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フリークのように考えるための7つの技術 |「0ベース思考」

Thinklikefreak

「0ベース思考」を読了。大傑作「ヤバい経済学」シリーズの3作めで、経済学の手法であらゆる社会問題を解決しまくった前作とは違って、今回は著者なりの思考テクニックを伝授する内容になっております。

 






というわけで、前作ファンとしては非常に期待したわけですが、うーん、正直やや肩すかし。やはりレヴィット教授のような天才の思考法は、簡単にマネできるもんじゃないとの感を強くいたしました。


いちおう本書の思考法のコツをまとめておきますと、

知ったかぶりをしない

著者いわく、英語でもっとも言いづらい言葉は「I don’t know」だそうで、まずは知ったかをしないことの重要性が強調されております。


これは思ったより難しい話で、なにせ知ったかぶりには強力なインセンティブがあるんですな。著者いわく、

壮大で大胆な予想を立てて、それが的中すれば、莫大な見返りが得られる。たとえば今後12カ月以内に株価が3倍に上昇するぞと振れ回り、実際にそうなったら、この先何年も賞賛される。


一方で、予想が外れたとしても、他人の予測をいちいち掘り返すインセンティブを持った人は少ないので、ほとんど罰を受けずにすむんだ、と。とにかく「知ったかぶり」は割りがいいんですね。


ただし、それではいつまでたっても真実には到達しないので、まずは自分の無知を認めて現実を見るのが吉。

解決できない問題を再定義する

どんなに解決に取り組んでも、満足のいかない結果しか出ないときは、問題を定義しなおすのが大事。その代表例としてあげられるのがフードファイター小林尊のエピソードで、彼がそれまでの記録を大幅に塗り替えたのは、まさに問題を正しくとらえなおしたからなんだ、と。


小林さんが、いったんホットドッグをバラバラにし、バンズを水にひたしてから食べる技を編み出したのは有名な話。彼がこの解決策にいたったのは、

  • どれだけ速くホットドッグを食べられるか?


 って問題を、

  •  どれだけラクにホットドッグを飲み込めるか?


 って問いとして再定義したのがポイントだったからだそうな。

子どものように考える

著者いわく、知的な大人のもっともダメな点は、「世界が自分の新年のとおりに動く」と期待しがちなところなんだそうな。その結果、実は大人よりも子どものほうが手品にダマされにくいって逆転現象が起きるらしい。


すごい手品を見せられると、つい大人は「催眠術だ!」とか「CGだ!」とか大げさなトリックを考えちゃうんだけど、子どもはつねにフラットな状態なんで、「カードを2枚持ってる」といったシンプルな答えにたどりつけるわけですね。

「関係の枠組み」を変えてみる

自分が望むことを他人にしてもらいたいときは、相手の敵対心を協調的な枠組みに変えてみる。ここで出てくるのはスマイルトレイン(慈善団体)の例で、代表のブライアン・マラニーは、見知らぬ人からお金をもらうにあたって、「1回だけ寄付をしていただければ今後はメールを出しません」って一文をつけくわえたんだそうな。


その結果、全体の寄付額は46%もアップ。これは、「いきなりメールを送ってくる無礼なやつ」という「敵対的な枠組み」から、「こちらにも裁量権を与えてくれる話せるやつ」という「協調的な枠組み」に切り替えたのが原因とのこと。

ウソつきをあぶりだす

ウソつきや怠け者は、他とは違うインセンティブに反応するので、そこを使って罠を仕掛けられる。その例としては、

  • ミュージシャンのヴァン・ヘイレンは、56ページものツアー契約書を作成。一部に「m&m’sチョコを用意しておくこと(茶色はダメ)」との条項を忍ばせておき、守らないプロモーターをクビにした。これは、契約書をマジメに読み込んでいない証拠だから。

 

  • オンライン靴屋のザッポスは、研究期間のあとで辞職を決めれば、さらに1カ月分の給料を追加でもらえる仕組みを作った。このことにより、金のために動く怠け者を、あらかじめ取り除くことができる。



ガンコな人を説得するには、相手の良さと自分の弱みを認める

ガンコな相手とやり取りしなければいけないとき、いちばんいいのは「ただニコッと笑って話題を変えることだ」とのことですが、どうしても説得しなきゃなんないときは、ひとまず自分のエゴは置いといて、こちら側の弱みと向こうの正当性を認めるのが大事だ、と。


たとえば、自分が無人自動車に賛成の立場だった場合、まずは「機械でも事故は起こりえますし、運転手の職を奪う可能性もあります」と認めたうえで、「しかし、それでも飲酒や疲れきった人の運転よりはマシです」といった説得の組み立て方をしてくわけですね。

「やめる」ことの良さを認める

著者いわく、物事をやりぬくのは大事だけれども、ときには何かをやめちゃうことで大幅に時間と努力を節約できる場面もあるんだ、と。


このときに大事なのは、サンクコスト(すでに使ってしまった費用)よりも、機会費用に目を向けること。この金と時間を、他のことに使ってみたらどうだろう?って考え方ですね。もし機会費用がサンクコストを上回るようなら、いまやってることは止めたほうがいいのかもです。

まとめ

そんなわけで、「0ベース思考」がオススメする7つの方法をざっくり見てみましたが、どれも言うは易く行うは難しって感じじゃないでしょうか。そりゃあ問題の裏に隠れたインセンティブがわかれば対策も立てやすくはなりましょうが、そこを見抜けるのは、やはりレヴィットが天才だからじゃないの?って気が。


もっとも、これまでのシリーズと同じく、紹介されるエピソードはどれも面白いので、お代の分の楽しさは得られるかと思います。特に「インセンティブ」の考え方になじみがない方だったら、ためになるかもしれませんです。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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