今週の小ネタ:手の動きで学習効率がアップするぞ!手の動きで感情がバレるぞ!うつ伏せで寝ると夢がカオスになるぞ!
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
手の動きで学習効率がアップするぞ!
「効率良く勉強したいなら手を動かせ!」というデータ(R)が出ておりました。ジェスチャーが記憶を高める!ってデータは前からあったんですが、これをあらためて確かめた感じですな。
これはカリフォルニア大とジョージア大の研究で、まずは123人の学生を対象に「蒸気船の授業」を見せたんだそうな。その際に、動画の先生は以下のような2種類のジェスチャーを使い分けております。
- 構造ジェスチャー → 左手で「東部の蒸気船」、右手で「西部の蒸気船」と空間を分けて示す。
- 表層ジェスチャー → 船体の深さを表すとき、両手を広げたり狭めたりして「浅い/深い」を示す。
でもって、授業後に「要約テスト:学んだ内容を文章でまとめる」と「マッチングテスト:事実を正しい蒸気船に対応づける」「推論テスト:例「浅い川を走る蒸気船は、エンジンの圧力はどうなる?」のように、知識を応用する問題」を行ったところ、こんな結果が出たんだそうな。
- 構造ジェスチャーありの動画 → 推論テストの成績が大幅にアップした
- 表層ジェスチャーありの動画 → ほぼ効果がなかった
- どちらのジェスチャーも、単純な「暗記」には効かなかった
ってことでして、「左がこれ、右があれ」みたいに構造ジェスチャーによって情報を空間に割り当ててあげると、頭の中で情報を整理しやすくなり、そのおかげで「知識をつなげる力=推論」が伸びたわけですな。
続いて実験2でも似たような結果が出てまして、こちらでは170人の学生に「免疫システム」の授業を受けてもらってます。こちらは蒸気船よりずっと複雑なんで、専門用語や比較の量も倍以上だったそうな。その際に、構造ジェスチャー(左に「自然免疫」、右に「獲得免疫」みたいな)と、表層ジェスチャー(免疫応答の特異性を手の幅で示す)を比べたら、やはり構造ジェスチャーは推論力を伸ばすが、表層ジェスチャーは無意味だったらしい。んー、これは使えそうな研究ですね。
こういう結果が出たのは、人間の脳が情報をただ覚えるだけじゃなく、“空間にマッピング”してつなげたほうが整理しやすい特性を持っているからです。イメージとしては頭の中に「知識の地図」を作る感じで、構造ジェスチャーは、その地図にラベルを貼る役割を果たしているわけですな。
なので、この知見を実生活に活かしたいのであれば、
- 教えるときは空間を使う:子どもや部下に説明するときは、「こっちがA、こっちがB」と左右に振り分けるだけで理解が進むはず。
- 自分で学ぶときもマッピングする:本を読むときにも、頭の中で「右にメリット、左にデメリット」みたいに割り当てるのもあり。これだけで記憶の整理がスムーズになるはず。
みたいになるでしょう。一方で、単なる大きさや形を表すジェスチャー(表層ジェスチャー)は効果が薄めなので、「分類や関係性」を示す動きに限定するのが吉かもしれませんな。
手の動きで感情がバレるぞ!
手の動きから「感情」が見抜けるかも!って研究(R)が出ておりました。
これはロンドン大学バークベック校の研究で、こんな実験をしたものです。
- 参加者は、イギリス在住の健康な成人56名
- 参加者たちに、俳優が「喜び・驚き・恐怖・悲しみ・嫌悪・怒り」を表現した “手の画像”を見せる
- その際に、「片手だけを見る」「両手を見る」「両手だけど位置を不自然にずらした“歪んだバージョン”を見る」という3パターンにわける
- その後、参加者に「この手の動きは、どんな感情を表してると思いますか?」と答えてもらう
その結果がどうだったかと言いますと、以下のようになります。
- 両手(自然な配置) → 正答率 約50%
- 片手のみ → 正答率 42.9%
- 両手(歪んだ配置) → 正答率 45.8%
ということで、両手そろっているほうが、確実に相手の読み取りやすいって結果が出ております。特に「怒り」と「恐怖」に関しては、両手を見たときの精度が有意に高かったそうで、これは直感的にもわかりやすいですな。
では、なぜ手がそんなに雄弁なのか?と申しますと、そもそも手ってのは、めちゃくちゃ感情のアウトプットが出やすいパーツだからです。怒れば誰でも「握りこぶし」に近づくし、恐怖なら「すくめるように手を引く」ような人が多いですからね。しかも両手のバランスが崩れると不自然さがすぐに伝わっちゃうんで、だから相手も「ん? 怒ってる? 怖がってる?」と正しく読み取れるんですな。
もちろんサンプルが少なめなデータなので判断が難しいですが、商談や会話で相手の本音を探りたいときなどは、顔や声ばかりに目をやるのではなく、両手の動きや位置関係にも注目してみるといいでしょう。また、逆に不必要に手を握りしめたり、左右のバランスが崩れていたりすると、「怒ってる?不安なの?」と誤解されるリスクが上がるんで、そこも注意しときたいところです。
うつ伏せで寝ると夢がカオスになるぞ!
旧聞ではありますが、「うつ伏せで寝ると夢がカオスになりやすい!」という話(R)が出ておりました。寝相によって夢の内容が変わるんじゃないか?って話っすね。
これは香港樹仁大学の研究で、被験者670名(平均19歳)を対象に「夢の内容」「夢の強さ」「睡眠姿勢(仰向け、うつ伏せ、横向き)」の関係を調査したものです。細かい実験デザインは置いておいて、まずはざっくりした結果から申し上げますと、
- うつ伏せ寝は特定の夢の発生と結びついている。
- 具体的には、以下のような夢の出現率が高まった。
- 監禁される
- 工具にまつわる夢(!?)
- 性的な体験
- 息が詰まって呼吸できない夢
- 泳いでいる夢
- 全裸でいる夢
ということで、うつぶせに寝ると、夢がカオスになりやすいみたいっすね。呼吸ができない夢とかはわかりやすいんだけど、性的な夢が増えるってのは面白いですねぇ。
じゃあ、なんでそんなことが起きるの?ってことですけど、研究チームの解釈はこんな感じです。
- 体の圧迫感(特に胸や顔、そして性器まわり)が夢に変換される
- 呼吸しづらさが「息苦しい夢」や「水中にいる夢」に反映される
- 工具の夢は“象徴的な置き換え”かもしれない
要するに、うつぶせがもたらす身体感覚が、ダイレクトに夢のシナリオに組み込まれるってことですな。研究チームは「夢は睡眠を守るために、現実の刺激を物語に加工して処理している」とも述べておられます。
ちなみに、この研究では「横向きや仰向けで寝る場合は、特定の夢との関連はほぼ見られなかった」って結論も出てまして、こちらも面白いところ。ただし過去の研究では、右向きに寝るとポジティブな夢が増えて、左向きだと悪夢が増えるなんてデータもあるんで、このへんはまだ掘り下げ余地ありですね。
まあ被験者の自己申告に頼っている(「自分はうつ伏せ派です」って覚えてるだけ)あたり、突っ込みどころがある研究ではありますんで、話半分に受け止めていただければって感じですが、カオスな夢を見たい人は試してみたら良いかもですな。