幸福のコツは忘却にあり:「脳は記憶を消したがる」
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前野隆司「脳は記憶を消したがる」を読了。脳の働きをベースに「記憶が消えるほど人間は幸せになる!」と主張する面白い一冊でした。
「忘却=幸福」ってのは単に「イヤなことは忘れちゃおう!」って話じゃなくて、記憶のメカニズムにもとづいた話になっております。その内容をざっくりまとめますと、
- 記憶は生きる技術を学ぶためにある
- 生きる技術は無意識に使えるようになって初めて意味を持つ
- 人の「悩み」とは、技術が無意識化されていない状態である
- つまり、無意識化=記憶を忘れれば「悩み」は消える
- 幸福になる!
って感じ。これを、例えばテニスの練習に置き換えてみると、
- 練習をくり返してサーブのタイミングを覚える(技術の記憶)
- そのうち自然とサーブが打てるようになる(技術の無意識化)
- 何も考えずにサーブが打てて幸せ!(記憶の忘却による幸福)
といったところ。どの分野でも技術の習得と定着は起きることで、確かに「忘却=幸福」と言ってよさそう。
ただし本書は実用書じゃないので、「じゃあどうやってイヤな記憶を忘れればいいの?」って点に関しての説明は薄め。唯一、「荘子は奥さんが死んでも悲しまなかった」故事を引き合いに出して、哲学的な思想を築けば大丈夫!というんだけど、現実的には難易度の高いテクニックじゃないすかねぇ。
個人的には、論理療法とかで使われる「イヤなことがあったら、その出来事と感情を詳細にノートに記録して点数をつけろ!」って方法のほうがオススメ。これも、ある意味で本書がいう「生きる技術の無意識化」に近いテクニックかなーと思います。