どんなトラブルにも対応できる「やわらかな脳」を作るにはこの運動だ!という系統的レビューの話
運動すると頭が良くなる!って話は当ブログをお読みの方なら常識でしょう。これについては本当に大量のデータがあるんで、もはや間違いのないところではあります。
で、新しいデータ(R)も「運動と脳」に関する話でして、まずは大きな結論から言いますと、
- HIITで脳の働きがブーストする!
みたいになります。HIITのように高負荷で短時間の運動が、脳の構造を良い方向に変えてくれるというんですな。
研究チームいわく、
定期的な有酸素運動が脳に良いことはすでに知られており、記憶力や注意力、学習能力の向上などをもたらす。しかし、なぜ運動がそこまで有益なのか、そしてベストな運動、強度、持続時間はどのようなものか?という点についてはまだ研究の必要がある。
ってことで、ここでは過去に行われた「有酸素運動と脳の神経可塑性」に関する研究から8つの文献を選んで内容をまとめた系統的レビューになってます。データ数は少ないものの、それなりに参考になる内容と言えましょう。
「神経可塑性」ってのは、脳のシナプス結合がいろんな経験のおかげで増加したり減少することを意味しております。具体的には、
- 新しいスキルを学ぶ
- まったく知らない場所に行く
- 未知の仕事につく
のように、とにかく新しい体験をすると、その状況に適応するために脳の配線が変化するんですね。当然ながら、神経可塑性が高ければ高いほど人生で起きるトラブルにも対応しやすくなりまして、うまく毎日を生き抜くためには欠かせない要素だと申せましょう。
またこの研究で効果がチェックされたエクササイズの種類は、
- 筋トレはふくまない
- 基本的に有酸素運動がメインで、中程度の負荷を続けるタイプの運動(ランニングとか)から、HIITのような高負荷運動をふくむ
- エクササイズ中の被験者の心拍数は最大値の50% 〜 90%に分布している
みたいになってます。いろんな負荷の有酸素運動が、脳の可塑性にどう影響するのかをチェックしたわけですね。
でもって、どのような傾向が確認されたかと言いますと、
- HIITを20分間やるか、中等度の有酸素運動を25分間ほど続けた後に、もっとも神経可塑性が変化していた!
だったそうです。HIITを20分ってのはかなりキツい条件な気がしますんで、これなら普通の有酸素運動を25分以上やったほうが楽かな……。
さらに、ここではもうひとつ面白い知見も得られてまして、
- 有酸素運動で神経可塑性が変化するのは、ストレスホルモンのコルチゾールが減るのが主要な原因だと考えられる
だったんだそうです。運動が脳に良い理由はいろいろと言われていて、「BDNFが大事なのでは?」やら「乳酸がポイントかも?」みたいに諸説あったんですけど、神経可塑性についてはコルチゾールが大事なんだ、と。
研究チームいわく、
血中のコルチゾール濃度が高いと、神経可塑性反応を阻害する可能性がある。HIITを行う際はセッション中にテンポを変えることで、コルチゾールレベルをベースラインレベルに戻すことができるだろう。
とのこと。基本的にエクササイズはコルチゾールを減らす方向に働くんだけど、やりすぎると逆にストレスホルモンが増えちゃうんで注意しよう!ってことっすね。
まぁストレスが脳に良くないのは有名なんでそこまでの驚きはありませんが、あらためて「コルチゾールの量には注意せんとなぁ」とか思ったことでありました。