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睡眠は「時間」より「リズム」だった──不規則な眠りがメンタルを蝕むワケ

  

 

「睡眠は1日8時間とりましょう!」ってのは、もはや耳にタコができそうなアドバイスでしょう。もちろん睡眠時間は健康に直結する重要ファクターなので、睡眠不足はできるだけ避けたいところです。

 

ただし、近年の研究では「どれだけ寝るか」よりも「いつ寝るか」のほうが心身に大きな影響を与えるかもよーって報告も増えてまして、新たにチェックしたデータ(R)も似たようなテーマを扱っております。要するに、睡眠は“量”より“リズム”が勝負で、規則的に寝起きすることこそが、メンタルの健康を守る最大の武器になんじゃないの?って話ですね。

 

これは中国医科大学のドンラン・リ教授らによる研究で、UKバイオバンクの約8万人分のデータを解析した調査になってます。対象者はうつ・不安の診断歴がない成人の男女で、みんなの腕にセンサーを1週間ほど装着してもらい、それぞれの「就寝・起床時刻」を自動で記録してもらったんだそうな。全体の追跡期間は平均7.5年で、全員の「睡眠時間」と「睡眠リズム」の2つをチェックしてくれてます。

 

さて、細かいところは置いといて、大きな結論を見てみましょうー。

 

  • 調査の間に、約2%がうつ病を発症、約2.6%が不安症を発症した
  • 睡眠リズムが安定している人は、うつリスク14%減・不安リスク12%減していた
  • 睡眠時間をきっちり守っていても、リズムが乱れていると、うつリスク47%増・不安リスク35%増した

 

ということで、要するに「8時間寝てるから大丈夫!」と安心していても、もし夜ふかしや寝坊でリズムが崩れていたら、むしろ逆効果になっちゃうかもしれないわけですね。

 

なぜこういう現象が起きるのかと言いますと、それはよくわからないのですが、研究チームはいくつかの仮説を挙げておられます。

 

  • 体内時計の乱れ:不規則な睡眠は脳・肝臓・腸など体内の時計遺伝子をバラバラにし、神経伝達物質の分泌を乱す。そのせいでセロトニンやドーパミンが崩れることで気分が不安定になりやすいのかも。
  • ストレスホルモンの上昇:リズムが乱れるとコルチゾールが持続的に高まり、慢性的なストレス状態になる。結果として不安やイライラが増加するのかも。
  • 炎症反応の慢性化:体のリズムが狂うと低度炎症(軽いけど長く続く炎症)が体中で発生。近年は「炎症とうつ病」の関連が強調されており、これもリスク要因になるのだと思われる。

 

まあどれも納得の理由ですけども、睡眠の量よりもリズムのほうが、これらの現象への影響が大きいってのはおもしろいですねぇ。

 

でもって、さらにこの研究では、「睡眠のリズムを守ることで良い影響が出やすいのは、どんな人なのか?」ってところも調べていて、これもまた参考になります。

 

  • 60歳未満の人ほど、睡眠リズムを安定させたほうが、うつ病になりにくくなった
  • 低所得層の人ほど、睡眠リズムを整えることで、不安症リスクが顕著に低下しやすかった

 

こちらもまたおもしろい結果で、おそらく若い人のほうが体内時計が鋭敏に反応しやすいんでしょうな。また、低所得の人ってのは社会的ストレスを抱えやすいので、睡眠の乱れがダメージを増幅させるってとこもあるんでしょう。

 

ってことで、最後に実践ポイントをチェックしておきましょう。睡眠リズムを整える方法について、研究チームは「シンプルに同じ時間に寝て起きるだけで効果的だよ!」と指摘してるんで、そこらへんを守っておけば問題はないんですが、これがなかなか難しいという方は、以下のガイドラインを守っていただくと良いでしょう。

 

  • 平日と休日の差を30分以内にする:週末も夜更かしや寝坊はせず、起床・就寝のズレはできるだけ小さくする。
  • 朝の太陽光を浴びる:光が脳内の「主時計」をリセットし、体全体のリズムを整えるため、起きたらまずカーテンを開けるだけでも効果大。
  • 食事の時間を揃える:腸にも体内時計があり、食事のリズムがずれると影響大。なので、食事のタイミングは一定にすべし。
  • ブルーライトを減らす:就寝前のスマホやPCはリズムの大敵。どうしても使う場合はブルーライトカットや読書モードを活用。
  • 軽いルーティンを作る:就寝前の「儀式」(歯磨き→ストレッチ→読書など)を固定化すると、体が自動的に「そろそろ寝る時間だ」と学習するんで。

 

最後にあらためておさらいしておくと、睡眠の「長さ」より「リズム」がメンタルに直結するので、どれだけ寝てもリズムが乱れていたら逆効果であります。安定したリズムはうつ・不安の予防になるだけでなく、認知症リスク低下にもつながる可能性があるんで、

 

  • 平日は23時に寝て7時に起きる。でも金曜と土曜は夜更かしして深夜2時就寝、翌日は10時起床──。

 

みたいな睡眠パターンだと、ぱっと見は毎日8時間しっかり眠っているように見えても、体内時計が大混乱を起こして毎週末ごとに時差ボケを起こしているようなものなのでお気をつけください。どうぞよしなにー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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