体内の炎症がモチベーションを低下させる!といういかにもな仮説が生まれてた件
当ブログではおなじみ「万病の元」こと慢性炎症に関する新たな論文(R)が出てたんでメモっときましょう。
これはエモリー大学の研究で、まずは大きな結論から言っちゃうと、
- 体内の炎症がモチベーションを低下させる!
って感じです。大病を患ったせいで何もする気が無くなるのは当たり前ですが、この論文では「低レベルの慢性炎症でもモチベーションが下がる!」って主張になってるのがミソっすね。たとえば、普段から野菜を食べてないせいで本人も気づかないレベルの炎症が起きてた場合でも、モチベーションは下がるかもしんないんだ、と。
といっても、ここではヒトを対象にした実験が行われたわけではなくて、理論的なフレームワークを提出した内容になってます。ざっくり言えば、
- 過去の文献から炎症と脳のモチベーションに関するデータを収集
- そこから「慢性炎症で脳の働きはどう変わるか?」のモデルを構築
- テスト用に作った計算法でモデルの精度を検証
みたいな感じ。もちろんあくまで仮説の段階ではありますが、ベースのデータはかなり強力なものを使ってまして、説明モデルとしてはかなりいい線を行ってる印象を受けました(あと計算法も最先端感がすごい)。
で、研究チームの仮説がどんなものかと言いますと、
ヒトの体が感染症やケガなどに立ち向かう際、私たちの脳はモチベーションのレベルを再調整しなければならない。さもないと、治療に必要なエネルギーが足りなくなるからだ。
のようになります。体が炎症を起こしてたら、そっちの方に大事なエネルギーを割り当てなきゃならないので、脳はあえてモチベーションを下げて余計なことをしないように仕向けるんじゃないか?ってことですね。
そこで、計算で出た結論は以下のようなものです。
脳がモチベーションの再調整を行うにあたり、免疫系がドーパミンシステムの働きを乱すという強いエビデンスを得た。
ドーパミンといえば、皆さまご存じ「やる気を生み出すホルモン」の一種。体内の異変によって免疫システムが活性化し、そのおかげでドーパミンが減ってしまうらしいんですな。
この理論が正しければ、うつ病やその他の行動障害を治すための大きな手がかりになるだろう。もちろん、免疫細胞をターゲットにした治療法を確立させるにはさらなる時間が必要だろうが。
ドーパミンの分泌に影響を与えるのは炎症性サイトカインで、こいつが中脳辺縁系に働きかけるのが大きいみたい。中脳辺縁系は「報酬を得るために頑張るぞ!」って気持ちを生み出すエリアであります。
そういえば、前にも「免疫システムが暴走すると人見知りになるぞ!」ってマウス実験もありましたし、「炎症を抑えるために脳がモチベーションを再調整する」って説は良いところをついてるように思うわけです。私が以前より人見知りじゃなくなったのも炎症対策のおかげなのかもですな(たんに歳をとって感受性が鈍くなっただけの可能性もあるけど)。
この説がどこまで正しいのは謎ながら、炎症と脳機能に関するデータはこれまでもたくさん出ていて、
みたいな傾向がも確認されてたりします。そこらへんを考えると、日々のモチベーションを下げないためにも炎症対策はやっといたほうがいいよなーとか思いますねぇ。