今週半ばの小ネタ:他人の信頼性は見抜けるか、プロの集中力はどう違うか、意味不明なルーチンで不安とストレスが減る
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
他人の信頼性はどこまで勘で見抜けるか?
まずはブリティッシュコロンビア大学の実験(R)で、「顔だけで信頼できる人は見抜けるか?」って問題をあつかってます。
どんな実験だったかと言いますと、
- 20 人の男女に34 枚の顔写真を100ミリ秒だけ見てもらう
- 100ミリ秒の印象だけで、その人物が信頼できそうかどうかを言い当ててもらう
みたいな感じです。顔写真の人物はいろいろで、過去に詐欺を犯した人がいたり、逆にノーベル平和賞をとったりボランティア活動で有名な人がいたりとか、複数のパーソナリティを混ぜ込んだらしい。
それで結果はこんな風になりました。
- ノーベル賞受賞者や博愛主義者として有名な人物については、みんな62.7%の確率で信頼性を当てることができた。
- 犯罪者の信頼性については、正解率は 48.8%だった。
ってことで、もともと信頼度が高い人は直感でも当てやすいんだけど、犯罪者の信頼性については偶然以下の確率でしか当てられないみたい。まぁ詐欺師を見抜くのって難しいですもんね……。
これは20人ぐらいのデータなんでもうちょい追試は必要でしょうけど、「人間は他人の信頼感を見抜くのが得意!」みたいな研究は他にもありますんで、そこそこ精度の高い話なのかもですねー。
プロの集中力はアマチュアとどう違うのか?
次はアリゾナ州立大学の実験(R)で、「プロとビギナーの集中力はどう違うの?」って問題を調べてくれております。
具体的には、プロとアマチュアの野球選手を集めて、全員を2つのグループに分けたらしい。
- 120Hz の騒音を聴きながらバッティングをする
- 自分のフォームが正しいかどうかを考えながらバッティングをする
その後、みんなのパフォーマンスがどう変わったかを調べたところ、こんな違いが確認されました。
- 初心者は騒音が流れたほうがパフォーマンスは落ちるが、「フォームが正しいかどうかを考える」作業には影響を受けなかった
- プロは騒音が流れても目立った影響はなかったが、フォームが正しいかどうかを考えた場合は大きくパフォーマンスが低下した
というわけで、プロフェッショナルな人ほど、自分の体の動きに注意を向けるとパフォーマンスが低下しちゃうらしい。
これは非常によくわかる話で、プロってのは何度も練習を行ったせいで動きが自動化してるはずですからね。「自分のフォームが正しいか?」とか考えちゃうと、この状態が断ち切られちゃうんだと思われます。まぁ「考えるな!感じろ!」を実践できてこそのプロってことなんでしょうなぁ。
意味不明なルーチンで不安とストレスが減る
以前に「無意味なルーチンでセルフコントロール能力が上がる!」って話を書いたんですが、ハーバード大学からも「ルーチンは大事だよ!」ってデータ(R)が出ておりました。
これは85人の学生を対象にした実験で、みんなに「人前で歌を歌ってくださいねー」と指示を出したんだそうな。その際、参加者の半分には、研究チームが開発した以下のルーチンを実践してもらったらしい。
- いまの感情を絵として描いてみる
- その絵に塩をふりかける
- 5秒数える
- 紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てる
まったく意味不明のルーチンですけど、続いてみんなが歌を終えたあとで不安や血圧などを調べたら、こんな結果が出たそうな。
- ルーチンを実践したグループは、何もしなかったグループにくらべて不安レベルが低く、血圧の上昇も少なかった!
ってことで、これだけわけがわからない行動でも、ストレスの解消効果が認められたんだそうな。そのメカニズムは「無意味なルーチンでセルフコントロール能力が上がる」に書いたのと同じかと思われますが、なんともおもしろいもんですねぇ。