目の前に誘惑に勝てない!を10秒で解決するテクニック、それは「無意味なルーチン」
当ブログではよく「セルフコントロール能力って大事よねー」みたいな話が出てきます。要は目先の欲望に負けずに長期的なメリットを選べる能力のことですね。
近ごろは、かの有名な「マシュマロテスト」に物言いがついたりもしましたが、いずれにせよ「長期的なメリットが大事だよー」ってポイントは疑いようがないでしょう。
とはいえ、だからと言って「セルフコントロールしたい!」と願い続けると実際の能力は下がっちゃうって現象が確認されてるのが悩ましいところ。つまり、セルフコントロール能力を上げたいと思ったら、セルフコントロールのことを考えずにセルフコントロールを上げてかなきゃいけないわけです。もはや禅問答!
なかなか難しい問題ですけども、新しい論文(1)はそのへんの解決策を提示してくれてて有用でありました。
「儀式」を守ってダイエット
これは上海大学の研究で、6つの実験で「うまくセルフコントロール能力を上げられる方法はないかなぁ」って問題を調べてくれております。
たとえばひとつめの実験は93人の女性が対象で、「ジムに通って痩せたい!」と思ってる人だけを選んだそうな(運動では痩せにくいけどそれはさておき)。
実験では、まず全員に「1日1500kcalの食事を守ってね!」と指示しまして、そのうえで2つのグループに分けております。
- 食事を「マインドフル」に食べてね!と指示する(いわゆるマインドフルイーティングですな)
- 食事をするときは「儀式」を守ってね!と指示する
この論文でいう「儀式(rituals)」ってのがどんな定義かと言いますと、
「厳格さ」と「反復」という2つの特徴を持つ、あらかじめ決められた一連の行動
って感じです。つまり、いつも決まった時間に歯みがきをしてればそれは「儀式」だし、「毎日16時間は何も食べない」と決めてくり返してればそれも「儀式」っすね。日本だと儀式よりは「ルーチン」と呼んだほうがわかりやすそう。
ダイエットに使う「儀式」とは?
では、具体的に実験の参加者がどんな「儀式」をしたかというと、以下のようなインストラクションをあたえたみたい。
儀式のインストラクション
食事のときは以下のインストラクションを守るようにしてください。これを守ればカロリーが10%減らせます!
ステップ1:食べる前に食事を小さくカットする
ステップ2:小さくカットした食品を、お皿の上に「左右対称」になるようにキレイに並べる
ステップ3:食品を口に運ぶ前に、フォークやスプーンで食品を軽く3回押す
当然ながら、これらの行為そのものには食欲を減らすような効果はありません。あくまで、食べる前に「決められた行動」を取ることで、参加者の行動がどう変わるかをチェックしたわけですな。
さて、その結果は、
- マインドフルよりも「儀式」を使ったグループの方が摂取カロリーが少なくなった!
だったんだそうな。近年では「マインドフルネス」にも十分な減量効果が認められてますけど、「儀式」にはそれ以上の効果があるのかもしれないんだ、と。
ちなみに、この後も研究チームは似たような実験をしてるんですが、結果はやっぱり同じ。たとえば、
- 食べる前に机の上を軽くノックする
- チョコを口に運ぶ前に目を閉じて3秒数える
みたいなよくわからないルーチンを使っても、参加者のセルフコントロール能力は向上し、より健康的な食事を選べるようになったというんですな。これはおもしろい……。
どんな無意味なルーチンでもセルフコントロール能力は上がる
こういった現象が起きる理由ははっきりとはしてないんですが、おそらくは、
- あらかじめ用意しておいたルーチンをこなす
- 「私は自分で決めたことをちゃんとできる人間なのだ!」という感覚が生まれる
- 「セルフコントロールが高い自分」というイメージに沿った行動を取ろうとする
- 目の前の欲望に強くなる!
みたいな流れではないかと思われます。ちょっと前にも「普段の小さなガマンが人生の成功を大きく左右する」みたいな話を書きましたが、ほんの少しの「決め事」や「忍耐」が、最終的に自信になって返ってくるのではないかと、
つまり、もし「誘惑に負けそうだ!」みたいな場面があったとしたら、
- 事前に「必ず成功するような小さなミッション」を設定しておく
- 誘惑が立ちはだかったら、その小さなミッションをこなしてみる
ってステップを行うのが有用なんでしょうな。この実験を見る限り「小さなミッション」の内容はなんでもいいので、
- 5回深呼吸
- 指を10回鳴らす
- 「あー!」と叫ぶ
のように無意味なのでも効果はあるかと思われます。お試しあれー。