クレアチンでアンチエイジング?血管機能と代謝改善の最新研究結果を解説
クレアチンと聞くと「筋トレ好きのサプリ」というイメージが強いはず。クレアチンは長年にわたってスポーツの分野で使われてきた定番サプリで、私も昔からお世話になってますし、筋トレ勢なら一度は試したことがあるでしょう
なぜクレアチンが効くのかといいますと、ざっくり言うと「ATP(アデノシン三リン酸)の再合成を促進して、短時間で力を発揮する能力を高める」という働きがあるからです。ATPは人体のガソリンみたいなものなので、こいつが増えれば、当然ながら運動のパフォーマンスも上がるわけです。
しかし近年では、「クレアチンって筋肉以外のメリットがあるんじゃないの?」とも言われてまして、とくに話題になっているのが「血管と代謝系の改善作用」であります。クレアチンってのは、もともと抗酸化作用や抗炎症作用、脂質低下作用などが報告されており、血管系にも何らかの良い影響をもたらすのでは?って仮説が出てきたわけですね。
「血管機能の改善」がアンチエイジングに超重要なのはご存じの通りで、心筋梗塞や脳卒中の原因である心血管疾患(CVD)は、酸化ストレスや慢性炎症、糖質や脂質の代謝異常が土台になって進行していくんですよね。これらの要因が重なることで、血管内皮の機能がガタつき、動脈硬化が進み、やがて大きなトラブルにつながるんですな。怖いですなぁ。
そこで、新たに行われたパイロット研究(R)では、50~64歳の男女12名を対象に、クレアチンの血管効果への影響をチェックしております。参加者として集められた人たちは、高血圧や糖尿病、腎疾患、喫煙習慣などがなく、週150分未満の中強度運動しかしていない、あまり運動していない男女に限定したんだそうな。健康だけど「ちょっと生活習慣が気になる世代」を対象にしたイメージっすね。
でもって、実験のデザインは以下のようになっています。
- プラセボ対照・二重盲検・クロスオーバー試験:被験者も研究者も、誰がクレアチンを飲んでいるか知らない状態で、クレアチンと偽薬(マルトデキストリン)を交互に4週間ずつ摂取。その間に4週間のウォッシュアウト期間あり。
- クレアチンの摂取量:最初の5日間はローディング期として1日20g(5g×4回)を飲み、その後は1日5gを23日間続けて体内量を維持。
- 評価したポイント:
- FMD(血流依存性血管拡張反応):血管内皮機能の代表的な指標。値が高いほど血管がよく広がる。
- 細小血管機能:近赤外分光法で測定し、酸素飽和度の回復速度をチェック。
- PWV(脈波伝播速度):動脈の硬さを測定。
- 血糖・中性脂肪などの代謝指標
- 酸化ストレスマーカー
ということで、クレアチンが血管と代謝にどんな影響を与えたのかといいますと、結果はこんな感じになりました。
- 血管内皮機能(FMD)が有意に改善!
- クレアチン摂取前:7.68% → 摂取後:8.90%(有意にアップ)
- プラセボ群はほぼ変化なし(8.13% → 8.08%)
- 細小血管の酸素回復力も改善!
- クレアチン群:2.29%/秒 → 3.71%/秒
- プラセボ群:2.47%/秒 → 2.11%/秒(むしろ低下)
- 血糖値・中性脂肪も有意に低下!
- 空腹時血糖:103.6 → 99.0 mg/dL(クレアチン群でのみ有意に低下)
- 中性脂肪:99.8 → 83.8 mg/dL(同様に有意に低下)
数字ばっかり並んでいてちょっと分かりづらいので、ざっくり簡単にまとめると、
- FMDは一酸化窒素(NO)の働きで血管が広がる反応を示すものなので、数値が上がるほど血管内皮が健康ということになる。これはかなり有望な結果。
- 細い血管の働きまで改善しているというのは、末端の血流や酸素供給が良くなっている証拠。冷え性や末梢血行の悪い方には朗報かも?
- 血糖と中性脂肪の両方が下がるというのは、代謝機能が改善しているサイン。インスリン感受性が高まった可能性もあり、糖尿病予防の観点からも期待できるかも?
みたいになります。ここら辺はかなり有望な結果で、クレアチンは筋肉だけじゃなくて、心臓に健康の維持にも良いのかなあって感じがしますね。
ただし、一方では、動脈の硬さ(PWV)や酸化ストレスマーカーには変化が見られなかったそうで、こちらはちょっと残念。おそらく、4週間ぐらいの介入期間では不十分だった可能性が高いんでしょうな。
まあ、あくまで今回の研究はサンプル数が少ないパイロットスタディなんだけど、結果を見る限り、クレアチンは単なる筋肉サプリではなく、血管・代謝系にも良い影響を及ぼす可能性があるってことでしょうな。もちろん、これは運動不足で血管機能が弱ってそうな人しか対象にしてないので、万人にアンチエイジングの効果が出るとは思いづらいんですが、以下のような方には検討の価値があるかもしれません。
- 運動不足が気になる中高年層
- 血糖値や中性脂肪の数値がやや高めの方
- 筋トレに加えて健康も気にしている人
もし、アンチエイジングの目的でクレアチンを使うときは、この研究のデザインを参考にして、
- 初期は 1日20gを5gずつ4回(5日間)
- 維持期は 1日5g
といったローディング方式が基本になるでしょう。言わずもがなですが、腎機能に不安のある方や、持病のある方は医師に相談してからが大前提であります。
ということで、クレアチンの可能性はまだまだ広がりそうな気配なんで、今までは「筋肉のための補助食品」みたいな立ち位置だったのが、今後は「血管と代謝の健康を支える日常サプリ」としての評価も高まるかもしれませんな。個人的には、ここ10年ぐらいずっと飲み続けているので、こういう結果が出てくるのはありがたいですなぁ。