今週の小ネタ:フルクトース(果糖)が不安を増やす?性格がダークな人はどんな世界観を持っているのか?オーガズムの顔が「痛み」と同じなのはなぜ?

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
フルクトース(果糖)が不安を増やす?
「砂糖の摂りすぎは体に悪い」って話は昔からありますが、最近の研究(R)では「果糖(フルクトース)をうまく吸収できない人は、不安傾向が高く、体内の炎症レベルも上がる」という結果が出ておりました。ここ数年、腸とメンタルの関係(腸脳相関)の研究が急速に進んでますが、今回の研究もその流れのひとつっすね。
まず前提から説明しておくと、フルクトース(果糖)は果物やハチミツなどに含まれる糖なんですが、人間の体は果糖を無限に吸収できるわけではなかったりします。小腸が果糖を体内に取り込むための輸送タンパクには数の制限がありまして、果糖を食べすぎると、糖が吸収されずに大腸まで流れてしまうことがあるんですよ。
で、大腸に流れた果糖は腸内細菌によって発酵されまして、そのせいで
- 腸内細菌のバランス変化
- ガスの発生
- 炎症反応
といった問題が起きるんですね。つまり、吸収されなかった果糖は、腸内環境を変えてしまうかもしれないわけです。
そこで今回の研究では、55人の健康な若い男性を対象に調査を行ってまして、
- 参加者に果糖入りドリンクを飲んでもらう
- その後、数時間にわたって呼気(吐いた息)を分析する(腸内細菌が果糖を発酵すると、水素やメタンといったガスが発生するため)
みたいに研究を進めたんだそうな。
すると、その結果はなかなか興味深いものでして、
参加者の約60%が果糖を完全には吸収できていなかった
とのこと。サンプル数の少ない実験ではありますが、こうして見ると、果糖の吸収不全ってのはかなり一般的な問題なのかもしれませんな。
でもって、さらに研究チームは、参加者の食事内容や血液、腸内細菌、心理傾向なども調べまして、こんな結果も報告しております。
- 同じ量の果糖を食べていても、果糖をうまく吸収できない人は、不安スコアが高く、炎症マーカーが高く、腸内細菌の構成が違っていた
つまり、果糖を摂りすぎると腸内細菌が変化し、これが脳の炎症を引き起こし、不安が増加するのかもってことですな。
もちろんこれで完全に因果関係が証明されたわけじゃないんだけど、食事とメンタルの関係を考えるためには、
- 清涼飲料水は減らす
- 加工食品の糖を減らす
- 果物は食べ過ぎない
- 一度に大量の果糖を摂らない
みたいに心がけておくと良さそうであります。特に問題なのは、ジュース、お菓子、加工食品あたりなので、これらを摂取して吸収能力の上限を超えないようにしたいものです。逆に言えば、果物を普通に食べるぐらいなら、そこまで神経質になる必要はないんで、そこもご注意あれ。
性格がダークな人はどんな世界観を持っているのか?
世の中には、
- やたらと他人を利用する人
- 平気でウソをつく人
- 他人の不幸を面白がる人
みたいなタイプがいまして、こういう傾向をまとめて心理学では「ダークトライアド」と呼んだりします。具体的には、
- ナルシシズム(自己愛)
- マキャベリアニズム(策略的で他人を利用する)
- サイコパシー(冷酷・共感の低さ)
などが含まれてます。このブログでも何度も取り上げたテーマですね。
で、最近の研究(R)では、「このような性格を持つ人たちは、共通した世界観を持っているのでは?」って説を展開していて、なかなかためになりました。今回の研究で注目されたのは、プライマル・ワールド・ビリーフという概念でして、これはざっくり言うと、
「世界ってそもそもどんな場所なのか?」という根本的な思い込み
のことです。どんな人でも「世界とはこういうものだ?」って考えを無意識に持っていて、
- 世界は安全な場所だ
- 世界は危険な場所だ
- 世界は面白い
- 世界はつまらない
- 世界には意味がある
- 世界は不公平だ
みたいな基本イメージを抱いているじゃないですか。これがプライマル信念でして、この研究者たちは「ダークトライアドほど、世界をネガティブに見ているのでは?」と考えたわけですな。
研究では、ドイツ語圏の成人を対象に4つの調査を実施。それぞれの研究の参加者はだいたい400〜640人で、合計すると1600人以上を集めて、
- ダークトライアド傾向の強さ
- 世界観(プライマル信念)
を質問紙で測定したとのこと。すると、結果はかなり明確なものでして、ダークトライアドの傾向が強い人ほど、
- 世界は安全ではない
- 世界は魅力的ではない
- 世界は意味がない
と考える傾向が強かったらしい。いかにもダークトライアドって感じの世界観ですねぇ。
さらに逆もまたしかりで、ダークトライアドたちは、以下のような評価が低くなってたそうな。
- 世界は豊かだ
- 世界は面白い
- 世界は改善できる
- 世界は探索する価値がある
- 世界は協力的
- 世界は公正
- 世界は進歩している
- 世界は安定している
こちらも非常に納得で、簡単にまとめると「ダークな性格の人ほど世界はつまらなくて危険な場所だと思っている」ってことですな。
ちなみに、ちょっと面白かったポイントとしては、ダークトライアドの人たちは、
- 宇宙や何かの力が自分に働きかけている
という文章には賛成する傾向が少しだけ高かったらしい。おそらく、これはナルシシズムや自己イメージの高さと関係してまして、つまり「世界は嫌いだけど、自分は特別だ!」って感覚が強いってことですな。
この結果について研究チームは、
ダークトライアドな人ほど「人生や世界にはあまり意味がない」と考える傾向が強い。これが、ダークトライアドの根本にある世界観だろう。
と考えておられます。つまり、ダークトライアドってのは「世界は意味がない」って前提があるからこそ、他人を利用することへの心理的ハードルが低くなってるんでしょうな。
オーガズムの顔が「痛み」と同じなのはなぜ?
「オーガズムの顔ってなんであんな苦しそうなの?」って問題を調べた珍妙な研究(R)がおもしろかったんで、内容をチェックしておきましょう。
なんでこんな研究が行われたのかと言いますと、もともと性研究の世界では、「なんでオーガズムって快楽なのに痛そうな顔になるの?」って疑問があったからです。ご存じのとおり、オーガズムの顔ってのは、「喜び」よりも「苦悶」に近いものになってまして、なんでオーガズムだけ感情と表情が食い違ってるんだろう?ってのは、長らく謎のままだったんですよ。確かに、言われてみれば不思議なもんですな。
ということで研究チームは、以下のような顔写真を被験者に見せて、みんながどのように評価するのかをチェックしたんだそうな。
- テニス選手が勝った瞬間の顔だけを切り抜いた写真
- テニス選手が負けた瞬間の顔だけを切り抜いた写真
- ピアスで強い痛みを感じている人の顔だけを切り抜いた写真
- オーガズムの顔だけを切り抜いた写真
すると、その結果は面白いもんで「みんな、どの表情がどの場面で起きたものなのか?」をほぼ区別できなかったんだそうな。つまり、私たちってのは、勝利の表情だろうが、苦痛の表情だろうが、オーガズムの表情だろうが、すべて同じものとして見えちゃう性質を持っているんだ、と。
じゃあ、どうやって私たちは他人の感情を判断しているのかと言いますと、研究チームは、
私たちは顔ではなく「体」を見ている。
と指摘しておられます。というのも、実験では以下のような画像も作られまして、同じように被験者に評価をしてもらってるんですよ。
- オーガズムの顔 + 痛がっていそうな体
- 痛みの顔 + 喜んでいそうな体
すると結果がどうだったかと言いますと、被験者の判断は完全に体の方に引きずられたらしいんですな。つまり、私たちは相手の顔を見て感情を判断していると思っているけど、実際は体の情報で感情を判断しているってことです。人間の認知ってのは、なかなかいい加減なもんですな。
なので、「オーガズムの顔ってなんであんな苦しそうなの?」って疑問の答えを簡単にまとめると、
- 私たちは、極端な感情が起きると、目を閉じる・眉を寄せる・口を開けるといった同じ表情を浮かべがちになる
- オーガズムも感情の強度が極端に高いので、顔の表情が「快楽」専用のサインとして機能しにくい
- 私たちは実際には顔だけで感情を読んでおらず、体の動きや状況の文脈で判断しているため、顔が多少「苦悶っぽく」見えても問題がない
みたいになりますか。要するに、感情が強すぎる時は人間はみんな同じ顔になり、それがポジティブかネガティブなのかは身体で判断するってことなんでしょう。人間は「顔だけで感情を読む生き物」だと思われがちなんですが、実際にはかなりざっくりと顔+体+場面の組み合わせで意味を判断しているわけです。そう考えると、オーガズムの顔だけが特別おかしいというより、ピーク時の感情表現そのものがそもそもややこしいってことなんでしょうな。


