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セット間にボーッとしてるの、もったいないかも?──“アクティブレスト”で筋トレ効率アップの話

 
 

みなさんは筋トレ中の休憩、どうしてます? たいていの人は、ベンチに座ってスマホをいじるか、なんとなくボーッとして次のセットを待っている感じでしょうか。かくいう私も、セット間の休憩は本を読むか論文を読むかのどちらかをやっております。

 

が、最近の研究(R)では、「インターバル中にちょっと体を動かすだけでパフォーマンスが改善するかも?」って結論になってておもしろかったです。いわゆるアクティブレスト(積極的休息)の効果を改めて比べた研究になっているわけですな。

 

研究の詳細に入る前に、基本的な用語をおさらいしておきましょう。アクティブレストってのは、名前のとおり「ちょっとだけ体を動かす休憩法」のことで、たとえば、

 

  • 下半身トレのインターバルに軽くバイクを漕ぐ
  • 上半身トレの合間にゴムチューブで軽く胸を押す
  • スクワットのセット間にその場ウォーキング

 

みたいな感じになります。“汗をかかない程度の超軽い運動”をセットの間に挟むことで、次のセットの質を高めようとするアプローチってことですね。

 

この手法が有効な理由は、アクティブレストによって、筋トレ中にたまった乳酸などの「老廃物」を流してやれるから。そのおかげで、筋肉が早く回復し、トレーニングのパフォーマンスも改善するんですね。

 

ただし、この手法が筋トレにも効果があるかどうかはまだよくわかっていなかったのですが、今回の研究はその辺を探ってくれていてためになります。

 

これがどんな実験だったのかと言いますと、

 

  1. 筋トレ歴5年以上の男性14名が対象

  2. スミスマシンでのベンチプレスを5セット×8回(重さは1RMの約52.5%)やってもらう

  3. セット間(2分間)に、以下の2パターンで休憩してもらう
    1. パッシブレストグループ:座って何もしない
    2. アクティブレストグループ:5〜10%の軽負荷でチェストプレス15回+30秒休憩

 

って条件でパフォーマンスの違いを比べたんだそうな。これはためになりますなぁ。

 

で、その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • バーベルを動かす平均スピードは、アクティブレスト群の方が全体的に高かった。
  • セットが進むごとに速度低下が少なかったのもアクティブレスト群だった。
  • 血中乳酸濃度も、アクティブレスト群の方がやや低めに推移した。
  • 主観的疲労感(RPE)には、どちらのグループも差がなかった

 

って感じです。つまり、「こっちが明確に勝利した!」とまでは言えないけれど、ほとんどの指標でアクティブレストのほうが良さそうだなーって結果に落ちついたわけっすね。あくまで統計的には微妙な結果なんだけど、筋トレ好きもアクティブレストを試してみたほうがいいのかもしれませんな。

 

まあ、この研究には残念なとこもありまして、いまいちトレーニングの強度がぬるいんですよね。使われた負荷(1RMの52.5%)を見てみると、人によっては1セットに20回以上挙げられるレベルを使ってまして、「ほとんどウォーミングアップでは?」と思わせる感じなんですよ。

 

現実のトレーニングであれば、少なくとも70〜75%ぐらいの負荷で、限界に近い回数(RIR3以下)を攻めることが多いはずですからねぇ。そう考えると、乳酸の蓄積も一気に増えるわけで、アクティブレストの効果がもっと顕著になった可能性もあるんじゃないかと。

 

ってことで、このあたりにはちょっと不満なんですけど、おそらく現時点では、以下のような状況では積極的に取り入れてみる価値がありそうです。

 

  • 高回数・短インターバルの筋肥大狙いのトレーニング
  • 乳酸がたまりやすいサーキットトレやHIIT
  • ジムが混んでいて、待ち時間を有効活用したいとき

 

逆に、3~5分の長めインターバルをとるような重めの筋力系トレーニングでは、アクティブレストのメリットは薄いかもしれません。とはいえ、その場で少し歩いたり、軽く腕を動かすくらいなら、「座ってスマホ」よりはマシでしょうから、私も休憩中は論文を読みつつウロウロしてみようかと。

 

アクティブレストを試してみたい方は、以下の手順をお試しくださいませ。

 

  • アクティブレストの強度はごく軽く:1RMの5〜10%くらいで15~20回程度。体感で「ラクすぎる」くらいの強度を使うのが基本で、これ以上重くすると逆に疲れるので注意。

  • 動作はシンプルにしつつ同じ部位か連携筋を狙う::バイク漕ぎ、腕立てのモーション、ゴムバンドでプッシュなどを使用。上半身のトレなら上半身を、下半身なら下半身を動かすように心がけること。 血流を促すのが目的なので、同じ筋群をやさしく刺激するのがポイント。

  • 時間はインターバルの半分:2分休憩なら1分くらいを目安に。長く動くと次のセットに影響が出ちゃうんで。

 

というわけで、「休憩中に軽く体を動かすだけで筋トレのパフォーマンスが上がるかも?」というお話でした。この研究を見る限り、アクティブレストが絶対的に優れているとは言えないんだけど、

 

  • アクティブレストの効果が出る可能性は高い(次のセットで1〜2回多くできるかも?ぐらいの効果)
  • 少なくともデメリットはない
  • 実践コストはほぼゼロ

 

ってあたりはかなりうれしいポイントなので、とりあえずやっといても損はないんじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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