1,150人のメタ分析で分かった、長期的な幸福を増すための「正しい親切のしかた」と「感謝の受け取り方」
「親切はいいよー。幸福度が上がるよー」って話は何度も書いているとおり。ヒトは社会的な生き物なんで、親切から喜びを得られるようにできてるんですな。
もっとも、ひとくちに親切といっても、
- 無私の親切(シンプルに他人にいいことをして良い気分になりたいから行う親切)
- 戦略的な親切(なにかお礼を求めて行う親切)
って2種類に大きく分類されますな。どっちのモチベーションで動くかによって、なんとなく違いがありそうな気もするわけです。というか、そもそそも「無私の親切なんて存在するの?人間はつねに何か見返りを求めてるんじゃないの?」って考え方もあるわけですが。
といったところで新たな論文(1)は、「2パターンの親切によって脳がどう反応してるかを調べたよ!」ってとこを調べてておもしろかったです。
これはサセックス大学の研究で、過去の「親切」にかんするデータから質が高い36件をまとめたもの。1,150人の脳をfMRIで調べつつ、「親切」でどのようにヒトが反応するかを調べたメタ分析になっております。
その結論をざっくり抜き出しますと、
今回わかったのは、戦略的な親切にくらべて、利他的な親切はより多くの脳が活性化するという事実だ。「純粋に親切をして良い気分になりたい」といったモチベーションから生まれる行動には、より特別な何かがあるのだろう。
とのこと。もちろん、たくさん活性化したからいいって話でもないですが、見返りのない親切と戦略的な親切が別物なのは間違いなさげ。
では、具体的にどのように違うのかと言いますと、
脳のなかでは、親切にかんする2種類のモチベーションがオーバーラップしている。そのため、チャリティなどでは、ボランティアに簡単な報酬をあげるような行為は注意すべきだ。そのせいで、せっかくの利他心が損なわれてしまいかねない。
毎月の寄付に対して小さな謝礼を返すと、受け手の認知に変化が起き、モチベーションの源泉が利他的から商行為に変わる。その結果、「商売としてはメリットが少ない」といった気分が生まれ、「親切の喜び」は「取引の失敗」に姿を変える。
だそうな。別に見返りを求めた親切が悪いとは言わないものの、報酬によって行動のモチベーションがけずられちゃうから、長期的に見たら幸福度のアップには悪影響かもしれないわけですな。
この問題は、家族、友人、同僚、知人とのやりとりでも同じだ。
たとえば、あなたが友人の引越しを手伝ったあとで、謝礼として1,000円をわたされたとしよう。すると、あなたは自分の労働が低く見られたような気分になり、おそらく二度と引越しの手伝いをすることはないだろう。
ところが、ここで相手が感謝の言葉だけを投げてくれば、あなたの中には満足した気持ちが生まれる。
とのこと。つまり、これを現実に応用するならば、
- 親切をされる側=下手に謝礼をあげずに、いかに自分が感謝してるかを伝えた方が良い
- 親切をする側=向こうが謝礼を出してきたら、ぐっとこらえたほうが長期的な幸福感は高まりやすい
みたいな感じになりますかねー。趣味でやってたことに金銭が発生するとモチベーションが下がるのはよく知られてますが、これは親切でも同じってわけですなぁ。