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今週の小ネタ:心が沈んだときに効く音楽、人生に意味を感じるための方法、ビッグファイブが当てにならない国もある?

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

心が沈んだときはどんな音楽や映画が効くのか?

まずはKAISTビジネススクールの研究(R)で、「心が沈んだときに効く音楽や映画ってどんなの?」みたいな問題をあつかってます。

 

 

いちおう過去にも似たような研究は行われていて、その大半は「心が沈んだときはコメディ映画とか楽しい音楽がいいよ!」みたいな結論だったりするんですよ。そりゃそうだよなーみたいな話ですが。

 

 

が、この研究チームは「心の沈み方によって効くコンテンツは違うのでは?」と考えまして、いくつかの実験を行ってます。だいたいどんな内容かと言いますと、

 

  1. 過去に自分が味わった「気持ちがヘコんだ体験」や「悲しみをおぼえた体験」などを思い出してもらう
  2. いろんなパターンの曲や映像を見せて、ストレスがどれだけ低減したかを調べる

 

で、どんな傾向が見られたかと言いますと、

 

  • 対人関係の問題で気持ちがヘコんだときは、暗い音楽や映画のほうがいい!
  • 対人関係でない問題で気持ちがヘコんだときは、明るい音楽や映画のほうがいい!

 

って感じだったらしい。対人関係の問題ってのは「好きな人にフラれた」とか「信頼してた人に裏切られた」とか、そういうやつです。友人や恋人との問題でヘコんだ場合は、「ダンサーインザダーク」みたいな映画を見たほうがいいわけっすな。うーん、なんか分かる気がする。

 

 

 

人生に意味を感じるための方法とは?

 

続いてはスタンフォード大学などの研究(R)で、「人生に意味を感じるための方法とは?」って問題をあつかってます。「人生には意味がある!」って感覚の重要性は「最高の体調」でも強調したところで、近年の心理学でもよく研究テーマとしてあつかわれてるんですよね。

 

 

これがどんな研究だったかと言いますと、

 

  1. 近ごろ辛い体験をした被験者だけを集める(職を失ったとか妻と別れたとか)
  2. みんなに詳しい話を聞き、その後でどんな変化が起きたかを深掘りする

 

みたいなインタビュー研究になってます。その答えをすべてまとめたところ、どんな共通点が浮かび上がったかと言いますと、

 

  • ネガティブな体験は確かに辛いが、同時に「人生の意味」をブーストさせる材料にもなる!

 

だったそうです。ハードな体験が実は人生に意味をもたらす燃料にもなってるんだ、と。前にも「年を取ってもシャープな脳を保ち続けるためには人生の苦痛が必要」って話がありましたけど、やはりある程度の困難は必要なのかもですなぁ。

 

 

が、もちろんこれは「進んで苦労をしろ!」って話ではなくて、研究者いわく、

 

今回の研究は、必ずしもネガティブな出来事を喜べと言っているわけではない。あくまでも、ネガティブな出来事が「人生の意味」をもたらす精神的なプロセスを刺激するという事実を明らかにしただけだ。

 

ネガティブな出来事には、そこから意味を引き出す機会を与える働きがある。ネガティブな出来事により、毎日の暮らしに新たな視点が生まれるからだ。

 

とのこと。別に進んで辛い目にあえってわけじゃなくて、もし嫌な体験があった場合は、そこから人生の意味を引き出すように意識したほうがいいかもよーってことっすね。

 

 

 

ビッグファイブが当てにならない国もある?

 

現時点でもっとも有効な性格テストといえば「ビッグファイブ」。仕事のパフォーマンスや人間関係、幸福度などを正確に予想できるテストとして有名ですが、新たな研究(R)では「ビッグファイブが当てにならない地域もあるんじゃない?」というおもしろい結果が出ておりました。

 

 

これはアンデス大学などの研究で、まずは結論から言っちゃうと、

 

  • ビッグファイブって先進国にしか意味なくない?

 

って感じです。どうも一部の発展途上国ではビッグファイブの精度が落ちるっぽいんですよ。

 

 

具体的には23の発展途上国から94,751人を対象にしたもので、全員のビッグファイブと年収や健康レベルを調べたところ、

 

  • 発展途上国では、誠実性と年収が相関しない(先進国では誠実性が高い人ほど年収は高くなる)
  • 年収と相関していたのは開放性だった(つまり、先進国では好奇心がある人の方が年収が高い)

 

って結果が出たんだそうな。どうもビッグファイブの予測度が国によって変わっちゃうみたいなんですよね。

 

 

なんとも不思議な現象ですが、研究チームの推測としては、

 

  • テストの翻訳に問題があるから?
  • 貧しい国は金持ちの国よりも自己のパーソナリティに悩むケースが少ないから?

 

といった感じになってました。こうなると「日本はどうなの?」ってとこが気になりますけど、いちおう昔から邦訳版の精度も何度か確かめられてますんで、そにはらへんは安心してよろしいのではないかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。