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完全無欠っぽい「良い習慣」にもデメリットはある


はてなブックマークで以下の記事を見かけました。

参考:今年から本気出す!と誓うあなたに贈る 10の小さな良い習慣 | No Second Life


「早起き」や「読書」など、いかにも否定できなさそうな項目ばかりが並んでおりますが、ここでは「絶対に正しそうな習慣にもデメリットはある」というひねくれた話を書きます(笑)。





1・早寝早起き

良い習慣の代表格といえば「早寝早起き」。しかし、ウエストミンスター大学の調査では、午前7時より前に起きると通常よりコルチゾール(ストレスホルモン)のレベルが増加して、その日はずっとコルチゾールのレベルが高止まりしちゃう。慢性的にコルチゾールのレベルが高いと、全身に炎症が起きて万病のもとになりやすいのは以前も書いたとおりです。


また、同じくウエストミンスター大学の研究によれば、確かに早起きは集中力を高めるものの、一日の終わりにはエネルギーの消耗が通常より激しく、怒りやイライラの感情が増加しやすい傾向がある模様。生産性は上がるかもしれないが、幸福度には悪影響を及ぼす可能性があるわけですね。



2・ 朝食をしっかり食べる

確かに朝食の効果はいろいろと確かめられていて、朝食を抜くと心臓病や肥満につながっちゃう可能性が大。ただし最近の研究だと、その効果はまだ決定的ではなく、結局は「朝食は人によっては良いし、人によってはそうでもない」ぐらいの超当たり前なことしか言えないみたい。


あと、フィットネスやダイエットの世界では「体重の減少が止まったときは朝食を抜け!」ってテクニックもあるし、アンチエイジング業界では「不定期に朝食を抜くと長寿につながる」って報告もあるので、いちがいに「朝食を食え!」とは言いづらいところ。

参考:痩せたいなら朝食を抜け!水風呂に入れ!コーヒーを飲め!



3・ 毎週月曜日にデスク周りをピカピカに掃除する

デスクの掃除もよく言われることですが、2012年の研究だと「散らかったデスクは創造性をアップする」って結論が出ております。実際、アインシュタインの机がめっさ汚かったのは有名な話。


ただし、同じ研究では「散らかったデスクは性格をだらしくなくする」って結論も出ているので、どっちを選ぶかはあなた次第といったところです(笑)。

参考:散らかったデスクは思考をクリアにするが、性格をだらしなくする



4・ 5分でいいので毎日運動する

運動の素晴らしさについては当ブログでも何度か書いていますが、「毎日」のエクササイズは正直オススメできかねます。エクササイズは体にストレスを与える行為なので、毎日のように体を動かすと炎症が慢性的になって健康によくないんですな。


個人的には、最低でも週に2回の休息は必須。それも、ランニングのような長時間の運動ではなく、 ウォームアップをふくめても30分以内で終わるものをオススメします。

参考:ダイエットのためにランニングをしてはいけない6つの理由



5・ 20分でいいので毎日読書する

読書が認知機能の向上や知識の獲得に良いことは、数々の論文で実証済み。ただし、一方では勉強と人間の幸福度には関係がないって研究もあるので、「頭は良くなっても幸せになれないんなら別に本なんか読まなくてもいいや!」って価値観も当然アリだと思います。実際、私も文章を読むのが好きだから読書をしているだけで、ことさら「読書は素晴らしい!」と謳い上げる気にはなりません。


6・前の日の自分を振り返る

これに関しては「幸福のコツは忘却にあり」で書いたとおり。要するに、記憶を失くすということは、生きるための技術を脳が無意識化してくれたってことなのに、なんでわざわざ思い出して脳に負荷をかけなきゃいけないの?ってことです。


というとドライな感じがするかもしれませんが、そんなに重要な記憶なんて実際どれだけあるのかなー、と思うんだよなぁ。

参考:幸福のコツは忘却にあり:「脳は記憶を消したがる」



7・「すみません」ではなく「ありがとう」と言う

近ごろのポジティブ心理学では「感謝」の効果がとても重要視されていて、健康面でもメンタル面でも感謝する人ほどレベルが高いという結論が出ております。


ただし、ここで重要なのは心から感謝することなので、ただ「すみません」を「ありがとう」に言い換えても無意味。エモンズの「感謝の心理学」でも、「表面的に『ありがとう』を言うのはありがちな罠だ」と断じられてますし。


ちなみに、正しい感謝の方法としては「その日にあった良いことを日記に書く」のがポジティブ心理学では定番。上に挙げた「前の日の自分を振り返る」の内容と矛盾するようですが、これは日記に書くことで日々の感謝に意識を向けやすくするのが目的で、あくまで記憶に残すための作業ではないので念のため。



8・午後はカフェインを控える

夜のカフェインが睡眠の質を下げるのは事実。一方でカフェインには、


などなど凄まじく大量のメリットもあるので、そこまで控えなくてもいいんじゃないかと。


9・テレビと距離を置く

テレビっ子の私としては、一番イヤなアドバイスかも(笑)。でも、テレビは人間の認知機能を向上させ、自然のドキュメンタリー番組には健康効果もあり、日々のストレスをやわらげる効果まであって、別に悪いものでもないんですよ。まぁ、元のブログ記事では「テレビを見なくなると時間が増える」と言ってるだけなんで、単に趣味の問題ちゃうんかって感じですが。



10・夜は部屋を暗くして静かに過ごす

夜に部屋を暗くすると睡眠の質が上がるので、これは私も実践している習慣。しかし、夜ふかし好きのあなたもご安心ください。2013年の研究では、夜おそくまで起きて仕事をしている人のほうが知性が高くて収入も多いとの結論が出ております! 夜ふかしタイプの有名人としては、オバマ、チャーチル、プルースト、ジョイスなど。これは勇気が出ますねぇ(笑)。



まとめ

そんなわけで、非の打ち所がなさそうな習慣をあえて腐してみました(笑)。当然ながら、すべてのものには長所と短所があるんで、あくまで自分にあったものを探してみればいいと思います。別に、早寝早起きができなくても罪悪感は持たなくていいよってことで。



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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。