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「加工食品を食べるだけ」でも私たちは健康でいられるのか問題を調べた研究の話

 
 

このブログでは、よく「超加工食品」をやり玉に挙げております。これは、原材料がわからないレベルで加工された食品のことで、精製された糖・油・塩が大量に使ってたり、人工甘味料・着色料・香料・保存料などの添加物が多かったり、といった特徴を持っております。スナック菓子とかインスタント食品が代表的な例ですね。

 

このブログの例を挙げると、

 

 

みたいになってまして、「肥満・糖尿病・早死にの元凶!」みたいに言われております。怖いですねぇ。

 

でもって、新しい研究(R)も「超加工食品」をテーマにしてまして、ここで何を調べたかと言いますと、

 

  • 栄養バランスを完璧に整えたら、加工食品だけの食事でも健康に違いは出るのか?

 

って話です。「同じカロリー・たんぱく質・ビタミン・食物繊維などの栄養条件をすべて揃えたうえで、“超加工食品だけ”の食事をしたら、果たして体はどう反応するのか?」みたいなポイントをチェックしたわけで、ありそうでなかった問題を調べてくれててよろしいですね。

 

 

 

加工食品vs.非加工食品、8週間の対決

これは55人の肥満または過体重の成人を対象にした研究で、チームは全員を「超加工食グループ」と「最小加工食グループ」に分けて、8週間の食事を完全に管理したんだそうな。さらに、その後で「洗い流し期間(4週間)」を挟んで、もう一方の食事を8週間やってもらったとのことで、つまり自分自身が比較対象になるクロスオーバーデザインっすね。

 

この時、超加工食と非加工食のどちらもイギリスの食事ガイドラインに準拠してまして、

 

  • カロリー

  • 三大栄養素の比率

  • 食物繊維

  • ナトリウム

  • 飽和脂肪酸

  • 果物・野菜の摂取量

 

などは一緒にそろえております。つまり、原材料がわからないような食品を口にしていても、三大栄養素やビタミンなどをちゃんと摂取していたら、健康でいられるんじゃないかって仮説を調べたわけですね。言い換えれば、「栄養の質ではなく“加工度”そのものが健康にどう影響するか」を純粋に調べたってことっすな。

 

ちなみに、ここで使われた「超加工食品」は、以下のような内容だったそうです。

 

  • 甘味入りヨーグルト

  • シリアル

  • 加工肉(再成形タイプ)

  • レトルト食品

  • スナックバー

  • ダイエットソフトドリンク

 

一方で、最小加工食のラインナップはこんな感じ。

 

  • 野菜・果物(ホールフード)

  • 豆類

  • 鶏肉・魚などの生肉

  • 全粒穀物

 

どちらも、提供された食事以外は水・コーヒー・お茶のみOKにしたそうで、「健康的に設計された加工食を増やしたらどうなるか?」を調べたってことです。

 

 

 

加工食品でも健康は保てる……が?

さて、その上で、みんなの体組成(BIA測定)、血糖、脂質、心拍数、血圧などをチェックしたら、結果はこんな感じになりました。

 

  • 体重減少:非加工グループ−2%、加工グループ−1%

  • 体脂肪率:非加工グループのみ−0.76%の減少

  • 内臓脂肪:非加工グループのみ有意に減少

  • 摂取カロリー:非加工グループは1日−330kcal

  • 血糖・脂質・コレステロール:両グループとも改善(ただし、差は小さい)

 

ということで、非加工食のほうがやや体脂肪が減るものの、加工食でも「栄養基準を守れば」そこまで悪くはないんじゃないか……って結論ですね。やはり問題なのは加工レベルではなく、それにともなって起きる栄養バランスの崩壊が大きいんだってことっすね。

 

ただし、ここで最も注目すべきは「栄養価が同じでも、加工食品では食べすぎが起こる」ってとこでしょう。今回の実験では、加工食グループの平均摂取カロリーが1日あたり約330kcalも増えちゃってますからね。これは1ヶ月続ければ体脂肪約1.3kg分の差になるレベルであります。

 

要するに、同じカロリー、同じたんぱく質量、同じ野菜量でも、食感、味、食べやすさが違うだけで、私たちはつい食べすぎちゃうってことでして、これが最終的に健康ダメージを引き起こす原因になっているんでしょう。

 

 

 

なぜ超加工食品で食べ過ぎが起きるのか?

超加工食品による食べすぎのメカニズムを、もうちょい掘り下げてみましょう。2019年の米国NIH研究(R)では、同じように加工食と非加工食を比較し、加工食を食べたグループは1日の摂取カロリーが約500kcalも多かったと報告しております。その原因としては、

 

  • 加工食品は噛む回数が少ないため、満腹信号が遅れる

  • エネルギー密度が高く、小量で高カロリー

  • 食感が均一で、咀嚼による飽きがこない

  • 味のバリエーションが多すぎる(感覚刺激が強い)

 

といったポイントを指摘してまして、ここらへんが脳の報酬系(ドーパミン系)を過剰に刺激し、「もう一口!」ってモードに切り替わるのだと思うわけです。たとえ“栄養的に正しい加工食”でも、やっぱ食べ過ぎが起きるから良くないとは言えそうですね。

 

ということで、今回の研究をまとめると「超加工食品を完全に排除する必要はないけど、主食は未加工のものを中心にね!」ぐらいの、まことに穏当な結論になりましょう。全体的には非加工食の方が優位だったものの、加工食でもベタな栄養基準を守れば、健康指標はそこまで悪化してないですからね。


まあ、現実世界では「加工食だけで栄養基準を満たす」なんてまず無理なんで、実践の指針としては、

 

  • 8割=非加工(野菜・豆・魚・全粒穀物)

  • 2割=加工(プロテインバー・冷凍食品など)

 

ぐらいが現実的なラインじゃないでしょうか。あんま「加工食品を全廃だ!」みたいに意気込むと失敗するので、ほどほどのラインに押さえておくのが大事っすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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