「理想の自分を思い描けば成功する!」はウソである
ビジネス書の世界では「理想の自分を思い描けば成功する!」なんてことがよく言われますな。「億万長者の暮らしをしている姿をイメージしろ!」みたいなやつ。私の知ってる限りでは、神田昌典氏の「非常識な成功法則」とか望月俊孝氏の「宝地図シリーズ」とかマイケル・J・ロオジエ「引き寄せの法則」とかが代表例ですかね。
が、ここでは「理想の自分なんか思い描いても逆効果ですよ」という冷や水ぶっかけ系の話を書きます(笑)。
ご紹介するのはニューヨーク大学の2011年論文。ポジティブな空想が人間のやる気を失わせることを実証した研究で、4種類の実験が行われております。それぞれ見てみましょう。
参考:Positive fantasies about idealized futures sap energy
実験1:理想の外見をイメージしてみたら…
最初の実験は、女性の被験者に「ハイヒールをかっこ良く履きこなした自分」をイメージしてもらうというもの。その結果、被験者は気分は良くなったものの、自分の見た目の良い点と悪い点をリアルに想像した女性にくらべてガクンとやる気が下がっちゃった。
実験2:有能な自分をイメージしてみたら…
2番めの実験は、被験者に「優秀なエッセイを書いて賞金をゲットした自分」をイメージしてもらうというもの。その結果、被験者は最初の実験と同じようにやる気が下がったうえに、空想をしなかった被験者にくらべてエッセイの完成度も低かった。
実験3:理想の未来をイメージしてみたら…
3番めの実験は、学生の被験者に「理想の未来」を自由にイメージしてもらうというもの。例えば、ある学生に「テストでいい成績を取って、週末は女の子とデートして…」みたいな空想を紙に書いたうえで、あとで気分と達成感を自己申告してもらったわけですね。その結果はやっぱり同じで、理想的な自分の姿をイメージした学生ほどやる気がなくなって、日々のタスクの達成度も下がっちゃった。
実験4:手に入れたいものほど手に入らなくなる
4番めの実験は、やる気の無くなりかたの差について調べたもの。「すごく腹が減った学生」と「テストで良い点を取りたい学生」の2パターンを比べたところ、腹を空かした学生は「テストで良い点を取った空想」よりも「食事をしてる空想」でやる気が減少。逆にテストで良い点を取りたかった学生は、「食事をしてる空想」よりも「テストで良い点を取った空想」でやる気が減っちゃった。
どうやら人間の脳は、自分が心から欲しているものをイメージすればするほど、やる気が出なくなるようにできてるみたい。
まとめ
理想のイメージを描くとやる気が失せちゃう原因は謎であります。脳がゴールを達成した気になって安心しちゃうのかもしれないし、手の届かない目標に対してエネルギーを無駄使いしないように脳が進化してきたのかもしれないし。
いずれにせよ、今後は「理想の自分を思い描け!」ってアドバイスをしてるビジネス書を見かけたら、思いっきり眉にツバをつけていきたいところです(笑)。