サウナで筋肉はつくのか?熱の効果をトレーニングに活かすためのガイドライン
「サウナ」ブームが続く昨今でございます。その健康効果についてもいろいろと言われてまして、
- 心血管の健康にいいらしい
- ストレスめっちゃ減るらしい
- 長寿につながるのではないか
なんて話があったりするんですよね(正直、まだどこまで信じていいかわからないレベルですが)。
でもって、近ごろよく耳にするようになったのが、「サウナで筋肉がつく!」なんて主張であります。筋トレとサウナを組み合わせると、血流が上がったおかげでトレーニングのパフォーマンスが上がり、そのおかげで筋肉にも良い影響があるんじゃないかと言うんですな。
といったところで、新たにフィンランドの研究チームが、赤外線サウナの筋トレ効果への影響を調べてくれていて(R)、非常にためになりました。研究の概要をざっくり整理しとくと、ポイントは以下のようになります。
- 調査の対象になったのは、フィンランドの女性チームスポーツ選手40人(バスケ、フットサル、アイスホッケー、アメフトなど)
- みんなに、週2~3回の筋力&パワー(スクワット+ジャンプなど)トレーニングを6週間ほど続けてもらう
- トレーニング直後に赤外線サウナ(50°C)に“10分間”ほど入ってもらう(合計18回)
- ジャンプ、スプリント、筋力、筋肉の断面積(超音波とDXA)などを、サウナの前後で比較してみる
ということで、「んー、サウナの温度が低すぎる!惜しい!」って感じですけど、現時点では似たような研究がないので、とりあえず貴重なデータだとは申せましょう。
で、調査の結果がどうだったかと言いますと、
- サウナに入っても入らなくても、トレーニング効果に大きな差はなかった
- ただし、ジャンプ(15%負荷)の高さが7.7%アップし、同じくパワー出力が6.8%アップするという効果は見られた
みたいな感じです。いちおうジャンプの能力だけ良い影響が出てますけど、これは偶然の可能性も否定できないよなーって感じですね。一方で、他の指標にはほぼ有意差が出てなくて、
- ジャンプ(0%、25%、50%負荷)では差なし
- スプリント20mも変わらず
- レッグプレス筋力にも差なし
- 体脂肪が微増(むしろ逆効果…?)
みたいになってます。トレーニング自体の効果は見られたものの、残念ながらサウナの効果は見られなかった、と言って良さそうですね。
ただし、上にも書いたとおり、この実験は「熱の“強さ”と“時間”が足りなくないか?」って問題があるので、サウナの“投与量”を増やしたらどうなるかってのは、まだまだ謎が残るところですね。というのも、この試験は「50°Cを10分」っていうかなり低めの負荷を採用しているので、一般的なサウナとは比較にならないんですよねぇ。ここらへんは、めっちゃ残念。
ということで、念のため、過去に効果が報告されたサウナの介入試験も見てみると、
- ドライサウナ:80〜100°Cで15〜20分を複数セット
- 赤外線サウナ:60〜70°Cで20〜30分
- 温熱浴(湯船):40〜42°Cで20〜40分
みたいに、“ちゃんと熱い”条件で試した場合には、血圧が下がったり、代謝が改善したり、睡眠の質が向上したりといった効果が得られたみたいなんですよ。なので、もっとガッツリ温めれば、筋温の上昇によってトレーニング効果が高まる可能性はあるんじゃないでしょうか。
実際、赤外線サウナの効果は、いくつかの研究でメリットが示唆されてまして、
- 心血管機能の改善(血流、血圧など)
- 代謝改善(インスリン感受性、脂質代謝など)
- 抗酸化・炎症抑制
- ストレス緩和・リラクゼーション
- エネルギー消費の増加(代謝向上)
- 食欲の軽減
といったあたりは可能性がありそうな気がしております。あくまでまだまだ小規模なエビデンスしかないんだけど、これらのメリットを考えてみると、筋トレの効果をブーストする役にも立つんじゃないかとは思っちゃいますね。
つまり、ざっくりと結論をまとめると、
- 赤外線サウナ10分の条件では、筋トレ効果の増進は確認されなかった
- ただ、熱量をしっかり上げれば、可能性はまだありそうな気がする
みたいになります。現在のところサウナは「健康やリラックス、血流改善」のメリットが期待できるが、「筋肥大や筋力増にはまだ未知数」ってとこでしょう。もし試すなら、安全第一で、しっかり熱くして本気で入るようにしてくださいませ。実践のガイドラインとしては、
- 一般的なドライサウナなら、80〜90°Cで15〜20分程度
- 赤外線サウナなら、60〜70°Cで20〜30分程度
- 週2〜4回を目安に、トレーニング後の“リカバリー”として使うのがオススメ
- トレーニングの直後にサウナに入ることで、血流の促進による回復促進が期待できるけど、過度な熱ストレスは回復を阻害する可能性もあるので、あくまで“ほどほどに”。
- サウナはあくまで「リカバリーの補助ツール」あるいは「健康習慣の一部」として捉えるのが吉。
みたいになります。あくまで筋トレのサポートぐらいに考えつつ、トレーニングとサウナを組み合わせてみると、意外と良い結果が得られるかもですな。
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
