今週の小ネタ:恋愛では「好きだよ」より「皿を洗ったよ」が重要、ヤバい性格のやつほど詐欺に引っかかりやすい、「かわいい」ものはなぜかわいいのか

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
恋愛では「好きだよ」より「皿を洗ったよ」が重要かもしれない件
パートナーから「愛してる!」と言われる場合と、「疲れて帰ってきたらパートナーが食器を片づけてた!」場合を比べたら、どちらがグッとくるか? そんな問題を調べた研究(R)が出ておりました。
このような話は恋愛や夫婦関係における定番のテーマで、「口だけより行動が大事」派と、「気持ちはちゃんと言葉にしなきゃ伝わらない」派にわかれて、よく議論が起きてたりしますな。そこでこの研究では、中国の成人513人を対象に、3つの実験を行ってます。
ざっくりまとめてみると、
- 実験1 仮想の恋人のシナリオを評価する:「ストレスのある一日を過ごしたあと、恋人が“がんばったね”と声をかけてくれた」場合と、「ストレスのある一日を過ごしたあと、恋人が夕飯を作ってくれた」場合で、どちらをより魅力的に感じるか? を評価してもらった。
 その結果、女性は“行動”を好む傾向が強く、男性は“言葉”を好む傾向が強かった。
- 実験2・3 架空の2人のパートナープロファイルを比較:「A:優しい言葉をかけてくれるタイプ」と「B:日常的な気遣い行動をしてくれるタイプ」を比べて、どちらを恋愛相手に選ぶか? どちらがあたたかく、信頼できそうか? を調べた。
 その結果、女性はB(行動派)を選び、温かく信頼できると評価しやすく、男性はAとBに大きな差を感じず、あまり区別しない傾向があった。
みたいになってます。つまり、「女性は行動から“信頼”を読み取り、男性は“言葉”から親密さを感じる」っていう性差があるんじゃないか、と。
このような傾向が見られる背景には、進化心理学の理論が絡んでまして、
- 女性は「投資の兆候」に敏感:女性は妊娠・出産の負担が大きいため、長期的にリソースを提供してくれるパートナーを重視する傾向が強い。つまり、「この人はちゃんと助けてくれるか?」「困ったときに支えてくれるか?」という視点で相手を見るため、言葉より行動(手間や労力をともなうもの)の方を信頼するようになった。
- 男性は「感情の即時性」に敏感:男性は、恋愛の初期段階で相手の興味や好意のサインを重視する。つまり、言葉の方が分かりやすく、手っ取り早く安心できるようになった。
みたいになります。もちろん、これはどちらが「良い/悪い」って話ではなく、脳の優先度が違うってことですね。
で、ここで面白かったのが、「自分がどうやって愛情を表現するか」と「相手にどう表現されたいか」は一致しなかったという点であります。つまり、
- 自分は言葉で愛情を伝えるタイプでも、相手には行動で示してほしいと感じる
- 逆に、自分が行動派でも、言葉を期待することもある
ということもよくあるわけでして、このあたりは恋愛や夫婦関係でよくある「愛情表現のミスマッチ」の根源かもしれませんな。
ってことで、この研究から得られる知見としては、
- 相手の性別や価値観によって、響く“愛情表現のタイプ”が違う
- 自分が送りたい方法より、相手が受け取りやすい方法を優先する
ということでして、もしあなたのパートナーが女性なら、「ありがとう」「好きだよ」よりも、食器を洗う・家事を手伝う・お茶を淹れるなど、実際に動く方が伝わるかもしれません。逆にパートナーが男性なら、「皿洗ったよ」だけではなく、ちゃんと言葉で気持ちを伝えるのが良いでしょうな。
もちろん、これは文化にも左右される話なので、日本人にそのまま当てはまるかどうかは不明ですが、このポイントを意識してみると、意外と関係性が改善したりするかもしれませんねぇ。
ヤバい性格のやつほど詐欺に引っかかりやすい説
現代で多い詐欺と言えばフィッシング詐欺であります。急に「口座情報を更新してください」「至急、パスワードの再設定を」といったメッセージをついクリックしちゃって個人情報を抜かれたりする、あのパターンですな。
新しい研究(R)では、そうした詐欺に引っかかりやすい人を深掘りしていて面白かったです。一見すると、そういった詐欺に引っかかるのは「人がいい」や「おっとりしている」といったタイプのようですが、実際には「人を操るタイプこそ、騙されやすい!」って話らしいんですよ。
これはアラバマ大学などの研究で、ダークトライアドと呼ばれる性格特性と、フィッシング詐欺への脆弱性の関係を調べたものです。ダークトライアドを簡単におさらいしておくと、
- ナルシシズム(「競争的な自己愛」「称賛欲求」)
- マキャベリズム(「操作的な行動」「冷笑的な世界観」)
- サイコパシー(「共感の欠如」「衝動性」「反社会性」)
といった“社会的に好ましくない性格特性”を指す用語で、これらの性格を持つ人は、「自分が大好き」だったり、「他人を操るのが好き」だったり、「他人に共感しづらい」といった特性を持っているわけです。
というと、そういう“悪いヤツら”は詐欺に引っかからないのでは……と思うかもですが、実際はさにあらず。研究チームが、アメリカの大学生461名(ほとんど18〜19歳)を集めて、みんなのダークトライアドをチェックし、さらに全員に本物そっくりの詐欺メール12通を見せ、「信じるかどうか」「反応しそうかどうか」を評価してもらったところ……
- 初期分析では、「ダークトライアドとフィッシング脆弱性に直接的な関連はない」との結果だった。
- ところが、「他人の感情や意図を察知する力」や「微妙なニュアンスや違和感をキャッチする感性」などを“媒介変数”として入れると話が変わり、ほぼすべてのダークトライアド特性がフィッシング詐欺への引っかかりやすさと関連していた。
- 「冷笑的なマキャベリズム」「共感欠如型サイコパシー」「攻撃的なナルシシズム」が、詐欺への引っかかりやすさと関係していた。
といった結果が出たんだそうな。つまり、「人を出し抜こうとする人ほど、他人の悪意には気づきにくい」という結果でして、「ざまあ!」って気がするわけです。
研究チームいわく、
社会的に攻撃的な性格の人は、相手の意図を読む力が低いため、騙されやすくなる。自信過剰や他者軽視が、結果的に“他人に騙されやすい”という形で跳ね返ってくるのだ。
とのこと。なんでも、ダークトライアドの人は、社会的認知能力(特に「社会的気づき」)が低く、そのため相手の意図や微妙な違和感に気づきにくい傾向があり、結果としてフィッシングメールのような“なりすまし”にも弱くなってしまうらしい。ヤバい性格の人たちは、直感的に他者を理解する能力が低く、それで詐欺にかかっちゃうわけっすね。
ということで、結論としては、他人を操作しようとする人ほど、自分が操作されていることに鈍感になってしまう!ってことで、まことに因果応報ですなぁ。
「かわいさ」が人を動かす説
ぬいぐるみを見て、なんとなくホッとした気分になった経験は、誰しも一度はあるはず。その代表がテディベアで、あの丸っこい顔とふわふわの毛並みを見たら、そりゃあ普通は癒やされるわけです。
が、ここで気になるのが、そもそも「なぜテディベアは人を癒すのか?」って問題でしょう。この問いを科学的に掘り下げた研究って、これまで意外と少なかったんですよね。
そこで、新たに行われた研究(R)では、「テディベアの見た目」と「人の感情」の関係について、かなり踏み込んだ分析を行ってくれていて勉強になりました。
研究チームは、フランスの3〜92歳の男女11,188名を集め、オンラインで以下のようなアンケートを実施してます。
- 2体のテディベアの写真を見せて、どちらが「美しい」と感じるか? どちらが「癒される」と感じるか? どちらを「守ってあげたい」と感じるか? という3つの観点から評価してもらう。
- さらに、各テディベアの物理的な特徴(※画像解析による客観的データ)を測定し、頭の大きさ、目の直径、鼻の面積、毛の長さ、色の明るさ、彩度、コントラストも把握する。
- 上記の情報を「ブーステッド回帰木」という機械学習モデルで解析し、「見た目の特徴がどう感情に影響を与えるのか?」を統計的に割り出す。
ということで、「ぬいぐるみの写真を見せるだけで、人がどれほどの“愛着”を感じるか?」を調べた、まことにユニークな内容になってますね。
その結果をチェックしてみたところ、明らかになったのは以下のようなポイントです。
- 見た目が良い=癒される=守りたくなる:3つの評価(美しさ・安心感・保護したい気持ち)は、すべて高い相関関係があった。つまり「かわいく見えるテディベア」は、そのまま「癒し」や「思いやり」まで引き出してくれる。
 研究チームはこの3つの感情を統合して、「カットネス・スコア(cuteness)」なる指標を定義している。わかりやすく言えば、「見た目のかわいさ」は、そのまま人の“やさしさ”を引き出すスイッチにもなることを意味する。
-  毛が長いほど「かわいい」:「かわいさ」の評価にもっとも強い影響を与えたのは、毛の長さだった。長い毛を持つベアは一貫して「癒される」と感じられやすく、逆に毛の短いベアは不人気だったとのこと。
 人間の脳は、視覚情報だけで「触ったら気持ちよさそうかどうか」を予測する能力があるらしく、それが感情の判断にも影響するっぽい。
- ベイビースキーマが鍵:次に影響が大きかったのは、「ベイビースキーマ」と呼ばれる特徴で、具体的には、大きな目、小さな口(マズル)、丸い頭部といった要素がある。これらは人間の赤ちゃんにも共通していて、進化的に「保護しなければ」という感情を引き起こすトリガーになっている。
- 年齢によって「かわいさ」の基準が変わる:年齢層ごとに見ると、子ども(10歳以下)は美しさ・癒し・保護欲の3つをバランスよく評価したのに対して、大人は癒し感を最も重視する傾向にあった。つまり、子どもは「トータルなかわいさ」で判断し、大人は「どれだけ落ち着くか」で選んでいた。
 また、大人は「クラシックな茶色いテディベア」を好み、子どもは「カラフルでユニークな形状のベア」を好むなど、文化的なテンプレートの影響も見られた。
進化心理学の世界では、「かわいい」って感情は「他者への配慮や保護本能を引き出すために進化した!」と考えられているので、この結果にはめっちゃ納得っすね。テディベアが心を癒すのは、人類の進化的な仕組みが根底にあるんでしょうなぁ。
 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
