりは判断を難しくしております。つまり、この分析にふくまれる参加者よりだいぶ体脂肪が少なかったり、すでにめちゃくちゃトレーニングをしている人であれば、マイナス500kalって基準が当てはまるかどうかは難しいとこなんですよね。その点で、全体のデータを細かく見てみると、1日のカロリー制限がマイナス200~300kcalを超えたあたりから筋肉が減った例も報告されてまして、どうにも判断しづらくはなってたりします。
というわけで、個人的には「1日に維持カロリーから500kal以上のカロリーを減らさない」ってのを「筋肉を減らさないための食事量」として使う悪くないかなーと思いつつも、誰にでも当てはまるガイドラインとして推奨するのもどうかなーってとこなんすよね。ではどうするかってとこですが、個人的には、
- 体重の変化を1週間ぐらいの単位で見つつ、日々の摂取カロリーを決めていく
ってやり方をおすすめしたいところです。1週間に何パーセントぐらい体重が増えたか(または減ったか)をベースにしつつ、カロリーをコントロールしていくわけっすな。その具体的な計算法については「見た目が良い肉体を作るための食生活設計ガイド(2020年版)#1「1日のカロリー摂取量をどう決めるか?のガイドライン」」にまとめたのでくり返しませんが、見た目の良い体を作りたい方は参考になさいませ。