HIITの効果を爆上げするかもしれない「スリープロウ」戦略の実践法
スリープロウという運動アプローチ
当ブログではいろんなタイプのトレーニング法を紹介してますが、今回は「スリープロウ」ってアプローチをご紹介しましょう。
ネタ元はINSEP(フランスの政府機関)が行なった実験(1)で、この「スリープロウ」を取り入れたところ、
- タイムトライアルが3.32%改善!
- 運動中のパワーも9.17%改善!
- 普通のトレーニングに比べて体脂肪が2倍減った!
っていうナイスな変化がたった7日で起きたというんですな。ちょっといい感じじゃないでしょうか。
サイクリストでスリープロウを試した
では、「スリープロウ」がどんなアプローチかと言いますと、
- エクササイズの後に炭水化物を取らない!
って方法です。エクササイズの後は栄養補給のために糖質をとるのが普通ですが、逆に炭水化物を断つことでおもしろい変化が起きるというんですな。
その仕組みは後述するとして、まずはこの実験の参加者がどんな人たちだったかというと、
- 21人の男性サイクリストで年齢は18〜40歳
- 少なくとも週に12時間のトレーニングを3年以上は続けている
- 最大酸素摂取量の中央値は64.2 ± 6.0 mL/min/kg
- 最大有酸素パワーの中央値は342 ± 38.3 W
って感じです。なかなかのアスリートを集めた感じですねー。
午後5時のトレーニング以降は糖質をカット
でもって実験では全体をふたつのグループにわけてます。
- スリープロウ:午後5時にHIITをやったら、そのあとは糖質をとらない
- コントロール:午後5時にHIITをやって、好きなタイミングで糖質をとる
ってことで、糖質のタイミングだけを変えたわけですね。その他の条件は以下のとおりです。
- 1日の糖質は両グループとも体重1kgあたり6g
- 初日の午後5時にHIIT(8セット×5分×休憩1分)をやったら、翌日の朝10時に軽いジョギングをする。このスケジュールを毎日くり返す。
つまり、「スリープロウ」を採用したグループは、体内のエネルギー源がすっからかんになったまま、朝から軽いジョギングをさせられたわけですね。ちょっと辛そうですなぁ。
実験期間は1週間で、最後に5〜20kmのサイクリングでタイムトライアルをしたら、結果は上に書いたとおり。サイクリングのスピードが上がり、パワーも向上し、ついでに体脂肪もコントロール群の倍ほど減ったんだそうな。
まぁ体脂肪については「2倍」といっても小さな差なので、そこまで大きく取り上げるポイントでもないかもしれません(−395 ± 491 g vs −151 ± 363 gぐらい)。が、たった1週間の実験だと考えれば、これだけ差が出たのはなかなか素晴らしいなーと思うわけです。
スリープロウで細胞に気合が入る
では、なんでこのアプローチに効果があったのかと言いますと、当ブログではおなじみの「ミトコンドリア」が関わっております。
ミトコンドリアは、ご存じのとおり細胞内のエネルギー生産工場でして、メンタルが正常に働くためにも大事な役割を持っております。ここで、一時的に糖質が切れた状態になると、
- ミトコンドリアがエネルギーの材料不足にあわてる
- ミトコンドリア、「もっと頑張らないとヤバい!」って気になる
- ミトコンドリアの性能が上がる!
ってメカニズムが働き出すんですな。よく「つらい運動をするほどミトコンドリアが活性化する!」って話を書いてますけど、あえて細胞にストレスをあたえてる点では同じようなもんですね。
そう考えると、もともとミトコンドリアの性能アップに定評がある「ノルウェイ式HIIT」と「スリープロウ」を組み合わせると、さらに効果が上がるのかもしれませんなぁ。もちろんストレス過多になる可能性もあるんで、そこらへんは様子を見つつ負荷を増やさねばならないでしょうが。
ちなみに、「スリープロウ」にも欠点はありまして、このデータだと、
- 糖質カットのままトレーニングをすると主観的な運動の辛さが10〜13%上がる
って傾向も確認されてたりします。まぁ当たり前といえば当たり前ですが、実戦の際はストレス過多にならないようご注意ください。