悪い癖を確実にちょっとだけ改善する「プレコンフォーミティ」の考え方
「悪い癖」を治すのは難しいもんでございます。わかっててもお菓子を食べたり、ゴミを捨てちゃったり、マナーが悪い行動を取ってしまったり、とか。
これをすぐにフィックスする方法はないんですが、近ごろ「悪い癖を治すにはプレコンフォーミティだ!」というおもしろい論文(1)が出ておりました。
これはスタンフォードの調査で、研究者の問題意識はこんな感じ。
1970年代から続く研究によれば、たんに人々に「こういう行動を取ったほうがいいですよ」と教えるだけでは、彼らの行動を劇的に変えることはできない。それどころか、モチベーションや罪悪感を引き出す効果もない。
「お菓子は体に悪いよ」とか「野菜を食べよう」とかいくら言われても、なんの効果もないんだ、と。これは誰でも実感できるとこですよね。
じゃあどうすればいいんだってことで、研究チームはこんな実験を行なっております。
- 実験の場所はスタンフォード近くのハンバーガー屋さん
- メニューや店内の隅っこに、小さく「肉抜きの野菜バーガーが人気です」や「野菜メインの料理をお選ぶお客様が増えています」と書かれたメッセージをつけておく
- お客さんの行動がどう変わるかをチェックする
要するに「みんなはこっちを選んでますよ!」と軽く伝えたら、人間の行動は変わるのかをチェックしたわけです。すげーシンプルな介入ですな。
が、これだけでもハッキリした違いが出まして、
- 健康的な食事を選ぶ人の数が1.7%ほど増えた!
って結果だったんだそうな。というとたいした数字じゃなさそうですが、具体的には17日で約180人の行動が変わったことになりまして、シンプルな方法にしては結構いい効果じゃないでしょうか。
研究者いわく、
私たちは、他人が変わっていく状況を目撃すると、「将来はこれが普通のことになるのかもしれない」と思い描くようになる。そして、この傾向は未来も続いていくのではないか?と予想し始める。
その結果、私たちは自分が予想した世界観に沿った行動を取るようになるのだ。
とのこと。要するに、ヒトは他人の行動をベースに「世間の常識」を判断しており、善かれ悪しかれそこに影響を受けるんだって話っすね。
で、この現象を研究者は「プレコンフォーミティ」と呼んでおります。コンフォーミティは「社会の常識に順応する」みたいな意味なんで、直訳すれば「事前順応」ですな。
というと「プレコンフォーミティを良い方向に使うには?」ってのが気になるとこですけど、これは「自分がやりたい行動をしている集団に身を置く」ってのがベストでしょう。「集中力は伝染する!」って話もあるとおり、自分を簡単にコントロールしたければ、自己制御がうまい人のなかに身を置けばいいのではないかと。