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今週半ばの小ネタ:腰や肩がずっと痛いと早死にしやすい? 効果的に寄付をするには? ダンス、メンタルにめちゃくちゃ良い説


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

腰や肩がずっと痛い人ほど早死にしやすいのはなぜか?

日本人の90%は人生のどこかで腰や肩の痛みを経験すると言われてますが、近ごろは「慢性的な痛みに苦しんでいる人ほど寿命が短い」って話もあるんですよ。理由はよくわからんのですが、慢性的な痛みに悩む人ほど心臓病や癌で命を落とす率が高いとよく報告されてるんですね。

 

 

で、シドニー大学の新しい研究 (R)は、「なんで慢性痛が早死ににつながるのか?」を調べておりました。

 

 

この研究は、腰痛や首、肩、股関節の痛みといった筋骨格系の慢性的な痛みに悩む人約20万人を対象にしたもの。これをみんなのライフスタイルや死亡率などと比べたところ、以下のような傾向が見られたらしい。

 

  • 痛みのない人に比べて、筋骨格系の痛みを持つ人は、早死にするリスクが非常に高い

  • 痛みのある部位が多ければ多いほど早死のリスクは高くなり、たとえば、肩、首、背中、膝の4つの部位に痛みがある人は、リスクが46%も高くなる

 

ってことで、やはり慢性痛は早死にと結びついているんじゃないか、と。では、なんでそんな現象が起きるのかと言いますと、

 

  • 適切な身体活動レベル、禁煙、アルコール摂取の抑制、オピオイドの常用の回避などを調整したところ、早死にのリスクが低下した

 

だったそうな。簡単に言えば、「痛みのせいで健康的な生活を送らなくなり、そのせいで早死にのリスクが高まるのでは?」って考え方ですね。

 

 

研究チームいわく、

 

ほとんどの人は、慢性的な痛みに対処するには、鎮痛剤と安静が最善の方法だと考えているが、それは逆である。

 

とのこと。慢性的な痛みそのものが問題ではなくて、「痛いからおとなしくしてよう!」って態度になるのが問題なのではないか、と。まぁそれだけが原因じゃないでしょうが、もともと身体の痛みってのは脳の誤認であるケースが多く、安静にするより普通に運動したほうがいいよーって見解のほうが一般的ですからねぇ。この結果にも納得しちゃうところです。

 

 

もちろん、背中を骨折したりとか、癌による痛みが起きている場合などは安静と投薬が有効だとは思うものの、よくわからん慢性の痛みは身体と精神が影響し合う複雑な問題なので、とりあえず痛みがあっても普通に行動するってのは正しい考え方でしょうね。

 

 

 

効果的に寄付をするにはどうすればいいのか?問題

ボランティア活動は体にいい!」ってのは何度か書いている話。人間は社会的な生き物なので、人とのつながりを感じると幸福感が増し、実際に慈善活動を行った人の脳は報酬系が活性化してたりするんですよね。

 

 

ただし、なんでもかんでも寄付すりゃいいってもんでもないので、せっかくだから寄付したお金ができるだけ有効に使われたほうがいいわけです。いわゆる「効果的な利他主義」の考え方でして、近ごろは私も、この考え方に影響を受けた寄付活動などをしております。

 

 

ってことで、新たに出たレビュー(R)では、効果的な寄付を行う方法を考察してておもしろかったです。まずは「効果的な利他主義」の考え方がどのようなものかをチェックしてみると、

 

100ドルの寄付を発展途上国に行えば、失明の原因となる病気であるトラコーマから多くの人を救うことができる。それに対して、先進国で盲目の人を助けるために盲導犬を訓練するには5万ドルがかかる。このように、1ドルあたりのインパクトに大きな差があるのは珍しいことではない。

 

ってのがわかりやすいでしょうね。これを読むと「おいおい!困ってる人たちに格差をつけるのか!」って感情もわくわけですが、いっぽうで同じ寄付額でも幸福度の総量が違ってくるのも間違いないんですよね。

 

 

が、それでもやはり効果的な寄付を実行するのは難しいもんでして、その原因としては、

 

  • そもそも多くの人が寄付は個人の好みの問題だと考えており、個人的につながりがある人を支援したがる
  • たいていの人は遠い貧しい国より、近い国に寄付しようとするバイアスがある
  • 多くの人を救うほど、1人あたりのありがたみが薄れる
  • 多くの人は間接費が高いチャリティを嫌がるが、実際には間接費が高いからといって費用対効果が低くなるわけではない

 

といったあたりが挙げられておりました。どれも行動経済学でよく指摘されるポイントですけど、これは寄付においても当てはまるんじゃないかと。

 

 

これはなかなか難しい問題ですけど、とりあえず著者は「GiveWellみたいに信頼できる情報ソースをチェックしておくと、効果的な寄付ができていい感じだよ!」ってアドバイスをしておられました。そう言えば、私が「Give Directly」を選んだときもここを使ってましたね。

 

 

まー、効果的な利他主義には感情的な反発も多かったりしますが、私の場合は「同じ金でもインパクトが違うぜ!」ってのを定量的に判断できたほうが、脳の報酬系が活性化しやすいような気がしております。

 

 

 

ダンス、メンタルにめちゃくちゃ良い説

香港理工大学の研究チームから、ダンスってめちゃくちゃメンタルに良いのでは?と思わせるデータ(R)が出ておりました。

 

 

これは、ダンスに関する28の先行研究をメタ分析したもので、合計で2,249人の参加者を対象に、不安、ストレス、鬱の症状にダンスが効くかどうかを分析したんだそうな。過去の研究では、ダンスを使ったセラピー(社交ダンスとかベリーダンスとか)は、気分障害を抱えるあらゆる年齢の男女に効果があり、パーキンソン病の認知症患者の生活の質を高めるって報告もあったので、果たしてそれが事実かどうかを調べてくれたわけですね。

 

 

で、おおまかな結果をまとめておくと、 

 

  • 週に2時間半以上のダンスは、性別や年齢を問わずにすべてグループで精神的な苦痛を軽減するのに役立つ
  • また、ダンスは高齢者や一部の癌患者の健康を改善したり、人間関係の促進にも役立つ

 

だったそうで、全体的に良い結果が出てますね。まぁ全体的に見ると、ダンスセラピーに関する研究はいまいち質が低いんですが、ほとんどの研究では、ダンス/ムーブメント・セラピーが多くの人々の生活の質を大幅に改善すると報告されてますんで、「アドオン」の代替療法として使うぶんには十分に有効じゃないでしょうか。

 

 

では、なんでダンスがメンタルにいいのかってとこが気になりますけど、

 

  • そもそも運動が脳機能を改善するので、そりゃあメンタルにもいいでしょう
  • ダンスは言葉ではなく身体的な表現で自分の気持ちや感情を伝えられるので、より奥深い感情や思考を表に出すことができる

 

ってのが大きいっぽいっすね。体を動かすのがメンタルに良いのは当然として、ダンスによる独特の自己表現がメンタルの開放につながるんじゃないか、と。

 

 

データを見てる限り、ダンスクラスで踊ってもいいし、自分で踊ってもいいし、「ムーブメント・セラピー、メディカル・ダンス・セラピー、ボディ・サイコセラピー」などと呼ばれる専門の暮らすに参加してもいいし、いずれも身体とメンタルに良い影響があるみたいなんで、気になる方はお試しをー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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