マジメな人ほどハマりがちなスケジュール管理の罠「プレクラスティネーション」
近ごろ心理学界でよく聞くのが「プレクラスティネーション(precrastination)」って言葉。「先延ばし」を意味する「procrastination」をもじった造語で、ちゃんとした準備もできてないのにガンガンとタスクをこなしていくメンタリティを意味してるらしい。
最初は「自分は先延ばし屋だから関係ないや」とか思ったんですが、ネタ元の論文(1)を読んでみると、わりと誰にでも起きうる状態みたい。
この研究では、被験者に重いバケツを運んでもらう実験が行われまして、
- スタートラインの近くに置いてあるバケツを最後まで運ぶ
- ゴールの近くに置いてあるバケツを最後まで運ぶ
の2パターンを自由に選んでもらったんですね。当然ながら、ゴールに近いほうが労力が少なくてすむわけですが、なぜか被験者たちの多くはスタートラインのバケツをつかんでゴールまで運んだというんですな。あきらかに非合理な行動ですよね。
なんでも、実験に参加した被験者たちは、「バケツを最後まで運ぶ」という最終タスクをこなすために、まず「バケツを持つ」というサブゴールを無意識に設定。「できるだけ速くゴールを達成するには、できるだけ速くバケツを手に取らねば!」と解釈してしまうのが原因らしい。つまり人間は、精神の負担が減らせるなら、意外と簡単に非合理な行動を取っちゃうってことですね。
研究者いわく、
手近のバケツを手に取ることで、彼らは心のなかのToDOリストに、より速くチェックを入れることができる。そのためなら、より身体的な負担が増えても構わなくなるのだ。
とのこと。ToDoリストをこなす快感に酔っちゃって、本来の仕事がまったく手についてないなんてケースは自分も超ありがち。先延ばしと違って罪悪感がないだけにタチが悪いと言いますか。その裏には、とにかく「精神の負担を減らしたい!」というプレクラスティネーションの心理があったわけですね。
この研究では対策にまでは触れてないんですが、とりあえずタスクの優先順位を吟味するのは当然として、「いまやってる作業は、単に心の負担を減らすためでは?」と自分に問いかけてみるのがよさげ。注意せねば。
credit: robstephaustralia via FindCC