ネットでよく見る「自分の才能がわかるテスト」ってどこまで信頼性あるの?(2大テスト編)
こないだ、こんなツイートをしたんですよ。
【緩募】これから「才能」に関する本を書くのですが、このテーマについて、疑問に思うことや、知りたいと思うことがあれば、このツイートに返信して教えていただけないでしょうか!(例:「神童って本当にいるの?」とか)
— 鈴木祐 (@yuchrszk)
ということで、いま「才能」の本を書くべく準備を進めております。「自分だけの生まれ持った能力はあるか?」とか「自分の才能はどうわかるのか?」みたいな問題をあつかう本ですね。
ちなみに、私の本は、通常は「本を読むのが得意な人」に向けて書いていて、やや難易度が高めな作りになっております。特に「無(最高の状態)」と「ユア・タイム」については、脳機能の深いとこまで掘り下げてまして、かなり読む人を選ぶかなーといった感じなんですよ(こんな珍妙な本がよく6万部ずつも売れてるもんです)。
ただ、今回はより簡単な書き方を心がけようと思ってるんですよ。というのも、「自分にはなんの才能もない……」とか「自分にもっと可能性があるはず!」といったお悩みを抱えた方に、幅広く手にとってほしいもんですから。なので、「鈴木の本はなんかむずいなー」と思ってた方もご期待ください(笑
そんなわけで、いまは完全に「才能」について考えるモードでして、あんま他のジャンルの文献が読めない状態なので、無理して別ジャンルのデータを紹介するよりも、これからしばらくのブログは、「才能」にまつわるデータをまとめていく感じにしようかと思っております。
で、今回お伝えするのは、「定番の才能チェックテストの良いとこと悪いとこ」についてです。世の中には、いろんな才能チェックテストがあるんですけど、それにはどれぐらいの根拠があり、どれぐらいちゃんと使えるのか?ってとこですね。
では、さっそく代表的なものを2つ見てみましょうー。
1.バリューズ・イン・アクション(VIA-IS)
VIA-ISは、自分の「強み」を判断するための、代表的なテストのひとつ。クリストファー・ピーターソンとマーティン・セリグマンが考案したテストで、このブログでもかなり昔から取り上げてますね。まぁ、厳密に言えば「強み」と「才能」は違う概念なんですけど、かなり近いとこにあるのは間違いないので、絶対に押さえておくべきでしょう。
でもって、セリグマン先生はが「強み」をどう考えているかと言うと、
- 道徳哲学者や宗教思想家が時代を超えて特定し評価してきた中核的な特性である広義の美徳を定義する特定の心理プロセス
みたいな感じです(R)。なんだかよくわからないですが、「昔から頭が良い人達が『これは良い!』と考えてきた特性にかかわる心理の働き」ぐらいに考えておけばよいでしょう。VIAの全項目は、VIA Institute on Characterのホームページで無料で受けることができますんで、気になる方はこちらをお使いください。
VIA-ISの信頼性
では、VIA-ISは信頼に値するテストなのかってことですけど、ざっくりまとめると、こんな感じになります。
- そもそも、VIA-ISは、世界中の55人の社会科学者が参加した3年間の研究プロジェクトがベースになっており、信頼性はかなり高いと思われる。また、このテストで計測する24の「強み」は、すべて満足のいく内部一貫性を示している(要するに、テストの質問の精度が高い)。
- しかし、ある研究(R)では、24の「強み」が、セリグマン先生が提唱する6つの高次因子と一致していないことがわかった。つまりVIAは、テストの基盤となる理論に問題があるかもしれない。
- VIAには日本語が用意されているが、その信頼性についてはかなり怪しいところがある。そのため、日本語でテストしたときと、英語でテストしたときの差 が大きく出ることもある。また、「スピリチュアリティ」のように、日本語でどう訳せばよいかわからない単語も多く、これも判断を難しくしている。
- VIAの背景には「強みは使えば使うほど良い!」という思想があるが、近年は「強みを使いすぎると弱点に変化する」という考え方が優勢であり、このあたりも問題がありそう。
- そもそも、「ヒトの強みをたった24パターンにまとめていいの?」という疑問も昔から存在している。実際、他のテストなどと比べても「あれが入ってないよなー」と思うケースも多い。
というわけで、VIAがかなり優秀なテストなのは間違いないものの、日本語版の精度にはどうも疑問が残るし、個人的にはやっぱ「24パターンって少なすぎない?」ってとこは気になりますね。これだけ項目が少ないと、逆に人間の可能性を縛る気もしますし。
2.クリフトンストレングス・テスト(ストレングスファインダー)
「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう」で有名になった定番テスト。2001年に教育心理学者のドナルド・クリフトンが開発したもので、企業で広く利用されてますね。34の異なる「強み」を評価するテストで、計測が終わると、すぐに上位5つの「強み」を教えてくれる感じであります。
クリフトンストレングス・テストの信頼性
では、クリフトンストレングスがどうと言いますと、ざっくりこんな感じになります。
- 2014年の研究(R)だと、テストの内部一貫性は中程度ぐらいで、VIAに比べれば弱い。これは、シンプルに「強み」の種類が多いからだと思われる。
- ただし、クリフトンストレングスは、長い期間の再テストでも一貫した結果が出ることがわかっているため、そのへんの信頼性はある(R)(34テーマ中33テーマで、初回テスト時に回答者の上位5位に入ったテーマが、事後テストでも同じ回答者の上位5位に入る可能性が有意に高い)。
- ただし、こちらもVIAと同じ問題があり、「ヒトの強みをたった34パターンにまとめていいの?」と「日本語の翻訳がそこまで正しいの?」という疑問は、やっぱり昔から存在している。
- このテストでは、「強み」を「常に完璧に近い成果を生み出す能力」と定義しているが、これが果たして人間の幸福につながるかは謎(パフォーマンスは上がるかとは思う)
- ギャラップ社が日本から撤退しているので、いつサイトが死ぬかわからない(まぁ日本語サイトは残ると思うけど、アップデートはないかも)。
ということで、まー基本的な問題はVIAと同じですね。個人的には、VIAとクリフトンだったら、「VIAのほうが精度って点ではいいのかなー。でも、どっちにせよ『強み』の取りこぼしはあるよなぁ……」と思っております。
ってことで、まずは有名な「強み」テストのメリットと難点を見てみました。同じようなテストは他にもあるので、次回もそのへんを見ていきましょうー。