「空腹トレは筋肉に悪い」は本当か?〜最新12週間試験とラマダン研究から読み解いてみよう!〜
皆さんは、朝にトレーニングしてますでしょうか?私は夕方にトレーニングを行うことが多いんですけど、仕事との兼ねあいで午前に有酸素運動を行うこともあるわけです。でもって私は朝ごはんは食べない派なので、「空腹で運動するのって筋肉に悪いのか?」みたいなテーマは昔から気になっていたんですよ。それと申しますのも、
- 空腹状態では、グリコーゲンの枯渇によって脂肪酸やケトン体の利用が増えるため、特に有酸素運動では脂肪燃焼効率が高まる可能性がある。
- しかし、筋トレのような高強度の運動はパフォーマンスを下がちゃうかもしれず、そのせいで、空腹でトレーニングをすると筋肉が肥大しなくなる可能性がある。
って議論がずっと続いているからです。空腹トレーニングってのは、体脂肪を燃やすにはいいんだけど、負荷が高いトレーニングのパフォーマンスは下げちゃうかもよーって話ですね。
なかなか難しい問題ですけど、そこで新しく出た研究(R)では、「朝食を抜いた空腹状態で筋トレをすると、筋肥大や筋力にどんな影響があるのか?」というテーマを、12週間にわたって徹底的に調べてくれてて勉強になりました。
で、この研究は20〜40歳の男女28名を対象に、以下の2つのグループに分けて比較を行ってます。
- 空腹トレ:朝10〜12時間の絶食状態で週2回の筋トレを12週間実施
- 食後トレ:炭水化物を中心とした食事を1〜2時間前に摂取して、同じく週2回の筋トレを12週間実施
すべての参加者には、パーソナライズされた食事ガイドラインが提供され、カロリーや栄養バランスを一定に保つ工夫がされております(「1日あたり体重1kgにつき2.0gのたんぱく質を摂ってね!」みたいな)。非常に明確な比較デザインだし、栄養指導までついてるあたりも「がんばってますなぁ!」って印象でよろしいですね。
その上で、みんなの体組成とか筋力をチェックしたら、結果はこんな感じになりました。
- 筋肉はどっちも育つ。むしろ空腹のほうがわずかに増える?
- 気になる筋肉量(除脂肪体重)の変化は、
空腹トレ:1.15kg 増加(有意差あり)
食後トレ:0.31kg 増加(有意差なし)
だったそうな。つまり、「空腹のほうが筋肉増えてる!」って結果なんだけど、よく見ると空腹トレグループのほうが全体的に体重も増加傾向にあった感じなので、単純に「空腹=筋肥大に有利!」とは言い切れないとこがありますね。また、筋肉の厚み(大腿四頭筋)の変化に関しても、両グループとも約1.2cm増加し、有意な差はなしだったそうで、基本的には筋肉の増え方は変わらんのかな、と。
- 筋力も同等にアップ。ベンチは空腹のほうが伸びた?
- 次に筋力ですが、ベンチプレスについては空腹トレが優勢(+10.5kg vs. +4.9kg)で、脚の筋力はほぼ同じ結果だったらしい(+28.5kg vs. +29.3kg)。個人的には、ベンチもそこまで騒ぐほどの差でもないかなーって印象ですが。
- ワークロードはほぼ同等、つまり“空腹でもトレはちゃんとできる”
- 両グループの総トレーニング負荷(ベンチ&膝)を見てみると、空腹=8,255kg(平均)で、食後=7,562kg(平均)って感じなので大きな違いはないっすね。要するに、空腹であっても十分な負荷を扱えるぞーってことなんでしょう。
ということで、全体的に見てみますと、「栄養状態が整っていれば、空腹トレでも筋肥大・筋力アップは普通に起きる!」と思わせる結果でして、「朝食抜き=筋肉が減る」といった直感的なイメージは、そこまで心配しなくて良さそうであります。
つまり、この研究をベースに、実践的な知見を引き出してみるならば、
- 空腹トレをオススメできるケース
- 早朝しか時間が取れない人(食事の準備が面倒)
- 食後すぐに動くと胃が重くなる人
- 1日の栄養摂取がしっかり管理できている人
- 軽めのトレーニングやコンディショニングが目的の人
- 空腹トレを避けたほうがいいケース
- 過去に空腹時にめまいや吐き気を感じたことがある
- パフォーマンス重視で1RMや高重量トレーニングを行いたい
- 栄養状態が不安定 or 食事の管理が苦手な人
って感じになるでしょう。過去のデータと合わせてみても、どうやら「空腹かどうか」よりも「1日の栄養とトレーニングの質」のほうが大事っぽいんで、食事と運動のタイミングはそこまで気にしなくて良さそうだなーって結論に落ち着きました。
実際のところ、私も午前中に走らねばならない時は、コーヒーだけを飲んでトレッドミルに向かったりしますけど、それで問題を感じたことはないっすね。さすがに高負荷の筋トレとかはレップ数が下がる時もあるものの、まあここらへんは「そこまで気にしてもなぁ」って感じであります。
もちろん、ハードなトレーニングが続いているような時は、食事をちゃんと摂ってパフォーマンスを回復させるべきでしょうが、それ以外の「健康的な肉体でいたい!」ぐらいの目的であれば、ここらへんは無視しちゃってもOKじゃないでしょうか。その上で、自分なりのトレーニングスタイルを選んで、運動を楽しんでいただけたら幸いであります。